ええと、ここが部室か
「ええと、ここが部室か……」
翌日の放課後。俺は、とある部屋の前まで来ていた。
「おーい、来たぞー!」
「お、待ってました。ささ、早く中に入ってくれ」
「ああ」
「えーと、まずは何をするんだ?」
「まあまあ、とりあえず席に座って落ち着いてください」
彼に促されるまま椅子に座ると、目の前には様々な種類のボードゲームが置かれていた。
「これは一体何のゲームなんだ?」
「まあ簡単に説明すると、チェスみたいなものだよ」
「へえ、そうなんだ」
「というわけで早速始めようと思うんだけど……ルール分かる?」
「いや全く分からない」
「OK、なら説明しよう。……このゲームでは、プレイヤーは駒を動かし、相手の王将を取ったら勝ちになる」
「なるほど」
「ちなみに、駒にはそれぞれ役割がある。例えばこの歩兵は、敵を倒すことができる。そして、王様を守る騎士は、敵の攻撃を防ぐことが出来る。他にも、魔法使いは魔法を使って相手を攻撃する事が出来る。そして、僧侶は回復することができる。といった具合にね」「ほう、なかなか面白いじゃないか」
「だろう? よし、それじゃあ始めるぞ」
こうして始まった勝負だったが……結果は惨敗だった。
「くっそー、もう一回!」
「いいぜ、かかってこい!」
その後も何度も挑戦したが、結局一度も勝つことが出来なかった。
「はぁ、はぁ……もう無理だ……」
「ははは、まだまだだな」
「うーん、やっぱり強いな。……ところで、どうしてそこまで強くなったんだ?」
「そりゃあ、毎日のように練習してるからな」
「そ、そうなのか……」
「おう。ちなみに俺の得意分野は将棋だ。いつかお前にも勝てるようになるかもしれないな」
「楽しみにしてますよ」
「そういえば、どうして俺なんかに声をかけてくれたんだ? 正直言って、俺ってあんまりパッとしないだろうし……」
「いやいや、そんなこと無いよ」
「え、マジで?」
「うん、マジで」
「……ありがとう」
「いえいえ」
「……ところでさ、今更な質問で申し訳ないんだけど、どうして俺のことを誘ってくれたんだ?」
「う~ん……そうだなぁ……。……強いて言えば、君に興味があったからかな?」
「そうなのか?」
「うん。だってさ、普通あんな風に話しかけられたら警戒するじゃん。でも君は全然そんな素振りを見せなかった。……だから、ちょっと気になったんだよ」
「そうか……。……あのさ、俺からも一つ聞いてもいいか?」
「おう、何でも聞いちゃって下さい」
「……どうしてお前も俺のことを助けてくれるの?」
「……それはね、俺が君のことが好きだからだよ」
「……え?」
「あ、もちろん友達としてじゃないよ? 恋愛対象的な意味で好きってことだから」
「ちょ、いきなり何を!?」
「いや、別に隠すことでもないからさ。それに、いずれバレることだし」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……」
……その後、しばらくの間沈黙が続いた後、彼は再び口を開いた。
「……ねえ、君はさっき『助けてもらった』と言ったよね?」
「ああ」
「その言い方だとさ、君は今まで誰かに助けを求めたことが無かったのかい?」
「……そうだな」
「そうか。……実はさ、俺は昔いじめられてたんだよ」
「えっ、そうなのか?」
「うん。まあ中学の頃の話だけどな。それで、高校に入ったら絶対にイジメられないようにしようと思って、必死に勉強したんだ」
「へぇ、すごいじゃないか」
「まあな。おかげで何とか志望校に合格できたよ。……ただ、今でもたまに思い出すことがある。もしあのまま学校に行ってたらどうなってたんだろうってな」
「……」
……きっと、辛い思いをしていたに違いない。
「……なあ、これからは何かあったらすぐに言えよ。俺はいつでも力になるから」
「……分かったよ」
「よし!……じゃあそろそろ帰るか」
「そうだな」
こうして俺は、新しい友人と共に帰路についた。




