私たちは神社の前までやってきた
私たちは神社の前までやってきた。辺りを見回したが、人の気配はなかった。
「誰もいないみたいですね……」
彼女は不安そうな表情を浮かべていた。
「ここには誰もいないんだ」
「どういうことですか?」
「つまり、この神社を管理している人間がいないということだよ」
「どうしていないんですか?」
「それは分からないけど……」
私は肩をすくめた。「とにかく、行ってみよう」
「はい……」
私は彼女を促がすと、境内の中へと入っていった。やはり、そこには誰の姿もなかった。
「ここが神社なんですか?」
「ああ、そうらしいね」
私は適当な石段の上に腰を下ろした。
「座らないかい?」
「はい……」
彼女は戸惑いながらも、隣に座ってくれた。私はしばらくの間、何も言わずに空に浮かぶ月を見上げていたが、意を決して彼女に話しかけることにした。
「君はどうして殺されたんだい?」
「どうしてって……」
彼女は戸惑っている様子だった。
「どうして、そんなことを訊くんですか?」
「いや、ただ興味があっただけなんだ」
私は嘘をついた。
「どうして殺されたのか知りたいんです」
「分かりました……」
彼女は小さく息をつくと言った。
「私は殺されたんじゃないんです」
「えっ?」
予想外の言葉だった。
「じゃあ、どうしてここにいるんだい?」
「自分で来たんです」
「どうして?」
「どうしても確かめたいことがあったんです」
「何を?」
「あの日のことですよ」
「あの日のこと……」
私はハッとした。
「まさか、あの事故のことを言っているわけじゃないだろうね?」
「ええ……」
彼女は肯いた。
「あの時の記憶は曖昧で、よく覚えていないんですけれど、どうしても気になることがあって……」
「何だい?」
「どうして、あの時、あなたは私を助けてくれたんですか?」
「あの時というのは、いつのことだ?」
「あなたが初めてこの神社に来た日のことです」「ああ……」
私は思い出した。確かに、私は彼女が車に轢かれそうになった瞬間、飛び出して助けようとしたのだ。しかし、結果は彼女の言う通りになってしまった。
「あれ以来、あなたのことが頭から離れなくて……、どうしても、もう一度会わなくちゃいけないと思って……」
「そうか……、でも、残念ながら、その願いは叶わなかったようだね」
「ええ……」
彼女は悲しそうに俯いた。
「でも、どうしても諦めきれなくて……」
「それで、ここまでやって来たんだね?」
「はい……」
彼女は力無く答えた。
「でも、無駄足になってしまいました……」
「そんなことはないよ」
私は首を振った。
「少なくとも、私は君に再会できたからね」
「本当ですか?」
彼女は顔を上げた。
「嬉しい……」
「私も嬉しいよ」
私は正直な気持ちを口にした。
「君とこうして話ができるなんて夢にも思わなかったからね」
「私もです……」
彼女は微笑んで言った。




