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プロジェクト:ポッド

「体調が悪いわけではないですよね? 大丈夫ですか?」

「うん、平気」

「そうですか…では私はこれで失礼しますね。お疲れ様でした、ラキエル博士。」

「うん、お疲れ様」


 いつも何を考えているのか周囲からわかり難いラキエルだが、今日はいよいよ様子がおかしかった。

珍しく、ぼーっとしている。

だがジェレミーが出ていって独りになった部屋では、彼の様子をとやかく言うものは誰もいない。

やがて、はぁーーー、と大きな溜息をつき頭を抱えた。仮面の中の顔はいつに無く赤面していた。


(起きて…動いてた。目を開けて、生きてた。声は…聞けなかったけど、声、出るよね? どんな声で話すんだろう…)


 透き通る桃色の髪に、同系色の瞳。真っ白な肌はポッド内で眠っていたときとは違い、ほんのり色付いていて、彼女の生命を力強く感じさせた。


(声、聞いてみたい。てか俺、全然しゃべれなかったな)


 完全にフリーズしてしまっていた事を反省し、次こそは行動を起こすと心に誓う。

そして携帯食料を喉に流し込みながら、この後の予定を考える。

時刻は18時を過ぎたところだ。

昼まで眠っていたので、まだまだ動ける。


(とりあえず電波遮断エリアまで行って、作業に着手して頭冷やそう)


 ラボ内のエレベーターで地中深くにある電波遮断エリアへ向かい、作業に取り掛かる。

一段落した頃には深夜2時を回っていた。

そこから寮の自室に戻り一眠りして朝定刻に出勤すると、その後はまた自分の研究室に篭もりきりで夕刻を迎えたのだった。



>>>>>


 研究区画内、医療室に隣接した部屋に円卓を設置し、食堂からカートで8人分の食事が運び込まれた。

最後に、今日の主役である彼女が、ハンナと壮年の兵士に伴われ入室した。

淡い桃色のセミロングは神秘的で、同系色の瞳は不安に揺れているが、美しい。

そんな彼女に部屋の中の者は視線を集中させてしまった。

自分が明らかに注目されていることを理解した様子で、彼女は困惑の表情を浮かべた。

自分達と同じように動き、表情を変える彼女の様子に、ラキエルは言葉に言い表せない気持ちになる。

きっとこれを感動と呼ぶのだろう、と結論づける。


「揃ったわね。では、始めましょう。今日集まってもらった目的は、空の上からやってきた彼女の紹介と、調査メンバーの増員に伴う顔合わせです。このメンバーで、ある極秘の調査プロジェクトを進行する事になるわ。そうね…プロジェクト:ポッドとでも名付けましょうか。」


 フリージアの方から簡単に全体像の説明がある。

増員は3名。ハンナの下につくエミリは医療課から引っ張ってこられたらしく、まだ若く見えるがとても優秀な医師であるとの事だった。

後の2名、ゴーシュとタイラーは兵士で、エイマット大尉の隊から派遣されたらしい。

彼らは、今や最高機密である未知の生命体および、その調査チームの護衛が任務だ。

この場では明言しないが、まだ目的が明らかとなっていない未知の生命体に対する牽制も任務と言ったところだろう。


「あとは席についてから、各自で自己紹介にしましょ。」


 そう言って皆に着席を促す。

特に席の指定は無かったが、フリージアを起点とすると、そこから時計回りにゴーシュ、ラキエル、ジェレミー、タイラー、エミリ、彼女、ハンナの配置で席についた。


「改めまして、この研究区画を任されているフリージアです。プロジェクト:ポッドの表向きの責任者も私が務める事になりました。今回のこの調査を、今ここに居るメンバーで進められる事をとても幸運に思うわ。どうぞ、よろしく。」


 席を立ち自己紹介を済ませたフリージアを倣い、左隣に座るゴーシュが後に続く。


「初めまして、ゴーシュと申します。実は件の飛来物回収の際、エイマット大尉と共に同行しておりました。発見した際の衝撃は忘れられず、心奪われたのですが…今回、このような形で再び関われるチャンスが訪れた事に、非常に感謝しています。どうか、よろしくお願いいたします。」

「…ラキエルです。研究課所属です。よろしく」

「ジェレミーです、研究課に所属しています。専攻は機械、情報、材料などで、今回の調査ではラキエル博士のご指導の元、ポッドからもたらされる技術や素材の解析を進めています。よろしくお願いします。」

「タイラーと申します。自分もゴーシュと同様に、飛来物と遭遇したときの事を忘れられなかった口です。ゴーシュほどご執心ではありませんがね。皆さん、どうぞよろしくお願いします。」

「医療課から来ました、エミリと申します。今回の調査に携われる幸運を大変嬉しく思い、噛みしめています。軍の研究者としては、まだまだ至らない点があるかと思いますので、いろいろと教えて下さい。よろしくお願いしますね。」


エミリが着席し、残るはハンナとなったところで、エミリとハンナの間に着席していた彼女が不安そうにハンナの様子を窺う。

ハンナは優しく微笑み、そしてなんと彼女を立たせたのだった。

立たされた意味をすぐに理解した彼女は、円卓を囲む皆の顔(内1名は仮面だったが)をぐるりと見渡すと、おずおずとその小さな口を開いた。


「…リリシア、で、す。よろしく、おねがい、し、ます…」


 リリシア? え、今喋った??

あまりの衝撃に、部屋にいるほとんどの者が口をあけて硬直した。

仮面で隠れてはいるが、ラキエルも例外では無かった。

いつもは訳知り顔で余裕な笑みを浮かべるフリージアでさえ、目を見開いて硬直している。

そんな中でハンナだけは、嬉しそうに微笑んでいた。

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