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林田力 短編小説集  作者: 林田力
林田港
56/103

本当に嬉しい

「本当に嬉しい……」

「私も嬉しいよ」

私は繰り返し言った。

「ありがとうございます……」

「でも、どうして私に会いたかったの?」

「それは……」

彼女は口籠もってしまった。そして、しばらく沈黙が続いた後、彼女は静かに語り始めた。

「私、小さい頃から身体が弱くて、学校もほとんど行けなかったんです」

「そうなんだ……」

私は相槌を打った。

「だから、友達と遊んだりすることもあまりできませんでした。いつも、一人で本を読んでいるような子どもだったんです」

「寂しくはなかった?」

「寂しいというより、不安の方が大きかったですね……」

「不安?」

「はい……」

彼女は少し躊躇うと、思い切ったように言葉を吐き出した。

「だって、私には家族がいませんから……」

「家族がいない?」

私は驚いて聞き返した。

「どういうこと?君には両親がいるはずだろう?」

「いいえ」

彼女は強く否定した。

「私の家族はいないんですよ。私が生まれた時には、もう死んでいましたから……」

「死んだ?どうして?」

私は混乱していた。

「分かりません……。でも、お父さんもお母さんも交通事故で亡くなったって聞いています」

「そんな……」

私は絶句してしまった。

「それからというもの、親戚の人たちが面倒を見てくれました。でも、それも長くは続かなかったんです……」

「どうして?」

「私が中学を卒業すると、みんな家を出て行ってしまいました。そして、そのまま戻ってこなくなりました」

「どうして?」

私は訊ねることしかできなかった。

「さあ……」

彼女は困っている様子だった。

「理由は分からないんですけど、きっと、邪魔になったんだと思います」

「ひどい……」

私は憤慨したが、彼女の反応は違った。

「仕方ないですよ……」

彼女は苦笑して続けた。

「私みたいな人間をずっと面倒見てくれるほど、世の中は甘くないんです」

「君はそれで良かったのかい?」

「もちろん、最初はショックでした。すごく悲しい思いをしました。でも、時間が経つにつれて、だんだんどうでもよくなってきたんです。慣れてしまったんでしょうか?」

彼女は自嘲気味に笑ってみせた。

「どうやら、そういう性格みたいです」

私は何も言えなかった。ただ黙って彼女の話を聞いていた。すると、彼女は急に真剣な表情を浮かべた。

「でも、最近になって、また別の感情が湧いてきたんです。あなたに対する想いです」

「どうして?」

「分かりません……」

彼女は首を振った。

「でも、あなたのことを想っているだけで幸せな気分になれるんです。こんな気持ちになったのは生まれて初めてかもしれません……」

「そうか……」

私は複雑な心境だった。


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