赤い本
高校生・ソラが赤い本を手に取ります。
受験勉強や人付き合いのストレスを抱えた高校3年生・ソラは、夏休みにわけもなく書店へ向かう。
隅に置かれていた怪しい赤い本を手に取った。
「なんだこれ…赤本みたいなデザインだな…『人生ガイドブック』か…買ってみよう…」
税込330円のその奇妙な本は、それ以来、彼の人生を大きく左右する事になる。
ソラは家に帰り、その本を開く。
1ページ目にはこう書かれていた。
「キンゾクトゴウセイジュシヲクミアワセタモノワスレルベカラズ」
ソラはカタカナを読むのがとても苦手だ。得意な人はいないだろうが。
気味が悪かったので、その本をゴミ箱に捨てた。
翌朝。課外授業を受けに学校へ向かう。
ソラは歩いて15分ほどの学校に通っている。
道半ば辺りまで来ると、急に豪雨となった。
「これがゲリラ豪雨ってやつか」
カバンを頭に乗せて、学校まで全力ダッシュする。
到着した頃にはびしょ濡れだった。
「朝からついてねぇな…」
唯一の親友であるアラタに、昨日の出来事を話してみた。
「人生ガイドブック?それ漫画か?」
「違うんだよ。薄っぺらい赤本みたいなんだ。」
ほら、と、昨日撮っておいた本の写真を見せる。
「本当だ…ちゃんとした本なんだ。これいくらだったの?」
「330円。」
「やっす!!ろくなこと書いてなさそうだなw」
「それが本当にろくなこと書いてないんだよ。全部カタカナでさ。なんて書いてあるか読めねーの。」
「え、お前カタカナ読めないの?」
「いや、めんどくさかったから捨てた。」
「ええ…」
アラタにドン引きされる。まあ確かに面倒臭がりが過ぎたかもしれないが、休日に外に出ることすら面倒臭がっているアラタには言われたくない。
「それ、まだ家にある?」
「まあ、ゴミ箱の中に…」
「俺の家持ってきてよ。読んでみたい。」
「いやお前が来いよ、どうせTikTok見てるだけだろ。」
「く…分かったよ…」
そうしてアラタと一緒にその本を読むことになった。
「キンゾクトゴウセイジュシヲクミアワセタモノワスレルベカラズ…?」
「ちょっと俺も何書いてるかわかんねーけど、こんなタイトルなんだし、お前の人生に役立つ事が書かれてんじゃねーの?」
とアラタが適当なことをいう。
「でもこれほら、2ページ目以降なんも書いてないぜ。」
「ホントだ。じゃあもう人生詰みってことなんじゃね?w」
アラタが笑えない冗談を言う。コイツはたまに本当にぶん殴りたくなる。
「俺もこの本買ってみよ!どこの本屋?」
「じゃあ一緒に行こう」
アラタと一緒に本屋へ向かう。
しかし、昨日あの本があったはずの隅の方には、どこにでもありそうなライトノベルが置いてあった。
本には何が記されているのか。