銃撃戦
「ねぇ、知ってたかい。この世界は誰かが作った箱庭だってこと」
突然、目の前にいる男がそんなことを言ってきた。俺は眉をひそめながら男の顔を見る。
「いきなり何を言ってるんですか。ここは現実ですよ」
「いやいや、違うって。この世界は作られた物なんだよ。つまり、ゲームみたいなものってことだ」
男は楽しそうに笑い出した。
「そんな馬鹿な事があるはずがないでしょう。大体、この世界に来れただけでも奇跡なのに、その上、ゲームの中に入れるなんて信じられないです。きっと夢を見ているんですよ、俺達は。早く目を覚まさないと」
「いやいや、これが本当の出来事なんだよ。ほら、ここに証拠があるだろう。この世界はプログラムで動いているんだ。この世界のどこかには、本物の人間がいるはずだよ。そして、僕らはその人達に会う為にここまで来たんじゃないか。忘れちゃったのかい?」
そう言われても全く実感がわかない。そもそも、本当にここがゲームの中なのかすら怪しいものだ。でも、もし男の言うことが本当だったとしたら、一体誰がそんな事をするんだろう。そんな事を考えていると、急に大きな音が聞こえてきた。
「うわっ!?」
思わず声が出てしまう。音の正体は銃声で、その方向を見ると、そこには大勢の人がいた。彼らはこちらに向かって走ってくる。
「おい、逃げるぞ」
「えっ、あっ、はい」
訳が分からないまま走り出す。
「こっちだ」
「はい」
「よし、このまま真っ直ぐ行けば外に出れる」
「分かりました」
そのまま暫く走っていると、前方に光が見えた。出口だ。
「もう大丈夫だな」
「はい」
「いやー、危なかったぜ。まさかあんな所に隠れていたとはな。もう少し遅かったら見つかっていたかもしれない」
「そうですね」
確かに、あの場所には誰もいなかった。隠れられそうな場所もなかった。あれが偶然とは思えない。
「しかし、驚いたよ。いきなり銃撃戦が始まるんだからさ。しかも、結構リアルなんだもんな。まるで本物みたいだ。もしかしたら、本当に俺たちはゲームの中に入ったのかもしれんな。まぁ、そんな事はありえないけどさ。はははははははは!」
「はは……はははははは……」
乾いた笑みを浮かべることしか出来なかった。
「さて、これで僕の話は終わりだよ。どうだい、面白かったかい?」
「ああ、とても興味深い話だったよ。ところで、どうして君はそんな話をしてくれたのかな?」
「それは、君にお願いを聞いて貰おうと思ってね。僕からのささやかなプレゼントだよ」
「なるほどね。でも、どうしてその話をしたのかな。別に僕に話す必要はなかったんじゃないのかな」
「ふふ、確かにそうだね。でも、君なら分かってくれると思ったんだよ。それに、この話が本当かどうか確かめたかったしね」
「へぇ~、それはどういう意味かな」
「言葉の通りの意味だよ。僕は君の事をよく知っているからね。そして、だからこそ、この話の真偽を確かめる必要があったんだ。だから、僕はあえて嘘をつくことにした。君の反応を見て、それが本当か確認しようと思ったんだ」
「へぇ~、それはそれは。なかなか面白い考えじゃないか。それで、どうだった?」
「ふふ、もちろん、君の言った通りだったよ。いや~、凄いな!よくそこまで調べ上げたもんだ。正直、感心してしまったよ」
「ふふ、ありがとう。褒めてくれて嬉しいよ」
「それで、僕の願いは聞いてもらえるのか?」
「まぁ、とりあえず約束通り君のお願いを聞く事にしようかな。僕は君の物語が好きだし、それに君は僕に会わせてくれた恩もあるしね」




