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ラボでの噂話と、情報操作作戦

「ラキエル博士、あんなに話しやすかったっけ?」

「前はもっと何考えてるかわからなくて、直接話す機会なんてほぼ無かったからな…」

「マルクは鬼!って連呼してたよな。」

「なんか柔らかくなった…?」

「それ!思いました。」

「中身入れ替わったわけじゃないよな? 声とか…端的に話すところは変わってないし。」

「あの端的に話すところが良いんじゃない。余計な読み合い要らないの楽すぎる。」

「仕事も出来て、人当たりも良くなったら…え、つよ」

「まだ顔で勝てるかもよ?あの仮面の理由、諸説ありますけど。絶望的にブサイクとか、実は祖国を裏切ったメラーニ人とか、顔が爛れて人の形を保ってないとか。」

「逆に超絶イケメンで、女に言い寄られるの面倒だから説もありますよ。」

「確かに、イケメンの纏う雰囲気は感じますよね。」

「どんな雰囲気よ。」

「年齢の割には堂々としているし、自分が仕事出来るって事をちゃんと理解した上での、それでもそれを鼻にかけない立ち振舞と言うか…」

「人当たりの良い天才が上司だったら最高な。実際、報告書の赤入れとか的確だし、それについて直接質問とか行けたら、この職場天国。怖くて行ったことないけど。」

「今日の博士の感じだと、全然質問イケそう!」

「質問してみてきてよ!」

「ちょっと待って、まだ心の準備が…って、俺を生贄にするつもりだろ?」

「ん? バレた? もうジェレミー先輩に、あんたが質問したくてラキエル博士探してましたってメッセージ入れといたから!」

「おいぃぃぃぃい!」


 1人の研究者が、膝から崩れ落ちた。



>>>>>


 昔と変わっていなければ試験は45分間。

11時40分には到着できるよう、総務課の試験用ブースに向かう。

時間ぴったりに彼女が試験用ブースから姿を現した。


「ラキエル? もしかして迎えに来てくれたの?」

「うん。ランチ食べるでしょ? 食堂に行こう」

「いいの?」

「俺は携帯食料持ってきてるから。リリシアがランチ食べるの見届けたら、またここまで送る」

「過保護…そんなにしてくれなくても平気だよ?」

「俺がしたいだけ。行こ」


 食堂で2人並んで食事をしていると、ガタイの良い男達が絡んでくる。


「おうおう、見せつけてくれるじゃあないですかぁ? お二人さん。」

「まぁーた兵糧食べてる、この人はー」


 タイラーとゴーシュが、あらわれた。


「久しぶり、ここ座る?」

「ええ、良いですか? お邪魔しますよ。大活躍でしたね、ラキエル博士。」


 大きな身体を座席に押し込めながら、タイラーが言うのは先日のメラーニ侵攻の際に、地上への攻撃からこの星を守ったアレの事だろう。


「たまたま昔作ったものが役に立っただけ。2人も上に派遣されたんでしょ?大変だったね」

「そうです、さっき地上に戻ったとこですよ。普通の食事の良いにおいはたまりませんな!」


 そう言って本当に嬉しそうに食事を始めた。


「リリシアさんが我々に伝えてくれた情報のおかげですね。」

「私は…助けてもらってばかりですから。ここが侵攻された際も何も出来ませんでしたし。宇宙での任務、大変でしたよね。お疲れさまでした、ありがとうございます。」


 軍人2人はお互いの顔を見合わせる。

おそらくリリシアが更に流暢に話すようになっていたので驚いたのだろう。


「そういえばラキエル博士…進展あったんです?」


 タイラーがリリシアの顔をちらりと見てから、ラキエルに問い掛けた。


「なになに? なんの進展?」

「あぁ、タイラーさんのアドバイスの通り食事は朝夕はちゃんとしたものを食べるようにして、ジムに行き始めて夜も寝るようにしてた。けど、厳戒態勢のときは夜中仕事してたから崩れちゃったな」

「それは何よりで。でも、それよりも…その行動を起こしたくなった理由がありましたでしょう?そっちの方は、どうなったのかなってね。」

「それは」

「皆さん、お疲れ様です!ここ、ご一緒しても良いですか?」


 話を遮ったのはエミリ、それとジェレミー、マルクだった。


「今の。タイラーさんとしていたお話、私もすっごく聞きたいです!」



 リリシアとラキエルに注目が集まった。

ラキエルは当然、外堀を埋める意味でも、リリシアとの関係を1人でも多くの人間に話しておきたい。

なんなら「ラキエルの恋人です」と書いた看板でもリリシアに括り付けておきたいぐらいだ。


「エミリさん!私、ちゃんとなれましたよ。」


 意外な事に、先に口を開いたのはリリシアだった。

途端にエミリの表情がキラキラと良い笑顔になる。

ジェレミーは、やっぱり、と言いたげな様子で、マルクは恨めしそうな目でこちらを見ている。

あれは涙か?血か?


「私、ちゃんとラキエルの恋人にしてもらえました。大人になったら結婚…も、してくれるって。」


 嬉しそうに報告するリリシア。可愛い。

え?もうプロポーズまでしちゃったの?とリリシア以外全員の視線がラキエルに集中した。


「うん、まあそう言う事…もう手放すつもり一切無いから」


 そこでラキエルは「あっ」と、言葉を付け加えた。良い事を思い付いたのだ。


「俺、リリシアとの関係隠すつもり無いから。噂話歓迎。みんな外堀埋めるの手伝ってくれたら助かる。外堀埋めて、もう絶対俺から逃げられないようにしたい」


 こんな事を普通、本人を目の前にして言うだろうか。

ネジの外れた天才は考える事が違う、こわっ…と周囲は若干引いた。

リリシアは恥ずかしそうに「逃げたりしないよ…? ラキエル」と小声で耳打ちする。


 この二人、ガチで両思いだったんだな。と改めて思い知らされた面々は、早めに昼食を済ませてその場を後にした、まだ若く初々しい二人の姿を、微妙な心境で見送ったのだった。

おめでたい事のような、あの執着大丈夫か?と心配になるような、そんな微妙な心境で。

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