本当に嬉しい
「本当に嬉しい……」
「私も嬉しいよ」
私は繰り返し言った。
「ありがとうございます……」
「でも、どうして私に会いたかったの?」
「それは……」
彼女は口籠もってしまった。そして、しばらく沈黙が続いた後、彼女は静かに語り始めた。
「私、小さい頃から身体が弱くて、学校もほとんど行けなかったんです」
「そうなんだ……」
私は相槌を打った。
「だから、友達と遊んだりすることもあまりできませんでした。いつも、一人で本を読んでいるような子どもだったんです」
「寂しくはなかった?」
「寂しいというより、不安の方が大きかったですね……」
「不安?」
「はい……」
彼女は少し躊躇うと、思い切ったように言葉を吐き出した。
「だって、私には家族がいませんから……」
「家族がいない?」
私は驚いて聞き返した。
「どういうこと?君には両親がいるはずだろう?」
「いいえ」
彼女は強く否定した。
「私の家族はいないんですよ。私が生まれた時には、もう死んでいましたから……」
「死んだ?どうして?」
私は混乱していた。
「分かりません……。でも、お父さんもお母さんも交通事故で亡くなったって聞いています」
「そんな……」
私は絶句してしまった。
「それからというもの、親戚の人たちが面倒を見てくれました。でも、それも長くは続かなかったんです……」
「どうして?」
「私が中学を卒業すると、みんな家を出て行ってしまいました。そして、そのまま戻ってこなくなりました」
「どうして?」
私は訊ねることしかできなかった。
「さあ……」
彼女は困っている様子だった。
「理由は分からないんですけど、きっと、邪魔になったんだと思います」
「ひどい……」
私は憤慨したが、彼女の反応は違った。
「仕方ないですよ……」
彼女は苦笑して続けた。
「私みたいな人間をずっと面倒見てくれるほど、世の中は甘くないんです」
「君はそれで良かったのかい?」
「もちろん、最初はショックでした。すごく悲しい思いをしました。でも、時間が経つにつれて、だんだんどうでもよくなってきたんです。慣れてしまったんでしょうか?」
彼女は自嘲気味に笑ってみせた。
「どうやら、そういう性格みたいです」
私は何も言えなかった。ただ黙って彼女の話を聞いていた。すると、彼女は急に真剣な表情を浮かべた。
「でも、最近になって、また別の感情が湧いてきたんです。あなたに対する想いです」
「どうして?」
「分かりません……」
彼女は首を振った。
「でも、あなたのことを想っているだけで幸せな気分になれるんです。こんな気持ちになったのは生まれて初めてかもしれません……」
「そうか……」
私は複雑な心境だった。




