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林田力 短編小説集  作者: 林田力
東雲さん
19/103

執筆中のミス

東雲さんにアドバイスを受けながら、私の執筆活動が始まった。彼女は私が書く文章にダメ出しをしたり、アドバイスしてくれたりしている。とても心強かった。執筆を進めていく中で、どうしても分からないところが出てきた。

「東雲さん、ここなんですけど……」

私は質問をした。すると、彼女はノートパソコンを覗き込みながら答えてくれた。

「ここはね、セリフがあるでしょ?」

「はい」

「そこを変えれば違和感はなくなるよ」

「なるほど」

私は早速修正することにした。セリフを変えてみることにする。

「『私、ユウキ君のことが好きなの!』」

こんな感じだろうか。試しに入力してみた。

「『俺もユカのことが好きだ』」

よし、これでいいだろう。さて、次はどうしようかな……。私はまた悩み始めてしまった。

「どうしたの?」

東雲さんの声だ。

「いえ、どうすればいいのかなって」

「うーん……。そうだね……。あ! こういうのはどう?」

彼女は人差し指を立てて提案してきた。

「キャラクターの性格や外見は、そのままでいいと思うよ」

「どうしてですか?」

「えっとね……」

東雲さんは腕組みをして考えている。

「例えばだけど、性格や見た目を変えると読者が混乱するかもしれないでしょ? それはよくないと思うんだ」

「なるほど」

「あとは、その方が物語に入り込めると思うし」

「それもそうですね」

私は納得した。確かに、性格を変えたりするよりもそのほうがいいだろう。

「ちなみに、私はどんなキャラがいいですか?」

私は気になったので訊いてみた。

「え?あぁ、うん」

東雲さんは一瞬だけ戸惑った様子を見せた後で答えた。

「内向的な女の子かな」

「へぇ」

なかなかいいじゃないか。悪くない。

「あ、もちろんユカちゃんもいいよ」

「ありがとうございます」

「うん。じゃあ、続きを書こうか」

「はい」


私は毎日のようにパソコンに向かっている。東雲さんに言われた通り、自分の性格や容姿はそのままにしておいた。おかげで、だいぶ慣れてきた気がする。しかし、まだまだ勉強不足だ。これからもっと学んでいかなければならない。

そんなある日のこと。

「ねぇ、三並君」

いつものように作業を進めていると、東雲さんが声をかけてきた。

「はい」

「今度、デートしない?」

「……」

私は思わず黙ってしまった。

「あ、ごめん。急に言われても困るよね」

東雲さんは申し訳なさそうに笑っている。

「いえ、別に困るとかじゃないんですけど」

「ただ、びっくりして」

「ですよね」

「あの、いつにする?」

「……じゃあ、来週の土曜日とかはどうですか?」

「うん、いいよ」

東雲さんは嬉しそうな顔をしていた。なんだか可愛い。そんなことを考えている自分が恥ずかしくなってきた。

「どこに行きましょう?」

私は話題を変えた。

「映画でも観に行く?」

「いいですね」

「じゃあ、決まりだね」

東雲さんは笑顔を浮かべていた。私もつられて笑う。デート。まさか自分にそのような機会が訪れるとは思っていなかった。しかも相手は東雲さんだなんて。小説を書いているだけで幸せだったのに、さらに現実で彼女と一緒に過ごせるなんて。夢みたいだ。私は少し浮かれてしまっていたらしい。だからだろう。執筆中にミスを犯した。

「あ……」

画面に映し出されているのはErrorの文字。そして、しばらくするとResize Reading……という文字が現れた。これはマズい。私は慌てて文章を読み返した。どこで間違えたのだろう。どこから書き直せばいいのだろう。

「どうしたの?」

東雲さんが心配そうに声をかけてくる。

「すみません。書き直します」

私は謝って、文章の修正を始めた。


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