サンタクロースは、世界中の子どもたちのために存在している
「ところで、阿良々木先輩はどうしてこんなところにいるのですか?」
「えっと、散歩かな」
「こんな時期に、こんな時間帯にですか。お暇なんですね」
「お前、さらりと毒吐くな!」
「冗談ですよ。では、阿良々木先輩も、その塾とやらにご一緒しますか?」
「えっ。いや、僕はいいよ。そんな、小学生の授業なんか見ても仕方ないし、第一、サンタクロースの格好をしてないからな」
「はい。確かに、阿良々木先輩がサンタクロースの格好をしていたら、一緒にいるわたしまで笑われてしまいそうですね」
「そこまで言わなくてもいいだろう」
「でも、それなら、サンタクロースは一体、誰のことを指していることになるんでしょうね?」
「さあな」
少なくとも僕ではないことだけは確かだが。小学生と一緒にされた日には、サンタも泣く。
「あ、そう言えば、阿良々木先輩は、羽川さんとはお知り合いなんですよね?」
「ん?……ああ、そうだよ」
戦場ヶ原の親友。そして、戦場ヶ原が中学時代、唯一、信頼を寄せていた人物。
「じゃあ、阿良々木先輩からもお願いしてもらえませんか?」
「え?」
「実は、今日、学校で、先生方に言われてしまったんです。うちのクラスには、クリスマスプレゼントを買ってもらっていない子供がいるようだって」
「……」
「それは勿論、そういう子供もいるでしょう。親の経済状況によっては、そうせざるを得ない家庭もあると思います。だから、そんな子供を馬鹿にしたり蔑視したりするつもりはありません。むしろ哀れみさえ感じています。ですけれど、その噂のせいで、その生徒さんはクラスで浮いてしまっているようなのです」
「……」
「可哀想だと思わないのかと言われても、正直困ります。わたしには何も言えません。何もできません。わたしはその方とお話をしたことはおろか、顔を見たことすらないのですから。だけど、わたしはそれでも、その子に何かしてあげたいと思っています。だって、わたしはサンタクロースですから」
「……」
「サンタクロースは、世界中の子どもたちのために存在しているんです。サンタクロースは、自分のことしか考えていない大人たちの、都合で動いていてはいけません。そうでしょう?」
「……そうだな」
「でも、羽川さんは、羽川さんのお父さんお母さんは、きっと、羽川さんのクラスの子のことも考えてあげているはずです。羽川さんのことだから、きっちり考えているはずです。だから、阿良々木先輩、どうか、阿良々木先輩の方からも、そのことを伝えておいてください。阿良々木先輩が言えば、阿良々木先輩のお友達である羽川さんも、きっと力になってくれます」
「わかった。頼んでみる」
「ありがとうございます」
八九寺はぺこりと頭を下げた。礼儀正しい子だ。




