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目覚め

(うっ…全身が、痛い…っ。でも、、生きてる…?)


 自身がどのような状況に置かれているのかわからないが、身体を包む感触はやわらかく、周囲には何者の気配も感じられない。

おそるおそる瞼を開けると、高い天井が視界を占める。

視線を動かすと、薄暗い室内は全体的に白い内装で、とても清潔な部屋のベッドに自分が横たわっているのだとわかる。


 なぜ、こんな状態に? 何者かに保護されたのだろうか。

寝起きで鈍いながらも、懸命に思考しながらベッドの上で慎重に身体を起こす。

服は着ているが、持っていたはずのデバイスは失くしてしまったようだ。

あれがあれば、今自分が置かれている場所のヒントぐらいは得られたかもしれないのに。


 とりあえず部屋の中を調べようとベッドから降りようとしたところで何かの気配を感じ、身体が硬直する。何か来る…っ!


 部屋の扉が開き入ってきたのは紅い髪の美しい女性と、グレーヘアの優しげな女性だった。

何か話しかけられているが知らない言語で、何を言っているのかはわからない。


(表情からは…敵意は、感じない…かも。)


 酷く喉が渇き軽く咳込むと、グレーの髪の女性が慌てて室内の棚からボトル入りの透明な液体を取り出し、こちらに渡してきた。


(水…だと思うけど、口にして大丈夫かな?もしも危険なものだったら…)


 困惑していると紅い髪の女性がボトルの近くに手を差し出す。

その掌に向けて反射的にボトルを差し出すと、丁寧に受け取った彼女はキャップを捻り開け、中の液体を飲んで見せた。

その様子から目を逸らせずにいると、グレーの髪の女性は先ほどの棚から同様のボトルを再度取り出し、今度はキャップを捻り開け、渡してくれた。

どうしようか少しの間考えたが、喉はカラカラだ。

恐る恐る、ボトルに入っている水と思わしき液体を口に含む。


(良かった…普通のお水、だった。)


 その後は数種類の食料を与えられ口にしたがどれも美味しく、危険は無さそうだった。

食料の安全性や、食べ方を見せるように、2人の女性は部屋の中で自分と同様の食料を口にしていた。

熱く湿ったタオルを渡され、身体を清めるものだとジェスチャーで示される。

水のボトルと同じように、このタオルも室内の棚から必要分が取り出せるようだ。

今のところ、敵意が無いどころかとても丁重な扱いを受けているように感じる。


(せめて言葉が通じれば…あの人たちの目的がわかるかもしれないのに。自分の置かれた状況を見極めないと。)


 2人が去った後、試しに部屋の扉を開けようと試みたが開くことは無く、行動が制限されているという事だけは把握できた。


(言葉も通じない得体の知れない者に自由を許すはずないよね。でも拘束具なんかをつけられなくて良かった。部屋の中で大人しくしていれば、好きに過ごして良いって事だよね。)


 リスクをとって脱出を試みるよりも、彼らとのコミュニケーション方法を模索する方が得策かもしれない。

改めて部屋の中の設備を一通り確認すべく、まずは目の前にあるボタンのたくさん配置された道具を手に取って見る。

TVのリモコンだった。



>>>>>


 軍本部の中枢に位置する会議室。

その中の1室にフリージアは居た。


「現時点でのご報告は以上です。」

「わかった。この件は引き続き、君とラキエルに任せよう。当面は今君が述べた方針で進めて構わない。」

「ありがとうございます、ではそのように。」


 礼をとり退室したフリージアは、その顔に安堵の表情を浮かべながら第2テストルームに向かう。

室内には、先ほどフリージアが召集をかけておいたメンバーが集まっていた。


「おかえりなさい、フリージア少佐。先ほど淹れてきた珈琲を持参しましたので、どうぞ。」

「ありがとう。今まさに丁度、ハンナの珈琲が飲みたいと考えてたのよ!」

「ふふ、そんな頃合いかと思っていました。」

「さすがね!」


 そう言って珈琲の香りを確かめうっとりしてから喉に流す。

はぁ…と恍惚の表情を浮かべた後、深呼吸をするとスッと目を閉じ、次に開いた時には仕事モードの真面目な表情を顔に貼り付けていた。


「さて、集まってもらったのは今後の方針を伝えるためよ。まず、今回調査対象として我々が担当した例のポッド、およびその中から搬出された一切について、引き続きこのチームで担当する事が決まったわ。新しいプロジェクトを発足させてね。あなた達なら既に察しはついていると思うけれど、内容が内容なだけにモノも情報も、くれぐれも慎重に扱う必要がある。だから大規模な増員は行わず、私達がメインで手を動かす事になる。少人数だから、あなた達には苦労をかけてしまうと思うけれど、しばらくお願い。頼りにしているわ。」


「はっ!承知しました。」

「はい、お任せください。」

「わかった」


 返ってきたのは、なんとも統制の取れない返事だが、メンバーの実力的にはこれ以上ない精鋭チームと言えるだろう。

フリージアは満足そうに頷きながら続きを話した。


「役割分担は現状のまま。ジェレミーはこの第2テストルームでポッドの調査を主導して。搭載されている機能や技術の解析と、ポッド本体や積荷の構造解析ね。ハンナは生命体の健康管理をメインとして、可能であれば身体検査とコミュニケーションも図りたいわ。ラキエルには情報端末の解析をお願いしたけれど…急ぎではないわ。あなたは、あなたが気になった事を好きに調査して欲しい、それが最優先。そうしてもらうのが一番、多くの成果を得られるはずだから。」


 フリージアはラキエルの使い方を完全に理解していた。

そして、その彼女の判断は正しかった。


 先ほどの役割分担を念頭に置いた上で、この調査チームの主な目標が3つ掲げられた。

1つ目は、我が国の軍に何かしらの技術革新をもたらす事。

2つ目は、生命体が敵対する者か否かを見極める事。

最後に、生命体ではない第三者が我が国に敵対する可能性があれば、その情報を掴むこと。


 人知れず、ラキエルの目標は全く別のところにあった。

だが彼が自身の目標に向かう道筋の中で、このチームの目標も結果的には達成される事になるのだった。

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