夏祭り(前編)
私は朝早く起きると、朝食を食べるために広間へと向かった。すると、既に何人か集まっており、その中には千佳もいた。
「おはようございます」
「おはようございます」
「あ!お姉ちゃん!」
「うん。おはよう」
「今日も早いんだね」
「まぁね。習慣になってるしね」
「ふぅ~ん。そうなんだ」
「それより、みんな早いのねぇ」
私は周りを見回す。すると、忠左衛門がこちらに向かって歩いてくる姿が見えた。
「おぉ。これは皆さん。おはようございます」
彼は私たちに挨拶をする。
「おはようございます」
「忠左衛門さん。おはようございます」
「忠左衛門殿。おはようございます」
「忠左衛門さん。おはよう」
私たちはそれぞれ返事をした。
「さて、そろったようですな。では、いただきましょうか」
「はい」
こうして食事が始まった。
「ところで、昨日は何をしていたのだ?」
忠左衛門が尋ねてきた。
「私は剣術の練習をしていました」
「そうだったのか。どうだ?少しは上達したかな?」
「まだまだですね。これからもっと頑張らないといけません」
「そうか……」
「忠左衛門さんは何をしていたんですか?」
「私は、部下たちと稽古をしたり、領内を視察したりしていたよ」
「そうなんですか」
「ああ」
「忠左衛門様は、毎日忙しそうだよね」
「確かにそうね」
私は千佳の言葉に同意した。すると、隣に座っていた忠左衛門が口を開く。
「いやいや、それほどでもないですよ。それに、私のことは呼び捨てで構わないと何度も言っているだろう?」
「いえ、それはできませんよ……」
「どうしてだい?」
「だって、年上の方を呼び捨てにするわけにはいきませんから……」
「しかし、私は君たちよりもずっと長く生きているだけなんだよ?気にする必要はないと思うのだが……」
「それでも駄目なものは駄目ですよ」
「はっはっは。わかったよ」
忠左衛門は苦笑している。
「でも、本当にすごいです。いつも忙しくされてますもんね」
「そうね」
「そんなことはないぞ?私の仕事など大したことではないからね」
「そうなんですか?」
「ああ。家臣たちの報告を聞いたり、指示を出したりするだけだからね」
「へぇ~。そうなんですね」
私は感心してしまった。
「そういえば、もうすぐ夏祭りがあるそうじゃないか」
「はい。ありますよ」
「そこで何か催し物はあるのかい?」
「うーん……特に何もないと思いますけど……」
「そうなのか?」
「はい。毎年、出店がいくつか出るくらいで、特別なことは何もありませんね」
「そうか……」
「どうかされたのですか?」
「実は、祭りに行ってみたいと思っていてね」
「え!?本当ですか?」
私は驚いてしまう。
「ああ。だが、私のような者が行ってもいいものなのだろうか?」
「大丈夫じゃないでしょうか?」
「そうか……。それならいいんだが……」
「もしよろしかったら、一緒に行きますか?」
「私が一緒だと邪魔にならないかね?」
「そんなことありませんよ。むしろ歓迎されるんじゃないですかね」
「そ、そうなのかい……?」
「ええ。きっと」
「そ、そういう事なら……。ぜひお願いしたい」
「わかりました。じゃあ、後で予定を確認しておきますね」
「ありがとう」
忠左衛門は嬉しそうにしている。
(こんなに喜んでもらえるとは思わなかったな)
私は内心驚いていた。
朝食を食べ終えた後、私は自室に戻った。そして、千佳と一緒に今日の予定について話し合うことにした。
「ねえ、千佳。今日って空いているかしら?」
「え?うん。別に用事はないし、暇だけど」
「よかった。ちょっと相談に乗ってほしいことがあるんだけど……」
「え!?お姉ちゃんから相談!?珍しい!」
「まぁ、たまにはそういうこともあるわよ」
私は頬を掻く。
「それで、何の相談なの?」
「それが、今日、忠左衛門さんがお祭りに行きたいって言ってたのよ」
「え!?そうなの!?」
「ええ。だから、その付き添いで行こうと思っているのよ。あなたも来てくれる?」
「もちろん行く!」
「ありがとう。助かるわ」
「お礼なんて言わなくていいよ。お姉ちゃんのためだもの。当然だよ」
「ふふ。そう言ってくれて嬉しいわ」
「うん!」
「ところで、千佳は誰か好きな人とかいないの?」
「ふぇ!?いきなりどうしたの?」
「いや、なんとなく聞いてみただけよ」
「そ、そうなんだ……」
彼女は顔を赤くして俯いてしまった。私は彼女の頭を撫でる。
「まぁ、ゆっくり考えてみて」
「う、うん」
「さて、そろそろ出かけましょうか」
「そうだね」
私たちは部屋を出た。屋敷を出ると、忠左衛門が待っていた。
「お待たせしました」
「いや、そんなことはないよ」
「では、行きましょうか」
「ああ」




