温泉
温泉旅行に行く。土曜日の宿泊という事で混んでいるかな、と思ったが、すぐに予約OKの返事をもらい、とても助かった。日頃の疲れを癒す旅行であるが、旅行前日に明日への備えのために早く帰った。築六〇年の老舗旅館である。付近によく行く人も気付かない穴場の旅館である。Googleで見つけた。インターネットは新しい文化であるが、古いものを気付かせてくれる。
山に続くなだらかな丘に建つ宿は、極めて閑静。小さな窓の一つ一つが、何かを語りかけてくれそうなメルヘンチックな旅館である。海の幸、山の幸をふんだんに使った懐石料理をはじめ、温泉も自慢の宿である。四季花咲く庭園の中に、いくつかの棟が離れ家のように建っている。岩盤や壁・天井など細部までこだわりの造りとなっていた。
温泉には治療や療養を目的に訪れる人が後を絶たない。良質の湯は古来、多くの旅人を癒してきた。日常を少し離れ、緩やかな時間を感じることができる。あちこちの谷あいから熱湯が噴き出すスケールの大きな温泉地である。「美女づくりの湯」は名前にふさわしくスベスベした湯で、五回も入った。宿には早く入ったため、その日のうちに四回、翌日朝に一回と普段より多く温泉に入ってくつろいだ。特に二四時間源泉のお湯を流し放しはとても良い。循環ろ過の風呂は嫌だと常々思っており、これは最高であった。洗い場のシャワーのお湯も温泉であった。シャワーのお湯から硫黄の臭いがした。宿の至る所に温泉に関するデータが貼られていて面白い。ある程度読んだ後に温泉に入るとまた違った感じになる。
ぬるい湯に浸かるか熱い湯に浸かるか、それが問題である。かつては熱い湯が好きであったが、最近はぬるい湯の良さが分かってきた。ぬるい湯は長湯ができる。身体に負担をかけずに、長く入浴できる。最初はぬるすぎると思ったが、慣れると快適さが勝る。江戸っ子的な熱さを求める向きには不満だろうが、お湯に浸かっていると体の芯から温まってくる。ゆっくり浸かることで、自分の世界にたっぷりと浸かることができる。保温効果に優れ、冷え性や皮膚疾患の効能があるという。
熱い湯はヒートショックの危険が高まる。「日本では熱い風呂に長くつかるのが好きな人が多く、それが事故につながっていると指摘されています」(市川衛「日本では「お風呂で溺死する」人が多い 入浴時の「ヒートショック」意外な原因と対策は」Yahoo!ニュース2019年11月14日)
一方で寒い冬場はいくら浸かっても体が温まった感じがしない不満がある。少し前の季節は温い湯に長時間浸かって満足していたが、このような時期は熱い風呂に入らないと体が温まった気にならない。それでも熱い湯にしばらく浸かって体が温まった後は、それまで通り、ぬるい湯に浸かることも心地良くなる。
風呂にはアヒルの玩具が浮かんでいた。お湯に浮かべて遊ぶものである。アヒルの玩具の底面には日本語や英語、中国語、韓国語で歓迎の言葉が書かれていた。インバウンド需要の高まりを改めて感じた。




