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彼女を部屋に連れ込んだは良いが、この後どうすれば良いのか誰か教えて欲しい

 ラキエルは悩んでいた。


自分の欲望を、どうすれば満たす事が出来るのか。

目の前に居る可愛いリリシア、幸運にも彼女は自分の部屋の中に滞在してくれている。

このチャンスを逃すわけには行かない。


 この後、ラキエルが目標とする事は2つあった。

1つは…そう。明日も一緒に過ごす約束を取り付ける事。

もう1つは…彼女に想いを伝えて、異性として意識してもらう事。


 正直、想いを伝えるなんて恥ずかしいし、正気じゃないと思う。

でも、彼女の一番になる為には、正直に自分の想いを伝えて、まず意識してもらって、それから何度でも気持ちを伝えて、いつか振り向いてもらえるまで…頑張るしかない。

いつになるかわからないが、いつか同じ気持ちで通じ合えたら…どんなに幸せだろうか。


 古代の書物に記されていたと言い伝えられる「諦めたらそこで何かが終了する」という言葉は、本当にまさしくその通りである。

恥ずかしかろうが、砕けようが、チャレンジし続けるしかないのだ。


 だって、彼女が他の人と心を通わせてしまったら…たぶん、死ぬ。

想像するだけで、死にたくなる。

死ぬぐらいなら、死ぬ気で頑張った方がマシだ。

誰だってそう思うだろう。

うじうじしていても、しょうがない。

ラキエルは思い切って、まずは明日の予定を確認しようとリリシアの方を向く。

ちょうど同じタイミングで、リリシアもこちらを向いた。


 今は仮面を外しており、ラキエルは素顔だ。

素顔で目の前に見えるのは、リリシアの整った小さい顔、綺麗な肌、美味しそうな…唇。

2人は食事が終わったところで、まだ作業用のデスクの前に椅子を並べて座っていた。

デスクは特別大きいものではないので、椅子と椅子との距離はほとんど無い。


「!っ、ご、ごめん…」

「わ、わたしも!急にそっち見ちゃったから…ごめんなさい。あのね、ラキエル。お願いがあるの。」


 彼女のお願いなら、なんでも叶えてあげたい。


「なに?」

「私、街に行ってみたくて…明日、お休みでしょ? 一緒に行ってくれないかなって…思って。」


 ラキエルの目標のうち1つ目が呆気なくも達成されようとしていた。

だが大きな問題がある。

街に出る場合、さすがに仮面で出ていくわけには行かないだろう。

仕事で行くならまだしも、完全なプライベートでは不審者以外の何者でもない。

彼女はまだ単身では街に行けないはずだ、ここで自分が断れば、誰か他の人間と一緒に、明日は街で過ごすのだ。

それならば答えは決まっている、やり方は後で考えれば良い。


「わかった、一緒に行こう」

「本当!? やったぁ!ラキエル、嫌って言うかと思ってた。嬉しい!」

「…その代わり、俺のお願いも聞いて」

「なに? ラキエルのお願いなら、何でも聞くよ。」


 ふわりと笑うリリシア。

本当に綺麗だ。

お願いだから、そーゆう危険な発言はやめて欲しい。

何でもって…何でも…


 闇に堕ちかけた思考を必死で呼び戻し、今の一瞬で頭を過ったコトよりは、幾分まともなオーダーをする。


「明日…街に行ってる間、その…てっ、手を…繋ぎたい。はぐれたくない…から」


 なるべく平常心を心掛けるが、顔が赤いかもしれない。

表情を隠してくれる仮面に引きこもりたい。

リリシアも少し赤い。

多少は俺のこと異性として意識してくれているのだろうか。


(せっかく出掛けるなら…もう、とことんだ。どうせなら…デート。リリシアとデート…みたいな感じに持って行きたい)


 紫色の瞳が不安に揺れながらも、それでも視線を外すことなく真っ直ぐにリリシアを見つめていた。

右側に大きな炎症が目立つものの、それを差し置いても美しく整った顔立ちの少年が、真剣な眼差しで見つめてくる現実に、リリシアはどきどきした。


(手を、繋ぐって…恋人同士がする事!? いいのかな。友達でも、するのかな? 手を握っただけでもエミリさん達の話題に上がるぐらいだから、手を繋ぐのはやっぱり…すごい事な気がする。)


 でも、断ると言う選択肢は無かった。

どうであれ、ラキエルと手を繋げる。

しかも彼から提案してくれたのだ。


 いや、提案と言う生易しいものではない、彼はお願いを聞いてほしい、とした後に手を繋ぎたいと言った。


(ラキエルも私と手を繋ぎたいって思ってくれてるんだ…私が少し勇気を出したら…ちゃんと…付き合えるかもしれない。)


「私も。出掛けてる間、ラキエルと手、繫ぎたいな。」


 想像以上の彼女からの返事に、ラキエルは自分が世界一幸福な男かもしれない、と感じた。

お願いの交換条件で押し切れたらラッキーで、少しでも嫌そうな素振りを見せれば強引にするつもりなど更々なかった。


 でも、リリシアも手を繋ぎたいと、そう言ってくれたのだ。



 自分の回答に一瞬驚いた表情を見せた彼だが、その直後にまたあの顔全体をクシャッとさせるような子供っぽい笑顔を浮かべ「っ!やった」と小さく呟いたのを、リリシアは見逃さなかった。

ああ、この人が…好き。そう改めて思う。

明日、勇気を出して気持ちを伝えられたら良いな、そうしたら、もしかしたら…


 自分だけが知っている、彼の素顔や、可愛い笑顔、不器用だけどどうしようもないぐらいの優しさを、誰にも渡したくなかった。

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