そんなに一生懸命吸われたら…悶絶しちゃう(全年齢)
休憩する気がない様子なので再開しようかと考えたその時、外で何か話す声が聞こえた後に扉が開いた。
エミリがカートに食事を乗せて押し入った。
気づけば、もうすぐ13時になろうとしている。
「遅くなってしまって、ごめんなさい!お昼ごはんを持ってきました。ラキエル博士の分も一応持ってきましたが…召し上がりますか?」
「ありがとう、でも俺はいいや。またゴーシュに食べさせる」
「ラキエル博士…俺は残飯処理班じゃ…」
「食べないの? 椅子足りないから持ってきて」
「うぅ、食べますぅぅう…」
足りない分の椅子を調達したゴーシュが部屋に入り、4人の昼食が始まった。
部屋の中の丸テーブルは、3人分の食事がぎりぎり乗るサイズだった。
ラキエル以外の3人はテーブルに並べた食事の前にそれぞれ座り、ラキエルは狭いので少し離れたところに椅子を置き座った。
「「「いただきます。」」」
「警備任務のときって、食事はどうしてるの?」
「自分が警備している最中は食べないですねー、交代した後に食べるんですよ。だから、こんな風にちゃんとランチの時間にランチにありつけるのは珍しいっすね。しかもこんな美人2人を目の前にして食事できるなんて…俺生きてますか?」
「死にたいなら手伝う」
「え、なにそれこわい。」
ゴーシュは朝も食堂でタイラーとコントをしていたが、なるほど。イジりたくなる気持ちがわかるかもしれない。
ラキエルは今まで自分が感じたことの無い気持ちが目覚めるのを実感した。
ゴーシュいじるの楽しい、かも。しかし言語学習中のリリシアを混乱させてしまうかもしれないから、イジるのは程々にしよう。
くだらない事に脳のリソースを割いたせいか急に空腹を感じ、ポケットから取り出した携帯食料を捻り開けた。
「あ!その兵糧、結構イケますよね、味にクセがないって言うか。俺が入隊した頃の兵糧、正直食えたもんじゃなかったっすけど、すぐにそれに変わったんですよねー。そこそこ腹も膨れるし、栄養も十分っぽくて、なんと長期任務中でも身体が痩せない!でも、なんでラボ勤務なのにそんなもん持ってるんです?」
「これ俺の主食。その為に自分で開発した」
「えっ?」
ゴーシュはもちろん、エミリも目を丸くした。
「そうだ、患者さん用の食事の試食で初めて食べたときに、食べやすくて栄養価も高くてびっくりしたんです、よく覚えてます。まさかラキエル博士が開発されたものだったなんて。」
「これ、開発したってマジっすか!? すごい、開発者がこんなに身近に居たなんて!あれ?でもこれ…採用されたの何年も前でしたよ?」
「開発したのは7年前で、それからこればっかり食べてる。兵糧と病院食として採用されたのが5年前」
「え、7年前って…」
「…」
「俺が7歳の時」
「!!!?」
あまりの衝撃にエミリがスプーンを床に落とした音が響いた。
「確かに栄養は十分とれますけど、うーん。こればかり食べるのは、どうなんでしょう。そういえばフリージア少佐もラキエル博士の食生活、心配されてましたよね。」
部屋の隅にある小さな流しで、スプーンを洗いながらエミリが問いかける。
「便利だし、不満に感じてないから」
「なかなか頑なですね。」
綺麗になったスプーンを持って、エミリが後少し残っていた食事を食べきる。
先に食事を終えたゴーシュは「ごちそうさまでした、任務に戻ります。」と敬礼し、部屋を出ていった。
リリシアも食べ終わったようで、「ごちそうさまでした」と食器をまとめてカートに戻した。
それからラキエルの方に向き直ると、彼が飲んでいる携帯食料に視線をやった。
「兵糧?携帯食料? どんな味ですか?」
「少し食べてみる?」
「はい、いいですか…?」
ポケットから新しい携帯食料を取り出し、キャップを開けてからリリシアに差し出した。
彼女は両手で受け取ると、特にためらう様子も無く口をつけ、吸った。一生懸命吸った。
なんだこれ。可愛い。ずっと見ていたいほど可愛い。可愛すぎて辛い。エミリは悶絶していた。
ラキエルはリリシアの持つ携帯食料に手を添える。
「ここ少し押せば出るよ。強く押したらたくさん出ちゃうから、ゆっくり、優しく、ね」
説明しながら、軽く押す。
すると中身が出て来たのだろう、こぼさないように飲み込み、感想を述べた。
「これもいいけど、ご飯の方がいい。」
「うん、そうだね」
「ごめんなさい、食べさせてくれたのに。」
「謝らないで大丈夫だよ、リリシアは感想を教えてくれただけでしょ」
「はい、でも」
「ごはんも食べたし、お腹いっぱいでしょ? これ残り貰うね」
ちょうど自分の分の携帯食料を空にしたラキエルは、リリシアの飲みかけを奪って、自分の口に咥えた。
(え、わ、私が口つけちゃったやつ…!なのに…ラキエル嫌じゃないのかな…?)
(そういえば、これ…さっきまでリリシアが一生懸命吸って…て)
頭部に血液が集中し、一気に顔をが熱くなる。本当に仮面を被っていて良かった、と心の底から思ったのだった。




