僕は彼女の指示に従って公園に向かった
僕は彼女の指示に従って公園に向かった。幸いなことに、目的地までの道順は簡単だったので迷わずに行くことができた。僕は、指定された場所に着くと辺りを見回してみた。すると、ブランコに座って俯いている少女の姿を見つけた。僕は、彼女に駆け寄った。
「れいさん!」
彼女は顔を上げると、僕の方を見た。
「あっ! 来てくれたんですね」
彼女は微笑んで言った。
「ありがとうございます!」
「いや、別に大したことではないよ。それより、れいさんの方こそ大丈夫なの?」
「はい。大丈夫です。心配しないでください」
「そっか。それならいいんだけど……」
「ところで、あなたは、私のことを幽霊だと思っていないんですよね?」
「まあ、今のところはそう思ってるけど……」
「そうですか……」
彼女は寂しげな表情を浮かべて呟いた。
「それなら、私のことを幽霊だと思って接してくれませんか? その方が、お互いに気兼ねなく話せると思うんです。どうでしょうか?」
「うーん……」
僕は首を傾げた。
「それは、ちょっと難しいかも……」
「どうしてですか? 私のことを信用できないからでしょうか?」
「いや……違うんだよ……。そうじゃなくてさ……」
「では、どういう意味なんでしょう?」
「ええと……つまりさ……僕は、君の正体を知りたいわけだよ。だからさ、君の言う通りにしたら、君のことを信じられなくなってしまうんじゃないかって思うわけなんだよね」
「そう……なんでしょうか?」
「そうなる可能性は高いよね?」
「うーん……。そうかもしれませんけど、でも、私にはよく分からないのです。私は、自分が何者なのか分からないのですから、あなたに何を言っても無駄じゃないかって思います」
「それは、どうかな?」
「えっ?……どういう意味でしょう?」
「だって、れいさんは、自分の正体を知っているじゃない?」
「それは、そうですけど……」
「だったら、教えてくれないか?」
「でも、それは……」
彼女は言い淀んだ。
「やっぱり、駄目なのかい?」
「いえ……分かりました……」
彼女は小さく首を振ると、小さな声で答えた。
「じゃあ……」
「えっ!?」
「目を閉じてください」
「どうして?」
「私の姿を見ないようにするためです」
僕は言われた通りにした。目を閉じると暗闇の世界が広がった。しかし、すぐに光を感じた。眩しい光が瞼を通して飛び込んできたのだ。そして、何かが僕に触れてきた。柔らかく温かい何かが――僕は、それを両手で掴んだ。すると、彼女は僕に抱きついてきて、そのまま僕を押し倒した。僕は地面に仰向けになったまま動けなくなった。そして、そのままの状態で、しばらくじっとしていた。
「もう、開けても大丈夫ですよ……」
しばらくしてから彼女がそう言ったので、僕はゆっくりと目を開けた。目の前に彼女の顔があった。彼女は、僕の顔を覗き込むようにして見つめていた。
「これで、信じてもらえますか?」
彼女は訊いてきた。
「ああ、信じるよ。君は間違いなく生きている人間なんだね」
僕は、彼女の身体を抱き締めた。そして、強く抱きしめた。
「ねえ、君はいったい誰なの?」
僕は尋ねた。
「さあ……。分かりません」
彼女は言った。
「ただ一つだけ言えることは、私があなたの知っている『れい』であることだけは間違いないということだけです」
「じゃあ、君は僕の前から姿を消した後、ずっと僕のことを探していたのかい?」
「はい……。探していました」
「それで、やっと僕を見つけることができたんだね?」
「そうですね……」
「じゃあ、これからは、僕と一緒に暮らしてくれるかい?」
「ええ、もちろんです」
彼女は嬉しそうに言った。
「喜んで一緒に暮します」
「本当かい?」
「はい。もちろんです」
「やったぁ!」
僕は思わず叫んでしまった。
「そんなに嬉しいんですか?」
彼女は不思議そうに言った。
「うん!ごく嬉しいよ!」
「良かった……」
「じゃあ、帰ろうか?」
「はい!」
僕は、れいさんと一緒に帰った。




