ハム寿司
羅美の通う小学校の給食でハム寿司が出された。ハム寿司はご飯に海苔ではなく薄くスライスされたハムを巻いたものである。魚介類を載せた寿司と比べて異質である。羅美は、お祭りの屋台でハム寿司を食べたことがあった。多くの子ども達は普段食べることのない珍しい寿司に興味津々であった。
しかし、銅吉は見慣れぬハム寿司に苦手意識を持ち、手を付けようとしなかった。羅美はハム寿司に戸惑っていた銅吉に語りかけた。
「ハム寿司は、普通の寿司とは少し違うけど、美味しいんだよ。ハムが巻かれているから、ご飯の味とハムの塩味が絶妙に合わさっているんだ。口の中でとろけるような食感で、子供たちにも食べやすいんだよ。また、ハムの色もキレイで見た目も楽しめるよ。一度食べてみると、きっと好きになるよ」
羅美の説明で銅吉はハム寿司の美味しさに気付くことができた。やがて銅吉は弁当の日にハム寿司を入れるほどになった。
3月にはクラスの皆でハム寿司パーティーを開催した。クラスの皆が協力して、ハム寿司を作るために必要な食材や道具を用意した。パーティー当日はクラスの机をつなげて大きな食卓を作り、皆で作ったハム寿司が並べられた。
「わー、すごい!こんなにたくさんのハム寿司がある!」
「これ、私が作ったの!」
「私もこんなに美味しそうなのが作れるなんて、感動する!」
クラスメイト達は、自分達で作ったハム寿司を自慢しあって、とても楽しそうであった。そして皆でハム寿司を食べ始めた。皆で作ったハム寿司は思い出に残る美味しい味になった。
「おいしい!これは、もう一個食べたい!」
「ハムとご飯のバランスが絶妙だね」
「私は、このハムが好きだな」
クラスメイト達は、自分達で作ったハム寿司を味わいながら、お互いの感想を言い合い、盛り上がっていた。そして、パーティーの最後には、先生が用意したデザートを食べて、楽しい時間を過ごした。
「こんなに楽しいパーティーを開いてくれて、ありがとう」
「また、ハム寿司作って食べたいな」
クラスメイト達は楽しい時間を過ごした後も、ハム寿司の美味しさを語り合った。この出来事をきっかけに羅美は将来、寿司職人になることを決意した。
羅美は卒業式でハム寿司を追求する決意を詩にして表明した。
雲流れ 青空に広がる 未来への道
風吹く 草原を越えて ハム寿司と歩む
夕陽が照らす 山の彼方に 明日を見据えて
心に灯る 希望の光が 導いてくれる
大学卒業後に羅美は小さな寿司屋で一人前の寿司職人として修行を積んでいた。羅美は常に新しいアイデアを探し、お客さんに驚きと喜びを与えることに情熱を注いでいた。羅美の店では、他の寿司店では見られない特別な一品があった。それはハム寿司であった。ハム寿司は単品でも提供するし、彩り豊かな野菜やフルーツと一緒に盛り付けても提供した。
羅美は失恋した。失恋の気持ちを詩に書いた。
***
思い出す度 胸が痛む
あの日の君との言葉
どこで間違ったのだろう
愛されることがこんなに辛いとは
苦しみを抱えて 夜を徹しても
涙は枯れ果てない
君の温もりを求めて 手探りで歩く
でも今はもう 二度と戻れないのだろう
別れの言葉を聞いた時から
私の心は傷ついたまま
いつか癒えると思っていたけど
時間がたっても 忘れられないのは あの日の君の笑顔
***
失恋後もハム寿司の研究を続けた。羅美は思考錯誤を続け、ハム寿司のバリエーションを増やしていった。ハムの種類や具材の組み合わせを工夫し、新しい味わいを追求した。その過程で羅美はハム寿司の秘密に辿り着いた。ハムの塩気と甘みが酢飯との相性を生み出していた。さらに、野菜やフルーツの鮮やかな色彩が、ハム寿司を美しく華やかに仕上げていた。
最初はハム寿司を注文する顧客は少なかった。一部の寿司好きからは邪道と忌避された。しかし、次第に評判が広まり、多くの人々がその美味しさに魅了された。羅美の独創的なハム寿司は、寿司界に新たなトレンドを生み出し、寿司愛好家たちを驚かせることとなった。




