表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
林田力 短編小説集  作者: 林田力
林田港
50/103

この辺りでいいだろう

「この辺りでいいだろう」

道端に車を停めた。

「どこへ行くんですか?」

「すぐそこだよ」

私は助手席に置いていたリュックサックを背負った。

「何ですか?それ」

「秘密兵器さ」

「ふーん……」

「君も持ってくれよ」

「はい」

後部座席から彼女の荷物を持ち出した。

「重いなあ」

「そうでもないでしょう」

「いや、かなりあるぞ」

「そんなことないですってば」

「まあいいか……行こう」

私たちは車を出た。

「本当にここなんですね」

「ああ、間違いないと思うけどね」

国道沿いの歩道に立った。

「ほら、あれじゃないか?」

「えっ、どれですか?」

「あのマンションじゃないのか」

「うーん……」

彼女は首を傾げた。

「違うかな」

「違いますよね」

「でも、ちょっと行ってみよう」

「はい」

道路を渡った。

「こっちみたいだ」

「待ってください」

彼女が私の腕を掴んだ。

「どうしたんだ?」

「誰かいますよ」

「本当かい?」

私は目を凝らしてみた。確かに人影があった。その人物はこちらに向かって歩いてきた。

「こんにちは」

近づいてくるなり男は挨拶をした。年齢は四十代後半くらいだろうか。細身だが背が高くて姿勢が良い。服装はカジュアルだった。白いシャツの上に黒いベストを着ている。首からは小さなカメラを下げている。

「こんにちは」

私も会釈をした。

「お二人さんは観光の方ですか?」

「いえ、仕事ですよ」

「へぇ、どんな仕事をなさっているんですか?」

「カメラマンの助手みたいなものです」

「助手ねぇ……。それでこんなところまで来られたわけですか」

「ええ、そうなんですよ」

「それは大変ですね」

彼は微笑を浮かべた。

「あなたはこの辺に住んでいる方ですか?」

「ええ、すぐ近くに住んでおりますよ」

「じゃあ、この辺りのことに詳しいんじゃありませんか?」

「詳しいというほどではありませんが、それなりに知っているつもりです」

「実は私たち、この辺りにあるはずの建物を探しているんですが……」

「ほう、どんな建物でしょうか?」

「古い洋館らしいんだけど……」

「なるほど……」

「ご存じないですかねえ」

「申し訳ないが、私は知りません」

「そうですか……」

「力になれなくてすみませんでした」

「いや、とんでもない。ありがとうございます」

私は頭を下げた。

「ところで、そちらのお嬢さんの方はどこかで見たことがあるような気がするんですが……」

彼が言った。

「えっ……」

私は驚いて振り返った。

「気のせいでしょうかね……」

「どうかしましたか?」

「いや、何でもありませんよ」

私は苦笑しながら答えた。

「それならいいんですが……」

男は不思議そうに首を捻っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ