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林田力 短編小説集  作者: 林田力
短編2
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ラグビー

ラグビーは荒々しい印象のあるスポーツであるが、昭和の精神論根性論から遠い世界である。「大声を張り上げて「絶対に勝て!」と命令したところで、それはどだい無理な話です」(土井崇司『もっとも新しいラグビーの教科書 今、鮮やかに最新理論として蘇る大西鐵之祐のDNA』ベースボール・マガジン社、2015年)。


日本のラグビー界は昭和の精神論根性論が支配していた時代があった。しかし、21世紀になって、ラグビーは多様化して多様な価値観を持つ人々に開かれたスポーツになった。練習でも最低目標を設定する(藤原秀之『桐蔭学園ラグビー部 勝利のミーティング』大和書房、2021年)。いつも全力投球という訳にはいかない。時には省エネでゆっくりすることも大切である。「全力で頑張ります」という昭和の精神論根性論ではない。


ラグビーは高度な戦術が求められる。猪突猛進でぶつかるだけではない。ラグビーは球技の中でも特にルールが複雑である。ラグビーは他のスポーツ以上にチームの戦術が重要になる。ラグビーはチームプレイである。仲間がいて初めて力を発揮することができる。


ラグビー選手にとって一番重要なものは品位である(廣瀬俊朗『ラグビー知的観戦のすすめ』KADOKAWA、2019年)。身体をぶつけ合い、相手にケガをさせてしまうこともあるスポーツだからこそ、フェアプレイ精神が求められる。相手への攻撃になるタックルは相手からボールを奪い返すことが目的である。競技が異なるが、日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル事件の悪質さが浮き彫りになる。日大選手が、関学大側のボールを持っていない選手に背後からのタックルを繰り返した。報道が過熱したと言われたが、加熱しても足りないくらい異常な行為であった。


ラグビーの魅力は多様性である(廣瀬俊朗『ラグビー知的観戦のすすめ』KADOKAWA、2019年)。身体の大きな人間にも小さな人間にも、足が速い人間にも遅い人間にも、力が強い人間にもそれほど強くない人間にも、それぞれの個性を活かしたポジションがある。


ラグビーは他の球技と比べて手軽に行えないイメージがあり、様々な人々に向いているスポーツとの指摘は意外であった。女子ラグビーも成長していることは、ラグビーが多様性を包含するスポーツであることを実証することになるだろう。


ラグビーの多様性を示すものに代表選手の資格要件がある。サッカーやオリンピックの代表選手は国籍が要件である。ラグビーでは国籍に加えて地縁も要件になる。ある地に3年以上居住し、その地のラグビー協会が代表に選べば、外国人であっても代表になれる。世界帝国であった大英帝国に由来するが、グローバリゼーションの21世紀に合っている。日本社会はラグビーの多様性に学ぶことが多いだろう。


ラグビーは多様性を包含するため、ルールは複雑になるが、相手に怪我をさせるような卑怯なことはしてはならないという思想が根底にある。ラグビーではボールの争奪戦にはチームの真後ろからまっすぐに入らなければならず、相手が獲得したボールを妨害してはならない。後から来た選手が横から入ってボールを奪おうとするとオフサイドという反則になる。


私はオフサイドという反則をサッカー漫画『キャプテン翼』で知った。そこでは相手チームをわざとオフサイド状態にさせるという技巧的な手段で登場した。これは本来のルールの目的を無視した手口である。このような形でオフサイドを利用することは脱法的で卑怯な手口である。


サッカーとラグビーは同じフットボールから分岐した。分岐した理由に激しい接触プレイに対する考え方の違いがある。サッカーは手でボールを扱うことを禁じ、激しい接触プレイが起こらないようにした。これに対してラグビーはフェアプレイ精神を重んじることで、激しいタックルなどの接触プレイを認めた。


個々人に問題を起こさないようにするよりも、問題が起こらないように制度的な仕組みを作るという観点からサッカーがラグビーよりもメジャーなスポーツになったことは自然である。一方でラグビーの思想にも注目すべき点がある。ルールで全て規制するのではなく、徹底的に議論するという思想がある。試合中に選手が審判と話し合うことも珍しくない。


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