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召集命令 厳戒態勢

 ラキエルの家に寄り仮面を回収した後、急いで軍本部に戻る。

研究課所属の研究員たちはラボに集められており、リリシアもそこに加わることを許可された。

ある程度の人数が集まった事を確認し、フリージアが話し始める。


「メラーニが、このミルズアースに急速に接近しています。おそらく侵攻して来るつもりでしょう。これより厳戒態勢を敷きます。兵士たちは優先して宙軍の援護にまわりますから、この基地の防衛人数は最低限となります。宙軍の後援部隊として研究課・医療課からも人を送ります、各自で辞令を確認し持ち場に着くように。宙域での作戦行動および、惑星防衛に関し案のあるものは速やかに名乗りでるように。」

「ラキエルです。惑星防衛に関し提案があります」

「どうぞ、話してみて。」

「メラーニは数日前、他惑星に直接攻撃を仕掛けたという情報があります。それに対し、2年前に試作とテスト報告をした惑星防衛システムが有効かと。問題は2点。消費エネルギー量が莫大な事と、試作段階のため制御に少し難ありな点。運用は始めは自分が対応しますが、2-3人つけてもらえれば同時に制御研修を行います」

「2年前…あぁ、あれね。確かに今回のケースに有効かも。消費エネルギーは予算をとるわ。お願い。研修生として指名したい者はいる?」

「ジェレミー、マルク、ミランダ」

「いいわ。今指名された3名はラキエル博士につくように。辞令は後ほど再交付があります。以上、頼んだわよ。」


 蜘蛛の子を散らすように、各自が辞令に従い持ち場へ向かう。


「ラキエル…」

「リリシア、今日の夕飯は一緒に食べれない。部屋に居て。後で連絡する」

「絶対だよ?」

「わかった、部屋まで送れなくてごめん。ジェレミー、マルク、ミランダ、すぐ動ける?」

「はい、ラキエル博士。」


 ラキエルは3人を伴い、どこかへ姿を消した。


 惑星防衛システム(試作機)の制御室では、研修生として指名された3名がまず、鈍器になりそうな程分厚い仕様書とマニュアルに、必死に目を通していた。


「これ設計した人、頭おかしくありません? よくこんな理論組み立てますよね…意味がわからない」

「悪かったな、頭おかしくて」

「ヒッ!そ、そうだった鬼が…ら、ラキエル博士…」


 制御室内のハードウェア点検の為、壁の中に潜り込んで作業をしていたラキエルが点検口から顔を出す。

マルクが冷や汗をだらだら流しながら、ジェレミーの後ろに隠れる。


「意味わからないところあったら、聞いてくれれば説明する。ちょっと、あっちにある端末、取ってくれない?」

「どうぞ、ラキエル博士。今日はその…残念でしたね。せっかくお出掛けされていたのに。」

「ジェレミーもでしょ」

「私は妹と出掛けていただけですから。ラキエル博士は…その…」


 ラキエルは思い出す。

1時間程前までは街でリリシアとデートをしていた。

順調そのもので、もしかしたらリリシアと恋人同士になれるかもしれない、そんな都合の良い妄想が、現実になるのではないかと僅かな希望を見出していたところだった。


「この任務終わったら、また誘うから。だから早く終わらせたい」

「え、ラキエル博士、本当にデートしてたんですか…? リリシアさんと? あの、めちゃめちゃ可愛い人と??」

「そうだよ。マルク、もう読み終わって完全に理解できたの?」

「まだです、申し訳ありません…!」

「さっきのお綺麗な方ですよね? ラキエル博士が、その…女性とデートなんて。あまりご興味がないかと…」

「うん、興味なかった。先週までは。ミランダはわからないとこない? なんでも聞いて。なんとなく概要つかめたら起動テストするから手伝って」


 その日の夕方から開始された研修と起動テストが一区切りついた頃には深夜1時だった。

ラキエルは3人に休息を取らせる為、次の集合時刻を翌8時と定め、一度解散した。


「リリシア、連絡出来なくてごめん。もう寝たよね」

「まだ起きてるよ。」


 メッセージを送ると即返信があった。

ラキエルはたまらずに、リリシアに電話をかけた。

すぐに繋がり「ラキエル、お疲れさま。」と優しい声が聞こえ、張り詰めていた心がそっと解かされていくようだった。


「遅い時間にごめん、少しだけ…声聞きたくて」

「大丈夫だよ。遅い時間までお疲れさま。ご飯は食べた?」

「しばらく携帯食料かもね。箱で持ってきてあるから平気」

「またそれ…私がラキエルにごはん持っていったら…だめ?」

「うん、こっち色々あって危ないから、なるべく部屋に…寮に居て」

「わかった…」

「帰る時言うから、そしたらまた俺と一緒に食事…してくれる?」

「うん!待ってるね。あと、今日は街に連れて行ってくれて、ありがとう。ラキエルとデート…出来て嬉しかった。」

「俺も。すごく楽しかった。帰ったら話したい事あるから、聞いて」

「待ってるからっ、早く帰ってきてね。」

「うん、おやすみ。リリシア」

「おやすみなさい、ラキエル。」


 電話を切った後、ベッドの中でリリシアは激しく後悔した。

エミリが言っていた「出来れば男性から…ラキエル博士から告白して欲しいですね。」

服屋の店員が言っていた「勇気出さなくても近いうちに…大丈夫だと、思いますよ?」


 自分から伝えようと思いつつも、少しだけ…ラキエルから言ってくれたら良いな、と躊躇してしまっていた。


「ラキエル…好き…」


 こんなに後悔するなら、他人の話になんて耳を貸さずに、自分から告白すれば良かった。

後悔しても、もう遅かった。

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