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林田力 短編小説集  作者: 林田力
短編
12/103

喫茶店

私は彼女に連れられて建物の外に出ると、近くの喫茶店に入った。

「それで、どうして君がここにいるんだい?」

私はアイスコーヒーを飲みながら尋ねた。

「どうしてと言われましても……」

「だって、君の家は反対方向じゃないか」

「ええ、そうですね」

「なのになんでこんなところにいるの?」

「それは……ちょっと散歩をしていただけです」

「本当に?」

「本当です」

「ふーん」

「それより、体の方はもういいんですか?」

「ああ、うん。実はちょっと痛むけど、問題ないよ。ところで、あいつらは誰だったのかな?」

「わかりません」

「わからないって、どういうこと?」

「言葉の通りですよ。私は彼らを知らないし、彼らの目的も知りませんでした」

「でも、知り合いなんだよね?」

「はい」

「だったら、少しは心当たりがあるんじゃないのか?」

「ありますけど、教えたくないです」

「えっ?」

「だから、言いたくありません」

「どうしてさ。君が困っているなら、僕はできる限り協力するつもりだよ」

「ありがとうございます。でも、これは私の個人的な問題でして、できれば巻き込みたくないんですよ」

「個人的な問題?」

「はい。それに、もし私が知っていることが正しかったとしたら、きっと先輩は傷つくと思います」

「そうかもしれないけど、このまま何も知らないままだと、もっと後悔することになると思うよ」

「そうかもしれませんね」

「それに、私は君に借りがある。それを返さないうちにまた助けてもらうなんてできないよ」

「別に気にしないでください。あれは私の自己満足みたいなものでしたから」

「それでも、やっぱり何かお礼はしたいんだ」

「そう言われても困ります」

「でも──」

「でも、そうですね。どうしてもというのであれば、一つだけお願いを聞いてもらってもいいでしょうか」

「もちろんだよ」

「では、これからは一人で行動しないように気をつけてください」

「えっ?それだけなのかい?」

「はい」

「本当にそれだけ?」

「はい」

「……」

「どうしましたか? 不満そうですね」

「そんなことはないよ。ただ、君が僕のことを思って言ってくれたことはわかってるんだけど、でも、もう少し別のことでもよかったんじゃないかと思ってね」

「例えばどんなことですか?」

「そうだなあ。じゃあ、今度一緒に映画でも観に行くというのはどうだろう」

「ええっと、すみません。よく意味がわからないのですが」

「つまり、デートしようってことだね」

「デッ!?」

「嫌かい?」

「いえ、そういうわけではありませんが……その、いきなりだったので驚いてしまいました」

「じゃあ、決まりだ」

「え、あの、その、まだ行くとは──」

「大丈夫。私に任せておいて」

「いや、そうではなくて──」

「よし!そうと決まれば、早速準備を始めよう!」

「ちょっ……待ってくだ──」

その後、私は彼女と予定を決めて別れた。


それから数日が経ったある日のこと。私はいつものように大学へ行こうとしていたのだが、家を出る直前になって突然、彼女が訪ねてきた。

「先輩!大変です!」

「おはよう。どうかしたの?」

「それが大変なんです! 実は、昨日家に泥棒が入ったらしくて、それで家の中を調べていたら、地下室で変な装置を見つけたらしいんです」

「装置? 何の装置だい?」

「爆弾です」

「ええっ!」

「それで、先輩はどう思いますか?」

「うーん。正直なところ、爆弾っていうのは嘘だと思うなあ」

「どうしてですか?」

「だって、そんなものがあればすぐにニュースになるはずだよ。でも、私は一度も聞いたことがない。ということは、誰かが悪戯で置いたかと思うんだ」

「な、なるほど。たしかに、それならあり得そうな話ですね。でも、どうしてわざわざこんなところに?」

「たぶん、あの時、あの場所にいた人物に罪を被せようとしたんだろう。そして、あわよくば、そのまま逃げおおせるつもりだったんだと思う」

「でも、どうして先輩があの場にいたとわかったんでしょう?」

「さっきも言ったように、装置は見つからなかったんだろ?」

「はい」

「だったら、普通はそこにいるのは無関係の人間だと考える。そして、無関係の人間が偶然その場にいる確率なんてゼロに等しい」

「それはそうですね」

「だから、きっと彼らはこう考えたんだ。『もしかしたらあいつは、あの事件のことを知っていたんじゃないのか』ってね」「それで、先輩を疑ったんですね」

「うん。でも、残念ながら僕は彼らの期待に応えることはできなかった。だから、きっと次はもっと直接的な手段に出るつもりなんだ。今度はもっと確実に殺すためにね」

「そんな……でも、いったいどうやって?」

「わからない。でも、相手はプロなんだ。普通の方法じゃないことだけは確かだよ」

「……」

「だから、君も十分に気をつけて。もし、何かあったら、必ず連絡して」

「わかりました。でも、私は平気ですよ。だって、私には先輩がついていてくれているから」

「ありがとう。でも、油断しない方がいいよ。いつどこから狙われるかわからないからね」

私は彼女に注意を促した。だが、彼女はそれを冗談として受け取ったのか、笑って受け流していた。


「ところで、先輩は今日講義があるんですよね?」

「ああ、そうだね」

「じゃあ、もう行かないと間に合わないんじゃありませんか?」

「あっ、本当だ。もうこんな時間だ! じゃあ、私はもう行くよ」

「はい。お気をつけてください」

「君こそね」

私はそう言って彼女を見送った後、急いで大学へと向かった。


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