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しつこい男の末路

 ラキエルが居てくれると勉強が驚くほど捗った。

疑問が湧いた時にすぐに聞けて、すぐに的確な答えが返ってくる。

どの科目でもそれは変わらず、なんなら関連する蘊蓄なんかも聞けて、楽しいし覚えやすい。

ラキエルは眠そうな目を擦りながら、リリシアの質問に答えたり、室内で筋トレをしたり、常に動いていた。


「ラキエル、眠いんでしょう? 寝なくて平気?」

「うん、今寝ると中途半端な時間に起きそうだから、夜まで寝ない。今寝るのもったいないし」

「もったいない?」

「せっかく俺の部屋にリリシアが居るから。今寝たら夕食も一緒に食べれなくなるし」

「そっか…今日の日替り、なんだろうね。久しぶりに一緒にご飯食べられるの、嬉しいなっ!」

「俺も。前は1人で携帯食料が普通だったのに、満足できなくなった」

「じゃあ、ちゃんと毎日一緒に、ご飯食べようね。」

「うん、そうする」


 18時を過ぎ、リリシアは夕食を貰いに食堂へ足を運ぶ。

日替りを2人分持ち帰りでオーダーし、出来上がるのを待っていたその時だった。


「今日も会うなんて、気が合うね〜!これから夕食? 一緒に食べようよ。」


 ここ数日、食堂で会う度にリリシアに声を掛けてくる男だった。

ラキエルが仕事で夕食を共にできなくなり、初日はエミリと食堂に来たのだが「ここ空いてるよね?」と隣りに座り、話しかけてきたのだ。

最初はただの気さくな人かと思ったが、エミリやリリシアの容姿を褒める発言が執拗で、自分の話は自慢話ばかり、他人を貶すような発言も多かった為、それ以来関わらないようにしていた。


「わたし人と約束があるので、ごめんなさい。」

「この前一緒に居たキレイなお姉さんでしょ? 全然一緒でも良いよ!」

「いえ、違います。」

「もしかして男? じゃあ、明日は? 一緒に食べようよ。」

「ごめんなさい、ずっとその人と約束してるんです。」

「ふーん。わかった、じゃまた今度ね!」


 人目が集まりそうになったのを気にしてか、男は立ち去って行った。

食堂で受け取った2人分の食事を持ち、ラキエルの部屋に向かっていた時。


「また会ったね。部屋こっちの方なの? 俺もこっちなんだよね。送るよ。」


 あの男がまた現れたのだった。

リリシアはさすがに恐怖したが、人が集まる場所でも無いため、助けてくれる人もいない。


「あの、本当に約束があるので…ごめんなさい。」

「いいじゃん。俺、君の事すごく可愛いって思ってたんだよね。ね? 2人で話せるとこ、行こうよ。」

「いやです、ついてこないで下さい…!」

「つれないなー、少しぐらいいいでしょ? 君あまり見かけないよね、最近入隊したの? あまり先輩に逆らわない方が良いよ。」


 男が迫ってくる。


「わ、わかりました!部屋…こっちです…だから、こんなところでは…やめて下さい…」


 とは言ったものの、リリシアはどうすれば良いのか困り果てていた。

頼る先として1番に思い浮かぶのは、ラキエルだ。

だが、この男がもしラキエルに危害を加えたら?ラキエルよりも歳上で体も大きい。

どうすれば良いのかわからないまま、ラキエルの部屋に向かってゆっくりと歩みを進める。


「あんまり焦らさないでよ〜」


 背後から男の声がかかる。



「何してんの?」


 正面からはラキエルが現れた。


「遅いから迎えにきた。誰? なんの用?」

「こいつが、君の約束の相手? こんなのより俺の方がいいでしょ?」

「こんなの? あの人の方がいいです!」


 来てしまったものはしょうがない。

思わず、ラキエルの方に駆け寄る。


 ラキエルは自分の後ろにリリシアを庇い、1歩前に出ると男を睨みつけた。

もちろん、睨みつけたことは仮面に隠れて相手にはわからない。

結構な体格差だが、ラキエルは一切怯む様子は無く、リリシアを怖がらせたことに怒りを顕にしている。

だが何かに気付いた様子で、少しだけ力を抜き静かに言い放った。


「ああ。お前、総務課のモレイブ」

「なっ…!?」

「一昨年、入隊した新人か。で? そんな新人が彼女になんの用? 回答によっては、今後の進退に関わるけど」

「な、なんでも…ありませんっ!!」


 そう言うと男はあっさりと引き下がって行った。


「行こう」


 振り返ったラキエルはリリシアの背中に優しく手を添えると、荷物も取り上げ、自分の部屋までエスコートして行った。


「あいつに捕まってたせいで遅かったのか、迎えに来て良かった。何か嫌なことされた? 平気??」

「遅くなってごめんなさい。話しかけられた以外は何もされてないから平気だよ。」

「…遅かったからってリリシアを責めてるわけじゃないからね? あいつが全部悪い」

「ラキエルが仕事に行った日に食堂で話しかけられて…それから会うたびに食事に誘われて困ってたの。今日は食堂で断った後に寮の廊下で会って…どうしようかと思っちゃった。」

「…今度、似たような事あったら絶対すぐ言って」

「うん、わかった。迎えに来てくれてありがとう、ラキエル。」

「や、そもそもリリシアを1人で食堂に行かせてるのが問題なんだよな。明日からは俺が行く」

「でも!ラキエル、人の多い時間帯に食堂行くの嫌いでしょ?」

「…気付いてたの? それで、いつも行ってくれてたのか…ごめん、ありがとう」

「それにしても、あの人の事知ってたんだね。」

「や、前に総務の名簿を見る機会があって顔と名前覚えてただけ」

「普通、そんなの覚えられないよ…」

「まぁ脳の記憶領域の無駄遣いだなとは思ってたけど、今日あいつを撃退するのに有効だったから、覚えてて良かった」


 本当に…本当に良かった、とラキエルは思った。


 後日、総務課の上級士官宛に匿名で送られた、複数の規律違反の証拠により、モレイブは軍を除隊されたのだった。

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