長崎
林田力は長崎の街にいた。
「さあて、何を食べようかなぁ~」
鼻歌を歌いながら歩いていると、見覚えのある顔に出会った。
「あれっ? 君は確か……林田さん家の子じゃないか!」
「こんにちは」
「どうして君みたいな子がここにいるんだい?」
「仕事で来たんですよ」
「仕事? どんな仕事をしているんだい?」
「それは言えませんよ」
「そっか。そうだよね」
「はい」
「じゃあ、頑張ってね」
「はい。失礼します」
「ばいば~い!」
林田力は去って行った。
「変な奴だったなぁ……」
男は首を傾げた。
「さてと、ご飯食べないとな」
林田力が向かった先は、うどん屋であった。
「へいらっしゃいっ!!」
威勢の良い声が響いた。
「おう、大将。いつものように頼むわ」
「毎度ありっ!!」
「しかし、この店も随分繁盛するようになったな」
「そりゃあもう! うちのお客さんはみんな良い人ばかりですからね!」
「はははっ! 違いない!!」
林田力はうどんをすすりながら、何やら考え事をしていた。
「うーん……困ったなぁ」
「どうしました?」
「いや、ちょっと悩んでいることがあってさ」
「悩みですか?」
「そうだよ」
「俺で良かったら相談に乗りますぜ」
「本当!? やったぁ!!」
林田力は喜びのあまり踊り出した。
林田力は屋敷の中に入って行った。
「こちらの部屋で待っていて下さい」
「はい、分かりました」
林田力が待っていると、やがて一人の女性がやって来た。
「初めまして! わたしの名前は橘花といいます!!」
「あ、どうも。私は林田力と言います」
「よろしくお願いしまーす!!」
彼女は元気よく挨拶をした。
「あの、今日はわざわざ来てくださってありがとうございます!!」
「いえ、とんでもないですよ」
「うふふ。でも、嬉しくてつい舞い上がってしまいました」
「はあ……」
林田力は苦笑いを浮かべた。
(何だか変わった人だなぁ)
「では、そろそろ行きましょうか」
「はい、分かりました」
二人は部屋を出て歩き始めた。
(うーん、緊張するなぁ……)
心臓がドキドキし始めた。
「あの、大丈夫ですか?」
「はい、何とか……」
「そうですか。では、頑張って下さい」
「はい!!」
しばらく歩くと、大きな扉の前に着いた。そして中に入ると、そこには大勢の人が座っていた。彼らは一斉に二人に注目すると、口々に何かを言い出した。しかし、林田力には何を言っているのか分からなかった。そこで、隣にいる橘花に尋ねてみた。
「すみません。今、何とおっしゃっているのでしょうか?」
「皆さん、あなたの本の感想を述べているんですよ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「いえいえ、当然のことですよ」
そう言って橘花は微笑んだ。
「ところで、お二人はどういう関係なんですか?」
「わたくし達は夫婦なのです」
「へぇ……。そうなんですね」
「はい。実はわたくし達、長崎で知り合ったばかりでして……」
それからしばらくして、祝宴が始まった。
「それでは皆様、お酒をお注ぎいたしますよ」
橘花の合図によって、人々は盃を手に取った。
「それじゃ、乾杯しましょうか」
「えっ? はい……」
林田力は何が何だか分からないまま、とりあえず酒を飲み干した。それから、次々と料理が運ばれてきた。
「どうぞ召し上がれ」
「はい、いただきます」
林田力は箸を手にした。
「美味しいですね」
「そうでしょう? 長崎名物のカステラもあるんですけど、食べますか?」
「いいですね。是非とも頂きたいです」
「はい、どうぞ」
戸惑いながらも、それを食べた。
「いかがですか?」
「とても甘いですね」
「そうでしょう?」
「はい。それにしても、こんなに豪華な食事は初めてです」
「それは良かったです」
「はい、ありがとうございます」
林田力は笑顔を見せた。




