表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
林田力 短編小説集  作者: 林田力
林田港
67/103

私はこの家の前の持ち主の娘でした

「私はこの家の前の持ち主の娘でした。名字は幸代といいます」

「幸代という名字なら聞いたことがある。確か、この辺りの名士じゃなかったかな」

「はい、父は地元の名士として尊敬されていました。ところが、ある日、突然姿を消してしまったのです。そして、しばらくしてから死体となって発見されました」

「殺されたというわけか?」

「そういうことになりますね」

「誰に?」

「それはわかりません。ただ、父が殺されてからというもの、家に奇妙な現象が起こり始めました。夜中に物音がしたり、誰もいないはずなのに人の気配を感じたり、部屋の中に誰かがいたような気がして振り向いたら、そこには誰もいなかったというようなことが何度もあったのです」

「それで、あなたはこの家を手放したのですか?」

「いいえ、そんなことはしませんでした。怖かったけれど、父には世話になった恩義がある。だから、せめて父の形見だけでも残しておこうと思ったのです」

「なるほど」

「しかし、困ったことに家はどんどん荒れていきました。雨漏りする箇所が増え、床板を踏み抜くようになりました。このままでは家ごと潰れてしまうかもしれない。そこで霊となりました」

「それがきっかけですか」

「はい、その通りです。最初は不安でしたが、霊になったら快適そのものでした。お陰様で、今ではすっかり元気になりましたよ」

「それはよかったですね」

「ありがとうございます。でも、最近になって、またおかしなことが起こるようになってきたんですよ」

「どんなふうに?」

「例えば……」

その時、玄関の戸を叩く音と、「ごめんください!」と呼ぶ声が聞こえてきた。

「はーい!」

美千代が慌てて出ていった。

「何か来客みたいだぞ」

「そうらしいですね」

「一緒に行けばいいじゃないか」

「いえ、私は遠慮します」

「どうしてですか?せっかく来たんですから、少しくらい付き合ってもいいじゃないですか」

「いえ、私は幽霊とか心霊写真といった類のものは苦手なんです」

「大丈夫ですよ。幽霊といっても人間なんだから」

「しかし、相手も幽霊なんでしょう?」

「まあ、そうだが……。しかし、心配はいらないと思うな」

「どうしてですか?」

「だって、ここには幽霊がいるんだぜ。だったら、相手の幽霊も幽霊みたいなもんじゃないか」

「ううむ、言われてみれば確かに……。しかし、何だか嫌な予感がするんだよなあ」

「気にしすぎだよ。さあ、行こう!」

林田は大場の腕を引っ張って連れて行った。

「ちょっと待ってくれ。まだ心の準備が……」

大場は抵抗したが無駄だった。二人は玄関まで引きずられていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ