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林田力 短編小説集  作者: 林田力
短編2
92/103

私は戦場ヶ原の家に向かって、ひたすら歩き続けた

私は戦場ヶ原の家に向かって、ひたすら歩き続けた。途中、何度も人にぶつかりそうになったり、車に轢かれたりしそうになるというトラブルに見舞われたものの(それもこれも、全ては、戦場ヶ原のマンションを探すために、携帯のマップ機能を使いまくっていたせいである)、なんとか、目的地には辿り着くことができた。しかし、辿り着いた頃には、既に夕方になっていた。

「遅いわよ、阿良々木くん。どこをほっつき歩いていたの?」

戦場ヶ原は、相変わらずの調子で、玄関口で僕を出迎えてくれた。

「悪かったよ。ちょっと迷っちゃってさ」

「迷った? 迷ったですって? あなたが?」

「……あのさ、戦場ヶ原。お前、もしかして、結構怒ってる?」

「怒っているように見える?」

「見える」

「そう。まあ、そうね。少しは怒っているかもしれないわね」

「……」

「でも、阿良々木くん。私はあなたに、今日は家に来るなって言ったはずよね? だから私、あなたの分の夕食も用意していないんだけど、どうしてくれるのかしら」

「あー。それは大丈夫だ。もう済ませてきたから」

「あらそう。じゃあいいわね」

「いいの!?」

「いいのよ」

「いいのかよ!」

なんかすげー理不尽!

「それで、羽川さんとはちゃんと会えたの?」

「おう」

「そう。よかったわね。じゃあ、早く帰ってくれるかしら。私、これから勉強をするから」

「お前って、いつもそうなの?」

「何が?」

「お前って、学校終わった後、毎日、何やってんの?」

「別に何も」

「え?」

「特に何かをしているわけではないけれど、ただ、家に帰ってくるだけ」

「……」

「それがどうかしたの? 阿良々木くん」

「いや、お前って、本当に、真面目なんだなあって思って」

「馬鹿にしてんの? 阿良々木くん」

「そんなことはないけどさ……」

「だったら、余計なこと言わないで、早く帰りなさい。阿良々木くんみたいな帰宅部の男子と違って、私は忙しいんだから」「へいへいそいつは失礼致しました。邪魔者はとっとと退散させていただきますよ」

「そう。ご苦労様」

「……」

ううん……、やっぱり、全然会話が成立していないぞ……。こんなんで、果たして忍野と会うまで、持つだろうか。不安だ。

「あ、そうだ。戦場ヶ原。お前、明日は暇か?」

「どうして?」

「どうしてって……、お前、ひょっとして、僕の質問の意味がわかんなかったのか?」

「わからなかったわね」

「……」

「だって阿良々木くん。私がそんな、明日の予定なんてものを聞いて、阿良々木くんに対してどういう反応を示すと思っていたわけ? 阿良々木くんは、一体、私のことを何だと思っているわけ?」

「……」

いやまあ。

確かにその通りだ。こいつが僕の誘いに乗ってくるかどうか、訊いてみたかっただけだ。

「えっと、いや、ほら、冬休みだしさ。どこか遊びに行きたいなと思って」

「そう。なら一人で行ってくればいいじゃない」

「冷たいこと言うなよ。寂しいだろ」

「勝手に寂しくなっていれば?」

「……」

取り付く島もない。


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