第九話「エピローグ」
「一体、いつまで泣いてんのよ」
「うるせぇよ、お前には分からん!」
地上に出た私達は村のはずれにエリスのお墓を作っていた。
「はぁ、童貞を捨てる事に泣くほどこだわってるとはね」
私はお墓に花を添えながら呆れる。
「バカやろう! そうじゃねぇよ!
俺は彼女を愛していたんだ! 彼女じゃなきゃダメだった!」
心の底から愛していたと訴えるハルト。
はぁ……。
利用されてたくせに何勘違いしてるんだか。
私達はお墓に手を合わせた後、次の町に向かって歩き出す。
「にしても、最後の最後であんたみたいな変態を好きになるなんてね。私には死んでも理解出来ないわ」
「はぁ?お前みたいなちんちくりんのペチャパイなんてこっちから願い下げだわ!」
「誰がちんちくりんのペチャパイよ!!」
「でも、まぁ、あんたにもすこしはまともなとこがあって安心したわ」
「俺は元からまともだぞ?」
私はハルトの少し前を歩く。
そして振り返って、
「……前言撤回!!」
「はあ?」
「あんたを勇者って認めないって言ったこと!」
「意外に、あんたみたいな変態で童貞の勇者が世界を救っちゃうのかもね!」
こいつは変態で童貞で、どうしようもないくらいバカな勇者だけど、少しだけ、ほんの少しだけハルトを召喚してよかった。
一時の気の迷いかもしれないけど、そう思えた。
「……」
「何急に塩らしくなってんの……?
はっ! まさか! 俺のこと好きなのか?!
いやー参ったな!
これじゃ俺の初体験は3ピー……」
私はハルトの脇腹に思いっきり一発蹴りを入れる。
やっぱり私は、こんなやつ勇者だなんて認めない!
それでも私とコイツの冒険はまだまだ続いていく。
そう!私達の冒険はまだ始まったばかりだ。
一方、魔王城。
「エリスがやられた?!」
魔王幹部達が円卓を囲み、緊急会議を開いていた。
「あんな雑魚に、王都攻略なんて、大きな仕事任せるからこうなる!」
「そうですわね。エリスさんはこの中で一番弱いですから」
「ふん、少しは骨のある勇者が出て来たんじゃない」
「俺も戦ってみたいぜ!!」
「私は勇者なんて会いたくない」
個性豊かな魔王軍幹部の美女達は勇者について好き放題言っている。
「皆さん! これは由々しき事態です!」
話をまとめるため、幹部の一人が話を始める。
「今まで魔王軍幹部の一角が落とされた事などなかった。今回の勇者は魔王様の脅威になり得る!
……こんな非常事態に魔王様はどこに行ったのか」
「とにかく、魔王軍全戦力をもって、勇者ハルトを潰します! どんな手を使っても!!」
ご覧頂きありがとうございました。
今回で勘違い勇者の物語は一区切りです。
最後まで、お付き合いくださった皆様、このページを訪れてくれた皆様、読んで頂きありがとうございました。
続きを書くか分かりませんが、また投稿した際には読んで頂けると幸いです。
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