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プロローグ
『まだ若いお前たちには、逃げて欲しい。なんとしても生き延びて欲しい。』
男の低い声が、雑音の中に不思議とはっきりと聞こえた。
腹の底から出る声は、訓練されたものだ。
立場のある者だと、その立ち振る舞いからはっきりと読み取れる。
『だが正規兵の数は今も、どんどん減らされている。このままでは…こんな事を言うのは酷だが。戦う意志の有る者は、私と共に来て欲しい。この星を守る為に、どうか。』
街の様子はすっかり変わり果て、建物は瓦礫に、空は妖しい赤に染まっている。
『戦います。』
1人の声が、まっさきに。凛と響く。
その声に背中を押され、次々に名乗りを上げ、続く者。
他の者の救助にあたる者。
泣きながら、抱き合う者。
この日、多くの命が失われ、そして一つの国が滅びたのだった。