表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
林田力 短編小説集  作者: 林田力
オムニバス
41/103

転校生(後編)

昼休みになると、右近君の周りには多くのクラスメイトが集まってきた。その中には七瀬の姿もあった。

俺はその様子を眺めながら、自分の弁当を食べ進めていった。

「おい、久遠寺。ちょっとこっちに来てくれ」

突然、俺の名前が呼ばれた。声の主は担任の教師だった。

「なんでしょうか?」

「お前に話したいことがあるそうだ」

「誰からでしょう……?」

「さぁな。とにかくついて来てくれ」

「はい……」

こうして、俺は職員室へと向かった。そして、そこで待っていた人物を見て驚いた。なぜならば、そこには右近君の姿がったからである。彼は真剣な表情で言った。

「単刀直入に言う。久遠寺に頼みたいことがあるんだ」

「えっ!?」

俺は驚きの声を上げた。まさか、転校初日にこんなことを言われるとは思っていなかったからだ。

「とりあえず、詳しい話は後だ。ついてきてくれないか」

「はい……」

こうして、俺は右近君と一緒に屋上へと向かうことになった。俺たちが屋上にたどり着くとそこには誰もいなかった。

「ここなら誰にも聞かれる心配はない。だから安心して話をすることができる」

「はい」

「まず最初に言っておくが、俺はお前のことを信用している。だから、正直に答えてほしい」

「わかりました……」

「まずは、昨日七瀬と何があったのか教えてくれるか?」

「はい……。七瀬さんの告白を断りました」

「理由は?」

「他に好きな人ができたからです」

「本当か?」

「はい」

「嘘じゃないよな?」

「もちろんです」

「わかった。それじゃあ、次の質問だ。七瀬のことは嫌いなのか?」

「いえ、そんなことありません。むしろ好きです」

「だったら付き合えば良かったじゃないか」

「それができない事情があるんです」

「どういうことだ?」

「実は僕にはもうすでに婚約者がいるんです」

「ええぇー!!」

俺は思わず大声で叫んでしまった。

「そいつはマジか?」

「はい、事実です」

「ちなみに相手の名前は何ていうんだ?」

「水無月彩音といいます」

その名前を聞いて、俺はハッとした。

「もしかして、その人はあの有名な女優の水無月彩香さんの妹か?!」

「よく知っていますね。そうです。彼女は僕の婚約者です」

「なるほど。そういうことだったのか」

「はい。なので、僕は七瀬さんと付き合うことはできないんです」

「そうか。でも、どうしてそのことがバレたんだ?」

「それは、七瀬さんとメールをしているときに、うっかりそのことを書いてしまって……」

「それで、そのことを知った彼女が嫉妬に狂って襲ってきたというわけか?」

「はい。まぁ、半分正解です」

「半分だと? どういう意味なんだ?」

「実は、七瀬さんは僕に好意を抱いているようなんです」

「それは知っている」

「ただ、それは恋愛感情ではなく、あくまで友情の範囲内らしいんです」

「つまり、友達として好きということか?」

「はい、そうなんです」

「それで?」

「七瀬さんは僕に対して恋愛相談をしていたみたいなんです」

「なんだよ、そりゃあ。紛らわしいな」

「僕だって最初は信じられませんでした。だけど、実際に七瀬さんは僕に抱きついてきたり、キスしようとしてきたりしたんです」

「おいおい、まじかよ……」

「はい、残念ながら……」

「なんじゃそら……」

俺は呆れ果ててしまった。

「それでも七瀬さんは僕と恋人同士になりたいのではなく、親友のような関係を望んでいるのだと思います。だから、彼女には申し訳ないけど断るしかなかったんですよ」

「なぁ、右近君」

「はい?」

「お前は本当に七瀬のことが好きじゃないのか?」

俺は真剣な表情で右近君の目を見つめながら尋ねた。すると、彼は少し考えた後に言った。

「正直言って、まだわかりません。でも、今は彼女よりも気になる人がいます」

「誰だ?」

「久遠寺さんです」

「えっ!?」

「実は今日、久遠寺さんに一目惚れしてしまったんです」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。お前は俺に告白するために転校してきたっていうのか?」

「はい」

「なぁ、右近君。悪いことは言わねぇから考え直せ」

「いいえ、考え直すつもりはありません」

「なんでだよ! どうしてそこまでして……」

「久遠寺さんのことが好きだからです」

「……」

「それに、この気持ちに嘘はつけません」

「そうか……。お前が本気だということはよくわかった。だが、一つだけ約束してくれないか?」

「何でしょうか?」

「絶対に後悔だけはするなよ」

「わかりました。肝に命じておきます」

右近君は覚悟を決めた表情を浮かべていた。どうやら彼は本気みたいだな……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ