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これはもしかして、もしかすると脈があるのでは?

「他の服屋さんも見る?」

「ううん、今日はもう服は十分かな!ありがとう。」


 彼女の薄い桃色の髪と、ラキエルが選んだ淡いブルーのワンピースは良く合っていた。


(好きなコが…自分の選んだ服着てくれてるって…やばいな。なんだ、どーゆう状況なんだ? 俺起きてるよな…?)


 ラキエルは空いている右手で無意識に自分の右の頬をつねる。


「ラキエル、そんな事しちゃダメだよ、見せて?」


 そう言ってフードの中を覗き込んだリリシアは、いつかと同じように痣を包むように手の平をあて、少しの間目を閉じ、開いた。


「痛いの無くなる、おまじない、ね。」


 リリシアが自分の隣から正面に移動してくるのを、ただ目で追うことしか出来なかった。

ぼーっと立ち尽くし、目の前に在る顔に釘付けになる。

美しい、桃色の宝石のような瞳と、やわらかそうな…小さな唇。

思わず、ゴクリと喉を鳴らす。


「髪、乱しちゃった。ごめんなさい。わ!やっぱり、すごくふわふわだね、ラキエルの髪って。」


 顔を触った時に乱れてしまった髪を、右眼を隠すように丁寧に撫で付ける小さな手。

髪を直してくれているだけだが、自分が撫でてもらえているようで、思わずうっとりと目を細める。


「…少し…休憩しよう」


 思い出したようにラキエルが提案する。

昨夜のリサーチによると、休憩はとても重要な事で、特に長時間外を歩き回る場合はこまめに休憩を挟まないと足が疲れて痛くなるらしい。


 2人はテラス席のあるカフェに入った。


「俺、ブレンドにする。ラテもあるよ。紅茶も何種類かある、茶葉の種類が選べるね。あとはココアはチョコの味みたいな甘い飲み物、この前チョコアイス溶けたの飲んだでしょ?あれの温かいやつ」


 上から順にドリンクの解説をしてくれるラキエル。

写真付きのメニューをなぞる彼の大きな手…長い指が、リリシアを少しどきどきさせた。


(勉強しているときも思ったけど…ラキエルの手って、すごく格好良く見える、なんで? あの手と…さっきまで手を繋いで歩いてたんだよね、私…)


「リリシア? わからないのある?」

「う、ううん、大丈夫!わたしはアップルシナモンティーにしてみようかな? 説明してくれて、ありがとう。」


 注文を済ませ、次の目的地を話し合う。


「次どこ行こっか。何か買いたいものとか、見たいのある?」

「この辺のお店、どんなのがあるのかぐるっと歩いてみたいんだけど良いかな?」

「うん、わかった。そうしよう」


 テラス席は明るく、たまに優しく通り抜ける風が気持ち良い。

リリシアも気持ち良さそうにしながら、カフェの内装やテラス席のテーブルに併設された、日除けのパラソルに興味津々だ。


「おまたせ致しました。アップルシナモンティーのお客様。こちらはブレンドです。ごゆっくりどうぞ。」

「ありがとうございます。…わぁ、甘い香りだけどサッパリして美味しい!色もキレイ。」

「…俺もアップルシナモンティーって飲んだ事ない。少し貰っても、いい?」

「うん、どうぞ。美味しいよ。」


 先程まで自分がくわえていたストローが、ラキエルの口に吸い込まれて行く。

少し飲むと、名残惜しそうにゆっくりとストローから口を離した後、ストローの先を見つめながらぺろりと舌で自分の唇を舐めた。

その様子が妙に色っぽくて、イケナイものを見てしまったような気分になる。

「ん、美味しいね」と短く感想が述べられ、リリシアの元にグラスが戻された。


(ラキエルの…口に入ったストロー…)


 グラスを手にとり、ストローの先から視線をラキエルに移す。

頬杖をついたラキエルの表情は少し大人びて見えて、彼の視線が「飲まないの?」と急かしてくるように感じた。

ラキエルに見られながら、またこのストローを口にするのは凄く恥ずかしく感じたが、彼は目を離してくれるつもりは無いようだ。

じっと、獲物を狙うような熱っぽい視線でこちらの様子を伺っている。


 謎の緊張で少し震える唇をストローにそっと、つける。

甘美な風味が口の中に広がる。

恥ずかしくてラキエルの方を見る事が出来ない。

そんなリリシアを見て、ラキエルは笑みを浮かべる。


 美しい悪魔が、悪巧みを成功させた時のような、妖艶な笑みだった。



>>>>>


 2人はショッピングモールを、ぷらぷらと散策する。

リリシアはずっと楽しそうに周囲を見渡しては、気になるものがあればラキエルに質問をし、近くで見たいものがあればラキエルの手を引き、店に入って行った。

たまに自分の着ているワンピースに目をやっては嬉しそうに、照れるように笑い、ラキエルを見つめては幸せそうに微笑む。

ずっと今が続けば良いのにと思う程、ラキエルは幸せだった。


(可愛い。幸せだ。出掛けるの…俺が相手じゃなくても、こんな…可愛いのか? こんな可愛い表情、誰にでも見せる? あんな無防備で危険な言動…する? 俺にだけ…俺にだけ見せてくれてる…? もしかして脈ある? いや、ありえな…あるかも。やばい、やばい…どうしよ。落ち着け、俺ぇ)


 リリシアの態度やふるまいを、冷静に客観視しようとすればする程、ラキエルは自分の都合の良いように考えてしまっているのでは?と思考にブレーキをかける。

でも、やっぱり。今一番欲しいものが、すぐそこにあるような気がして、手の届くところにある気がしてならない。

その可能性を思うと、もう一刻も早く彼女に自分の気持ちを伝えたくてたまらなくなる。

気持ちを伝えて、彼女から同じ気持ちを返してもらえたら、重い約束を交わして、彼女を縛り付けて、誰にも奪われないようにする。


 そんな自分に都合の良い妄想をした。

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