可憐な彼女とストーカー
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一般学生の怒濤の試験期間が終了する日。
そんな日の午後は、学生達の束の間の休息時間だった。
リリシアもこの日は朝から通学し、教室でテストを受けていた。
今回も隣の席に着いた男子生徒が声を掛けてくれた為、少しだけおしゃべりを楽しんだ。
「彼氏いるの? いないなら…」
「いるよ。彼が勉強を教えてくれてるの。」
「そ、そうなんだ… どんなやつ?」
「すごく頭が良くて、優しくて、たまに意地悪、かな?」
「ふーん。顔は? イケメン?」
「うん、かっこいいよ。全部、大好きなんだ。」
「くっ…でも意地悪するんでしょ?」
「そうなの、急にね。私もやり返すんだけど、どんどん勝てなくなっちゃって…」
そう言って恋する乙女の顔をする彼女を、口説くのは無理そうかも、と悟り、その後は無難な雑談に落ち着く。
試験が終わり別れを告げると、リリシアは校内に設けられたラウンジに急いだ。
「リリシアー!こっちだよー!」
「スイ!久しぶりだね。こんにちは。」
「久しぶり!また会えて嬉しい。この子がリリシアだよ。」
スイと同じテーブルを囲んでいたのは、高等科の制服に身を包んだ男女4名だった。
「へー、君が。確かにめちゃめちゃ可愛い…俺はシウス、はじめまして。」
「こんにちは、私はカレンと言います。よろしくお願いしますね。」
「俺、ナイル。よろしくー。」
「はじめまして、リリシアです。よろしくお願いします。」
「お店混んじゃうから、行こっか。もー、お腹ぺこぺこ!」
リリシアとスイは前回の試験で会って以来だったが、あの後もメッセージのやり取りや、モニター越しの通話で親交を深めていた。
移民である為、同年代の友達がいない事をスイに打ち明けた時に、自分の友達と会ってみないかと提案を受けたのだ。
今日は学生が気軽に入れるような、ベーカリーで昼食を調達し、店内にも席が設けられているが、天気も良いので若者たちは外の席を陣取った。
ラキエルから「どこいる?帰る頃迎えに行く」とメッセージがあり、帰りが何時になるのかわからないがベーカリーにいる旨を返信した。
「中等科の制服を着てるけど、まだ初等科って本当?」
「ううん、初等科はこの前卒業できたので、今は中等科の試験を受けているところです。」
「え? でもスイの話だと、前回の試験期間は初等科だったって…」
「試験専用ブースから試験日以外も受けられるので、それで早く感じるんだと思いますよ。」
「早く感じるって…実際飛び級してるとか、すごくない!? 初等科でも後半とか結構大変だったのに。」
「中等科は、今どこやってるの?」
「今日は1年生の後期試験でした。」
「「「はやっ!!」」」
「これは、まじで俺ら抜かされるね。確実に。」
「移民ってどこから? めちゃめちゃ頭の良い人種が住んでる星とか? 言語が同じなら、この辺の宙域だよね?」
「いえ、かなり遠くの宙域で…星同士の交流もほぼ無かったようなので、言葉もここに来てから覚えたんです。」
「え!? ま?? だって、聞いてる限りネイティブでしかない!」
「本当にすごい…学習能力に、とても長けているんですね。」
「勉強は苦にならないと言うか…好きな方なので。特に言語は趣味みたいなものなんですよ。」
「でも、すごいよ。あ、リリシア!みんな同い年だから、敬語使わなくて良いからね?? カレンは、いつも誰にでも敬語混じりだから、放っておいて。」
「そうそう、タメだし。たぶん学校ではそのうち、俺ら後輩になるから気軽に話してよ、未来の先輩。」
「ナイルは気をつけないと、本当に落第しそうだからな。」
「うっせ!ギリセーフだったわ!」
同い年の仲間と、こうしてわいわい話すのはいつ振りだろうか。
自分が故郷で、学生をしていたとき以来の体験が楽しくて、懐かしい感じもして、頬が緩みっぱなしだった。
明るく活発なスイとは対照的に、カレンは物静かで落ち着いた雰囲気の女の子だった。
話し方もおっとりしており、言葉選びも丁寧だ。
背の高いシウスもかなり落ち着いた男の子で、清潔感があり爽やかだ。
それに対しナイルは少々粗暴な言動が目立つが、人懐っこく憎めない感じがする。
バラバラな個性の4人が自然体で仲良く集まっているのが、リリシアにはとても羨ましく感じた。
他愛のない会話が心地良い。
学生が集うスポットや流行ってるモノの話、映画の話、リリシアには知らない事ばかりで、とても新鮮だった。
「あの映画見たの? 面白かった? あれ好きなら、同じ監督のやつでオススメあるよ…確か、これだ。今度、これも見てみて。」
「あー!これ面白いよな!俺も見たけど、めっちゃオススメ!」
「そうなんだ、ありがとう。今夜帰ったら見てみようかな?」
「映画良いですね。私も今夜は家族に提案してみます。試験期間が終わった日は、勉強はしない事に決めているんです。」
「そういえばもう夕方だね。もう少ししたら帰る?」
話をしていると、急にカレンが何かに気づき少し怯えた声を上げる。
「あの…あの方…少し前から、ずっとこちらを見ているようで…気のせいだと良いんですが、ちょっと怖いです。全身、黒尽くめだし…」
「あぁ? 何見てんだって言ってくるか」
「よせ、問題を起こすな。遠くに居るうちは大丈夫だろうけど、そろそろお開きかな。ナイルと手分けして、3人とも家まで送る。リリシアはどこに住んで…」
「んん? リリシア、あれラキエルさんじゃない?」
「あ、ほんとだ。ラキエルー!」
黒尽くめの怪しさ満点の不審者に向かい、リリシアが元気いっぱいに手を振る。
不審者はリリシアの呼び掛けに反応し、どんどんこちらに近付いてくる。
「まじかよ、近付いて来るぞ!リリシア、本当に知り合いなんだろうな…?」
ガチの不審者だったらどうすんだ?しょうがない、と瞬時に腹を決めたシウスが立ち上がり、こちらにどんどん近付く不審者と、テーブルとの間を遮るように前へ出た。
「…どうも」
少し驚いたラキエルだったが、あぁ俺が不審者っぽかったから立ち塞がったのか、結構いいやつだな、と自己完結する。
ラキエルは、私服はこの黒尽くめ不審者セットしか持っていなかった。
「驚かせたみたいで、ごめん。リリシアいつ帰るかわからなかったから、早めに迎えに来た。まだ話してるみたいだから離れて待ってたんだけど」
「本当に知り合いだったのか…びびった…良かった…」
そう言うとシウスは疲れたように席に戻り、どかっと腰を下ろし脱力するのだった。
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「今日は仲間に入れてくれて、ありがとう。すごく楽しかった!」
「リリシア、また遊びましょう。スイだけじゃなくて、私とも仲良くしてくれたら嬉しいです。」
「カレン、ありがとう!私もまたお話したいな。」
「次、学校来る時もスイに連絡してよ。そしたら、またこーやってどっかで飯食ってだべれるし」
「さっきは…その、睨んで悪かった。不審者だと勘違いしたんだ。」
「俺が勘違いさせるような風体だったから、気にしないで。でも服これしか持って無いから、次リリシア迎えに来る時も不審者度は変わらないと思う」
そう話す目の前の黒尽くめは、キャップを目深に被り、フードも被り、遠目に見ると完全に不審者だが、近くで見ると結構な男前で、それ以外は普通の男だった。
自分たちと同い年ぐらいだろうか。
夕日に透けて紫がかって見える毛先と、紫色の瞳が印象的だ。
「服それだけって…? 1着しか持ってないとか、無いだろ。」
「…これと、同じのが3セットあるだけ」
なんでだよ、とシウスは内心思うが口には出さなかった。
「みんな、またね!ありがとう!」
こちらに手を振りながら明るく別れを告げるリリシアと、ぺこりと会釈し「それじゃ」と簡単に済ませるラキエルの、対照的な事。
そんな対照的な二人は背を向けると、どちらからともなく仲良く手を握り合い、見つめ合ってから、坂の上の方に消えていった。
そんな二人を唖然と見送るシウスが、開いたままの口から言葉を漏らす。
「え? あの人なんなん?」
「リリシアのカレだよ。めちゃめちゃ過保護なんだと思う。前回の試験のときも迎えに来てたもん。」
「なんかスカした野郎だったな!何考えてるか、わかんねーし。」
「恥ずかしがり屋なんだってさ、ラキエルさん。」
「不審者と勘違いしてしまって…申し訳ない事をしてしまいました…シウスも、ごめんね…? 気苦労かけちゃって。」
「いや。スイは話した事あるのか? あのラキエルってやつと。」
「うん、前にリリシアとランチしたって話したでしょう? あれラキエルさんも居て3人だった、というかラキエルさんが誘ってくれて、ご馳走になっちゃったんだ。リリシアと仲良くしてくれてありがとう的な感じで。」
「そうか…リリシアとは対照的な。」
「無愛想だし無表情だしね。でもリリシアの事は大好きみたいで、すっごく大事にされてるよ。」
確かに。
帰宅時間がわからないのに、わざわざ迎えに来て、終わるまで見守ろうとする忠犬ぶりだ。
帰り際の二人の様子を思い出しても、あれで大事にしていないわけがない、そんな雰囲気だった。
睨み付けたシウスに対しても、ぶつかり合う素振りは一切無く、逆に謝られた。
服はあれしか持っていないらしい、あの黒尽くめの不審者セットを…3着。
「あの人…なんか、面白そうだな。」




