転校生(前編)
今日で冬休みが終わった。明日からは学校だ。
俺は朝食を食べながら、母さんと話をしていた。
「お兄ちゃん、明日から学校でしょ?」
「ああ、そうだね」
「友達とかできるかな?」
「どうかな……。でも、できたらいいなと思うよ」
「うん! 私も!」
「そういえば、母さんの昔の知り合いにも高校や大学を出た人がたくさんいたって言ってたよね?」
「えっ!? うーん……まあ、そうだけど……」
「どんな人がいたの?」
「別に普通の人だったよ。頭が良かったり、スポーツができたりする人は多かったけど」
「へぇ~そうなんだ」
「あっ、そう言えば、私の高校時代のお姉ちゃんの同級生には慶應義塾大学に行った子もいたし、早稲田大学に行った子もいるらしいよ」
「マジで!?」
「うん。だから、その子たちと連絡を取ってみたんだけど、みんな忙しいみたいでなかなか予定が合わなかったんだよねぇ」
「そっかぁ……」
「もしよかったら、今度紹介するよ。きっと仲良くなれるんじゃないかなって思うから」
「うん、わかった。楽しみにしてるよ」
そんな話をしているうちに時間は過ぎていった。
「それじゃあ、行ってきます」
「気をつけて行ってくるのよ」
「はい」
こうして、俺は家を出て通学路を歩いていった。
しばらく歩いていると後ろの方から声をかけられた。振り返るとそこには七瀬の姿があった。彼女は俺に向かって手を振っていた。どうやら彼女も同じタイミングで家を出てきたようだ。俺たちは一緒に登校することになった。
「おはよう、七瀬」
「おっす、久遠寺君」
「いよいよ明日からだね」
「そうだね」
「何だか緊張してきたよ」
「大丈夫だよ。俺がついているからさ」
「ありがとう」
それからしばらくして学校にたどり着いた。教室に入るとすぐに担任の先生が来た。彼は出席を取り始めた。
「えっと、まず最初に転校生を紹介するぞ」
「おおぉ!!」という歓声が上がった。
「よし、入ってこい」
ガラガラッと扉が開かれて一人の男子生徒が入ってきた。その瞬間、クラス中が再びざわついた。なぜならば、彼があまりにもイケメンだったからである。身長は百八十センチくらいありそうである。髪の色は黒だが少し茶色っぽい感じである。顔立ちはとても整っていて、まるで俳優のような美形であった。
「はじめまして、林田右近と言います。よろしくお願いします」
彼の自己紹介が終わると女子生徒たちからは黄色い悲鳴のようなものが上がり、一部の男子生徒からはブーイングが起こった。しかし、当の本人は特に気にしていない様子であった。
「じゃあ、林田の席は一番後ろに空いているところがあるだろう? そこに座ってくれ」
「わかりました」
右近君は指定された席に腰かけた。すると、隣の席に座っている女の子が話しかけてきた。
「ねえ、あなた名前は?」
「僕は林田右近です」
「私は七瀬渚っていう名前なんだ。これからよろしくね」
「こちらこそよろしく」
「ところで、どこから来たの?」
「東京です」
「そうなんだ。じゃあ、今までずっと東京で暮らしてたんだ?」
「いえ、実は僕、小さい頃に親の仕事の都合で引っ越しをしたんです。それで今は埼玉に住んでいます」
「へぇ~そうなんだ。じゃあ、それまではどこにいたの?」
「それは秘密です」
「ふぅん、そうなんだ」
「ところで、七瀬さんはどうしてこの学校に来たんですか? やっぱり彼氏を追いかけて来たとか?」
「違うわよ!ただ単に家が近いだけ。それに私、恋愛に興味ないもん」
「そうですか。じゃあ、好きな人はいるんですか?」
「いないわ。今のところは」
「なるほど。ところで、林田さんは恋人はいるの?」
「いましたけど、別れてしまいました」
「あらら、そうなんだ」
「はい」
「ちなみにどんな人なの?」
「僕の幼馴染で、とても可愛くて優しい子なんですよ」
「へぇ~そうなんだ。いいね」
「そうですね」
「あっ、そうだ。せっかくだからメアド交換しない?」
「別に構いませんよ」
二人は携帯を取り出してメールアドレスを交換した。その後、授業が始まったが、七瀬はチラッチラッと何度も右近君の方を見つめていた。




