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27.皇太子の暴挙

「一体どういうことだ、ユリウス! 追放令だなんて…!」


舞踏会は、とんでもない結末を迎えた。


興を削がれた生徒たちは次々と解散していき、各々の寮の部屋に戻っていった。


控え室にてユリウスと二人きりになった俺は、友人の暴挙を問いただす。



しかし、俺の言うことなどどこ吹く風で、ユリウスは肩をすくめている。



「リリアから、レベッカの話はよく聞いていた。いつも睨まれて、やることなすこと、突っかかって来るのが怖かったって」



小柄で華奢で、可憐なリリア。


自分の愛らしさを自覚した上で、意中の男に、気に食わない女のことを吹聴していたのだろう。



「レベッカはリリアに、貴族としての礼儀を教えていただけだ…!」



くだらない恋の駆け引きにまんまと引っかかり、権力を自分の私利私欲のために使うユリウスが信じられなかった。


しかし、ユリウスは俺の忠告を、煩わしいとため息をつく。



「クロード、お前……レベッカの肩を持つのか?」



眉を寄せて目を細めたその表情は、温厚な彼が怒っている時のものだった。


思わず息を呑む。


沈黙を肯定と受け取ったのか、



「そうか、ならもうお前とは、金輪際口を聞かない」



ユリウスは冷たくそう言うと、俺に背を向けて歩き出した。


口を聞かないなんて、子供染みたセリフだ。


しかし、たちまち俺の背中からは冷や汗がどっと溢れ出る。



『必ずやユリウス王子と仲良くなりなさい、クロード』


『それが我がライネス家のためになるのだから……!』


『学校で王子のご機嫌取るだけでいいなんて羨ましい、俺と人生変わってほしいよ』



両親と、二人の兄たちからの呪いの言葉が脳裏を埋め尽くす。


何かを言わなければ、と思うが、気の利いた言葉が思い浮かばない。



「俺は………」


園庭のベンチで、濡れ衣だと泣いていたレベッカ。

教室で他愛のない話をした。俺は自由で羨ましいと、微笑んでくれた。



「……悪かった、機嫌を直してくれ、ユリウス」



ひねり出したのは、情けない、皇太子へのご機嫌取りの言葉。


この状況で、自分と自分の家柄への保身しかできないのが、酷く惨めだ。


ユリウスは振り返ると、頭を下げた俺を見つめてきた。


反省している様子がわかったのか、軽く肩を叩く。



「わかればいいんだ。

 言いすぎたよクロード、ごめんな!」


底抜けに明るい笑顔で、俺に笑いかける。



「それより、俺とリリアの結婚式に、友人代表でスピーチを読んでくれないか? 俺たち、親友だろう?」



もう彼の頭の中には、追放した令嬢の存在などすっかり消えていて、自分と最愛のリリアの華やかな結婚式のことでいっぱいのようだ。



「……ああ、もちろん」



ユリウスはただの友人ではない。


この国の次期皇帝は、一言でその一族を没落させるほどの権力を持っている。



彼を利用しようとした俺の浅ましさが、今まさに俺の首を絞めていた。

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