パパは吸血鬼
私はいつものように幼稚園に行く準備をしていた。でも、いつもと違ってお父さんの姿が見えなかった。
「あれ?パパがいないよ?」
「夕方には帰ってくると思うわよ」
「そっかぁ……じゃあ、帰ってきたら一緒に遊んでくれるかな?」
「ええ、きっと喜んでくれると思うわよ」
お母さんの言葉を聞いて嬉しくなる。早くお父さんに会いたいな……。
夕方になって玄関の扉が開く音が聞こえてきた。そして、お父さんの声が響く。
「ただいま」
私は急いで靴を脱ぐとリビングに向かった。
「おかえりなさい!」
「ただいま、良い子にしていたかい?」
「うん!」
お父さんに聞かれて元気よく答える。お父さんは満足そうに笑うと私を抱き上げてくれた。
「うふふ、元気一杯だな。良い事だ。それじゃあお風呂に入ろうか。その後で美味しいお菓子を食べさせてやるぞ!」
「やったー!」
私は大喜びする。それからお父さんと一緒にお風呂に入った。温かい湯船の中でお父さんに体を洗ってもらっていると気持ち良くて眠くなってきた。
「ふぇぇ……」
「ん?寝ちゃダメだよ?」
「だってぇ……」
お父さんが私の頭を撫でてくれる。でも、やっぱりダメだ。瞼が重くなってくる。
「仕方が無いな……。それじゃあ、お布団に行ってから続きをしよう」
「うん!」
私は元気良く返事をする。それからお布団に入ると、すぐに眠りについた。
「……あれ?ここはどこ?」
目が覚めると、そこは真っ暗だった。何も見えない。それに体が動かない。どうしてこんな所にいるんだっけ……。思い出そうとした時、突然目の前が明るくなった。眩しくて思わず目を閉じる。そして、恐る恐る開けてみるとそこには大きな鏡があった。
「うぇ……何これ……」
そこに映っていたのは見たことの無い女の子だった。髪は長く綺麗で肌はとても白い。まるで人形のような顔立ちをしているけど、目はパッチリしていて可愛らしい印象を受ける。服装はピンク色のワンピースを着ていて、まるで妖精みたいな感じだ。
「誰……この子……私じゃない……」
そう呟いた瞬間、後ろの方で何かが動く気配を感じた。振り返ろうとすると、誰かに抱きしめられる。
「だぁれだ?」
「ひゃあっ!?」
耳元で囁かれて驚いてしまう。見るとそこには黒い影がいた。それは紛れも無くお父さんだった。だけど、その姿はいつもと違う。服は着ておらず、代わりに黒い布のようなもので覆われていた。しかも、その下は何も身に着けていないようだ。
「パ、パパ!?」
私が叫ぶと、お父さんの顔が近づいてきた。首筋にチクッとした痛みが走った。
「痛いっ……」
反射的に声が出る。すると、お父さんが離れていった。
「ごめんね。ちょっと血が欲しかっただけなんだ」
「ち?どういう事?」「実は僕は吸血鬼なんだよ。だから、アイちゃんの血が欲しいんだ」
「きゅ、きゅうけつき?」
お父さんは何を言っているのだろう。そんなの嘘っぱちに決まっている。でも、お父さんは真剣な表情をしていた。
「アイちゃんは僕の事が嫌いかい?」
「うぅ……」
そんな事は無い。私はお父さんが大好きなのだ。だけど、いきなりそんな事を言われても信じられない。すると、お父さんが悲しそうな顔をした。
「アイちゃんは僕が怖いかい?」
「こ、怖くないよ……」
本当は少し怖いけど、お父さんを傷つけたくなくて強がりを言う。すると、お父さんが嬉しそうに笑った。
「ありがとう。優しい娘を持って幸せ者だな、僕は……」
「パパ……」




