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林田力 短編小説集  作者: 林田力
短編
8/103

長崎

林田力は長崎の街にいた。

「さあて、何を食べようかなぁ~」

鼻歌を歌いながら歩いていると、見覚えのある顔に出会った。

「あれっ? 君は確か……林田さん家の子じゃないか!」

「こんにちは」

「どうして君みたいな子がここにいるんだい?」

「仕事で来たんですよ」

「仕事? どんな仕事をしているんだい?」

「それは言えませんよ」

「そっか。そうだよね」

「はい」

「じゃあ、頑張ってね」

「はい。失礼します」

「ばいば~い!」

林田力は去って行った。

「変な奴だったなぁ……」

男は首を傾げた。


「さてと、ご飯食べないとな」

林田力が向かった先は、うどん屋であった。

「へいらっしゃいっ!!」

威勢の良い声が響いた。

「おう、大将。いつものように頼むわ」

「毎度ありっ!!」

「しかし、この店も随分繁盛するようになったな」

「そりゃあもう! うちのお客さんはみんな良い人ばかりですからね!」

「はははっ! 違いない!!」

林田力はうどんをすすりながら、何やら考え事をしていた。

「うーん……困ったなぁ」

「どうしました?」

「いや、ちょっと悩んでいることがあってさ」

「悩みですか?」

「そうだよ」

「俺で良かったら相談に乗りますぜ」

「本当!? やったぁ!!」

林田力は喜びのあまり踊り出した。


林田力は屋敷の中に入って行った。

「こちらの部屋で待っていて下さい」

「はい、分かりました」

林田力が待っていると、やがて一人の女性がやって来た。

「初めまして! わたしの名前は橘花といいます!!」

「あ、どうも。私は林田力と言います」

「よろしくお願いしまーす!!」

彼女は元気よく挨拶をした。

「あの、今日はわざわざ来てくださってありがとうございます!!」

「いえ、とんでもないですよ」

「うふふ。でも、嬉しくてつい舞い上がってしまいました」

「はあ……」

林田力は苦笑いを浮かべた。

(何だか変わった人だなぁ)

「では、そろそろ行きましょうか」

「はい、分かりました」

二人は部屋を出て歩き始めた。

(うーん、緊張するなぁ……)

心臓がドキドキし始めた。

「あの、大丈夫ですか?」

「はい、何とか……」

「そうですか。では、頑張って下さい」

「はい!!」

しばらく歩くと、大きな扉の前に着いた。そして中に入ると、そこには大勢の人が座っていた。彼らは一斉に二人に注目すると、口々に何かを言い出した。しかし、林田力には何を言っているのか分からなかった。そこで、隣にいる橘花に尋ねてみた。

「すみません。今、何とおっしゃっているのでしょうか?」

「皆さん、あなたの本の感想を述べているんですよ」

「そうなんですか。ありがとうございます」

「いえいえ、当然のことですよ」

そう言って橘花は微笑んだ。

「ところで、お二人はどういう関係なんですか?」

「わたくし達は夫婦なのです」

「へぇ……。そうなんですね」

「はい。実はわたくし達、長崎で知り合ったばかりでして……」


それからしばらくして、祝宴が始まった。

「それでは皆様、お酒をお注ぎいたしますよ」

橘花の合図によって、人々は盃を手に取った。

「それじゃ、乾杯しましょうか」

「えっ? はい……」

林田力は何が何だか分からないまま、とりあえず酒を飲み干した。それから、次々と料理が運ばれてきた。

「どうぞ召し上がれ」

「はい、いただきます」

林田力は箸を手にした。

「美味しいですね」

「そうでしょう? 長崎名物のカステラもあるんですけど、食べますか?」

「いいですね。是非とも頂きたいです」

「はい、どうぞ」

戸惑いながらも、それを食べた。

「いかがですか?」

「とても甘いですね」

「そうでしょう?」

「はい。それにしても、こんなに豪華な食事は初めてです」

「それは良かったです」

「はい、ありがとうございます」

林田力は笑顔を見せた。



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