私は戦場ヶ原の家に向かって、ひたすら歩き続けた
私は戦場ヶ原の家に向かって、ひたすら歩き続けた。途中、何度も人にぶつかりそうになったり、車に轢かれたりしそうになるというトラブルに見舞われたものの(それもこれも、全ては、戦場ヶ原のマンションを探すために、携帯のマップ機能を使いまくっていたせいである)、なんとか、目的地には辿り着くことができた。しかし、辿り着いた頃には、既に夕方になっていた。
「遅いわよ、阿良々木くん。どこをほっつき歩いていたの?」
戦場ヶ原は、相変わらずの調子で、玄関口で僕を出迎えてくれた。
「悪かったよ。ちょっと迷っちゃってさ」
「迷った? 迷ったですって? あなたが?」
「……あのさ、戦場ヶ原。お前、もしかして、結構怒ってる?」
「怒っているように見える?」
「見える」
「そう。まあ、そうね。少しは怒っているかもしれないわね」
「……」
「でも、阿良々木くん。私はあなたに、今日は家に来るなって言ったはずよね? だから私、あなたの分の夕食も用意していないんだけど、どうしてくれるのかしら」
「あー。それは大丈夫だ。もう済ませてきたから」
「あらそう。じゃあいいわね」
「いいの!?」
「いいのよ」
「いいのかよ!」
なんかすげー理不尽!
「それで、羽川さんとはちゃんと会えたの?」
「おう」
「そう。よかったわね。じゃあ、早く帰ってくれるかしら。私、これから勉強をするから」
「お前って、いつもそうなの?」
「何が?」
「お前って、学校終わった後、毎日、何やってんの?」
「別に何も」
「え?」
「特に何かをしているわけではないけれど、ただ、家に帰ってくるだけ」
「……」
「それがどうかしたの? 阿良々木くん」
「いや、お前って、本当に、真面目なんだなあって思って」
「馬鹿にしてんの? 阿良々木くん」
「そんなことはないけどさ……」
「だったら、余計なこと言わないで、早く帰りなさい。阿良々木くんみたいな帰宅部の男子と違って、私は忙しいんだから」「へいへいそいつは失礼致しました。邪魔者はとっとと退散させていただきますよ」
「そう。ご苦労様」
「……」
ううん……、やっぱり、全然会話が成立していないぞ……。こんなんで、果たして忍野と会うまで、持つだろうか。不安だ。
「あ、そうだ。戦場ヶ原。お前、明日は暇か?」
「どうして?」
「どうしてって……、お前、ひょっとして、僕の質問の意味がわかんなかったのか?」
「わからなかったわね」
「……」
「だって阿良々木くん。私がそんな、明日の予定なんてものを聞いて、阿良々木くんに対してどういう反応を示すと思っていたわけ? 阿良々木くんは、一体、私のことを何だと思っているわけ?」
「……」
いやまあ。
確かにその通りだ。こいつが僕の誘いに乗ってくるかどうか、訊いてみたかっただけだ。
「えっと、いや、ほら、冬休みだしさ。どこか遊びに行きたいなと思って」
「そう。なら一人で行ってくればいいじゃない」
「冷たいこと言うなよ。寂しいだろ」
「勝手に寂しくなっていれば?」
「……」
取り付く島もない。




