執筆中のミス
東雲さんにアドバイスを受けながら、私の執筆活動が始まった。彼女は私が書く文章にダメ出しをしたり、アドバイスしてくれたりしている。とても心強かった。執筆を進めていく中で、どうしても分からないところが出てきた。
「東雲さん、ここなんですけど……」
私は質問をした。すると、彼女はノートパソコンを覗き込みながら答えてくれた。
「ここはね、セリフがあるでしょ?」
「はい」
「そこを変えれば違和感はなくなるよ」
「なるほど」
私は早速修正することにした。セリフを変えてみることにする。
「『私、ユウキ君のことが好きなの!』」
こんな感じだろうか。試しに入力してみた。
「『俺もユカのことが好きだ』」
よし、これでいいだろう。さて、次はどうしようかな……。私はまた悩み始めてしまった。
「どうしたの?」
東雲さんの声だ。
「いえ、どうすればいいのかなって」
「うーん……。そうだね……。あ! こういうのはどう?」
彼女は人差し指を立てて提案してきた。
「キャラクターの性格や外見は、そのままでいいと思うよ」
「どうしてですか?」
「えっとね……」
東雲さんは腕組みをして考えている。
「例えばだけど、性格や見た目を変えると読者が混乱するかもしれないでしょ? それはよくないと思うんだ」
「なるほど」
「あとは、その方が物語に入り込めると思うし」
「それもそうですね」
私は納得した。確かに、性格を変えたりするよりもそのほうがいいだろう。
「ちなみに、私はどんなキャラがいいですか?」
私は気になったので訊いてみた。
「え?あぁ、うん」
東雲さんは一瞬だけ戸惑った様子を見せた後で答えた。
「内向的な女の子かな」
「へぇ」
なかなかいいじゃないか。悪くない。
「あ、もちろんユカちゃんもいいよ」
「ありがとうございます」
「うん。じゃあ、続きを書こうか」
「はい」
私は毎日のようにパソコンに向かっている。東雲さんに言われた通り、自分の性格や容姿はそのままにしておいた。おかげで、だいぶ慣れてきた気がする。しかし、まだまだ勉強不足だ。これからもっと学んでいかなければならない。
そんなある日のこと。
「ねぇ、三並君」
いつものように作業を進めていると、東雲さんが声をかけてきた。
「はい」
「今度、デートしない?」
「……」
私は思わず黙ってしまった。
「あ、ごめん。急に言われても困るよね」
東雲さんは申し訳なさそうに笑っている。
「いえ、別に困るとかじゃないんですけど」
「ただ、びっくりして」
「ですよね」
「あの、いつにする?」
「……じゃあ、来週の土曜日とかはどうですか?」
「うん、いいよ」
東雲さんは嬉しそうな顔をしていた。なんだか可愛い。そんなことを考えている自分が恥ずかしくなってきた。
「どこに行きましょう?」
私は話題を変えた。
「映画でも観に行く?」
「いいですね」
「じゃあ、決まりだね」
東雲さんは笑顔を浮かべていた。私もつられて笑う。デート。まさか自分にそのような機会が訪れるとは思っていなかった。しかも相手は東雲さんだなんて。小説を書いているだけで幸せだったのに、さらに現実で彼女と一緒に過ごせるなんて。夢みたいだ。私は少し浮かれてしまっていたらしい。だからだろう。執筆中にミスを犯した。
「あ……」
画面に映し出されているのはErrorの文字。そして、しばらくするとResize Reading……という文字が現れた。これはマズい。私は慌てて文章を読み返した。どこで間違えたのだろう。どこから書き直せばいいのだろう。
「どうしたの?」
東雲さんが心配そうに声をかけてくる。
「すみません。書き直します」
私は謝って、文章の修正を始めた。




