ラキエルの告白と欲望
「ラキエル、今日はスイを誘ってくれてありがとう。すごく嬉しかったし、楽しかった。」
「ん、良かった。友達出来て良かったね。この後は…俺がリリシアを独り占めしても良いよね? 俺、結構我慢した」
「我慢してくれてたんだ? ふふっ。私も、今日ラキエルとデート出来るの、すごく楽しみだったよ。」
「また、どっか買い物行く? 天気良いから公園とかでも良いし」
「公園!行ってみたいな。」
二人は街で一番大きな公園に行き、とりあえず中を散策してみる。
公園にはピクニックを楽しむ家族連れ、ダンスの練習や動画撮影をする若い人、絵を描く人、写真を撮る人、読書をする人、様々な人がそれぞれ自由に余暇を楽しんでいるようだった。
「みんな色々な事をしてるんだね、楽しそう。あれは何?」
「あれは、バドミントンって言うスポーツ。そのへん座って人間観察、する?」
「人間観察!いいね!」
木陰のベンチに座り、周囲を観察する。
探検ごっこをする小さい子供達の元気な声が響く。
見た事のない形状の、不思議な音色の管楽器をあやつるおばあさんに、リリシアは興味津々だ。
「あれは? なに??」
「あれは俺も知らない…初めて見た」
「ラキエルにも、わからない事あるんだね。」
意外だね、と笑う彼女の髪を、突風が乱して通り過ぎて行く。
もー、ぐちゃぐちゃ、とまた笑う。
彼女が楽しそうにしているのが、たまらなく嬉しい。
「リリシア、可愛い」
自然と言葉が口をつき、手は彼女の頬に伸びる。
乱れた髪をさらりとなぞり、耳にかける。
そのまま耳と、頬を指の腹で撫で、ふにふにした柔らかさを楽しむ。
彼女は少しくすぐったそうに、でも嬉しそうに目を細めた。
「…俺、ポッドの中で眠ってるリリシアに、一目惚れしたんだと思う。あまりに綺麗で、しばらく目が離せなくて…ずっと見てた。それから目覚めたって聞いた後…モニター越しだったけど起きて動いてるところを見た時も、動けなかったし話せなかった」
「そうだったんだ。わたし最初、ラキエルは置物なのかなって思ったもん。」
「だよね…あの後、失敗したって後悔して。次こそ話すって決めた」
「次の日は、ちゃんと話してくれたよね。話すまでは、なぜか仮面だしちょっと怖いって思ってたんだ。でも…話してくれた後は怖くないってわかったから、仲良くなれたら良いなって思ってたよ。歳もね、同じくらいなのかなって。」
「うん。俺もリリシアと一緒に過ごせて、どんどん好きになった。楽しそうに勉強するところも、思慮深いところも、びっくりするぐらい…大胆なところも。照れたり、笑顔だったり、細かい仕草も。全部。好き」
「そ、そんなに言われたら…照れるよ。でも嬉しい。わたしもね、ラキエルが採血の見本に、なってくれたでしょう? その後、介抱してくれたのも…どきどきして…かっこいいなって、優しい人だなって、思ってた。側に居てくれて、勉強を手伝ってくれて…知らない場所で不安だった私を救ってくれたのは、ラキエル。ラキエルに会えてから、毎日楽しいの。」
「俺もリリシアに救われた。運動したり夜ちゃんと眠るようにしたり…普通の食事するきっかけもくれた。素顔で誰かと食事する自分なんて想像してなかった。痣も…なんでもないみたいに受け入れて…くれて…」
「痣は本当にラキエルが気にし過ぎなだけだよ。食事の件は少し憶えがあるけど、運動と睡眠は…?? 何もしてないと思うけど。」
「どうしたらリリシアに気に入ってもらえるか考えて…とりあえず男らしい体格の方が良いかなって思って、ジム行き始めた。残業も控えて、夜はちゃんと寝るようにした。背が伸びるように」
「あはは!なにそれっ、わたし本当に何もしてなかった。やっぱりジムは始めたばかりだったんだね、最初ふらふらしてたから運動苦手なのかな?って思ってたの。」
「バレてたのか…まぁ、とにかく。これから背も高くして筋肉も付けて男らしくなるつもりだから。少し待ってて」
「わかった。でも今以上にかっこ良くなっちゃったら…どうすれば良いの?」
「どうって?」
「もうラキエルの事…大好きなのに…これ以上かっこ良くなっちゃったら、どうしたら良いのかわからないよ…」
「…おかしくなるって事?」
「へ?」
リリシアの耳と頬のあたりを味わっていた指の腹で、彼女の唇に少しだけ触れてみる。
彼女の耳まで真っ赤に染まるが、拒絶の色は見えない。
「俺は、もうとっくにおかしくなってる。リリシアの事…好き過ぎて、どうしようもないぐらいに。同じ所まで、堕ちてくる…?」
「おかしくって…えっと…?」
震える唇で質問を紡いだとき、そのスキをついて指の先を少しだけ、彼女の口にねじ込む。
奥までは挿れない。が、口を閉じる自由を奪われた彼女が、不安と期待の入り混じった視線をラキエルに向けた。
「リリシアの事、めちゃめちゃ大事にしたいって、優しくしたいって思ってるけど。俺の部屋に閉じ込めて、動けなくして、好き勝手触りまくったり…酷いこと、したいって…いつも思ってる。だから危ないから、俺の部屋に泊まるのはダメ。襲うよ。ちゃんと警戒して。わかった?」
少しだけ親指の腹に力を込めて、彼女の唇の柔らかさを堪能する。
それから名残惜しそうに下唇をなぞった後、彼女の口から手を引いた。
「ん、うん…はい。わかり、ました…くっつくのもダメ?」
「…ほんとにっ…それ、わかってないでしょ…はぁ…」




