第五話:エリスの秘密
「……はっ!!」
どうやら寝てしまっていたらしい。
うずくまったまま、私はオリビア姉さんが拐われた日の夢を見ていたようだ。
「……そうだ。
そうだよ! 誰かに頼るんじゃない、私が助けないといけないんだ!!」
私は涙を拭い、立ち上がる。
折れそうだった決意を固め、さっさとこの村から旅立とうと歩き出す。
するとどこからか男の呻き声が聞こえてくる。
しかし、あたりを見渡しても男の姿は見当たらない。
「ん? こんなとこに扉が……」
廃棄物が積み上げられていたゴミ捨て場のゴミを動かすと地下へと続く扉が現れた。
扉から地下へ入った私。
「……何ここ、酒場の下あたりだよね。なんか寒気がするんだけど」
地下に続く長い階段を下っていくと、しだいに灯りが見えくる。
灯りの元に近づいていくとそこには扉があった。
どうやら鍵は掛かっていないらしく、私は部屋の中に入ってみる事にする。
部屋の中に入ってみると
蝋燭が焚かれた薄暗い部屋で、部屋の中には獣臭が充満していた。
拘束具がそこら中に吊るされていたり、牢屋が置かれているのが見てとれた。
私はヤバい部屋を見つけてしまったのかもしれない。
そう思い、引き返そうとすると、吊るしてあった拘束具にぶつかり、拘束具が地面に落ちる。
「ヴァァァァァァ!!!」
その瞬間、牢屋の中にいた「何か」が私に襲いかかろうと鉄格子を持ち、牢屋を揺らした。
何が起こったか分からない私は悲鳴を上げて
かがみ、改めて牢屋の方に目をこらしてみる。
すると、そこにいたのは正気を失った様子の男達だった。
呻き声をあげて鉄格子の間から手を伸ばし私を襲おうとしてくる。
「何これ……。昨日見た男と同じような人がいっぱい……。どういうことなの……?」
「ストックよ」
後ろから声が聞こえる。
ーーー?!
振り返ろうとすると私は顔を手で覆われ、気絶させられてしまった。
「……見てはいけないものを見てしまったわね、お嬢さん」
薄れゆく意識の中で、聞いたことのある女性の声が頭の中に響き渡った。
「……うっうう」
私は意識を少しずつ取り戻し、体の節々が痛む感覚を覚えながらも起きあがろうとする。
しかし、体は思うように起き上がらない。
自分の体を確認してみると手足が拘束具で縛られていた。
「な、なにこれ?!」
「目が覚めたのかしら」
声が聞こえた方を見るとそこには
酒場を切り盛りしているはずのエリスが椅子に座っていた。
しかし、酒場にいる時とまるで雰囲気が違う。
両耳は悪魔の耳の様に鋭く尖っていて、
露出の多い光沢感の強い服装に、お尻からは黒色の長い尻尾が生えている。
そう、まるで魔族、『サキュバス』ようなーーー。
「エリスさん! 一体これはどういうことですか!?」
嫌な予感がするが、状況を飲み込めずにいる私はエリスを問いただす。
「あら〜? 見てわからないかしら?」
「あなたは拘束されていて、私は見ての通り精力を吸い尽くす『サキュバス』」
「……ただし、魔王軍幹部のね」
「魔王軍幹部!? ……幹部がなんでこんな村に!」
「もちろん、あなたの国の王都を攻める拠点にするためよ」
そのため、この村でしばらく身をひそめながら力を蓄えていたという魔王軍幹部のエリス。
「まさか、あなたあの時も……!」
私は昨日、エリスが襲われていた時の事を思い出す。
あれは襲われてたんじゃない。
エリスが男を襲っていたんだと今になって理解する。
「そのとおり、あれは私が男を捕食しようとしていた。精力を吸収するためにね。
そこに何も知らないあなた達が現れたってわけ」
「しかしまぁ、よりによってあなたに見つかるとはね。……第2王女ソフィア様」
エリスはベロっと舌舐めずりをする。
「!! なんでそれを!」
「おねぇさんはなんでも知ってるのよ。
あなたが勇者を召喚し、オリビア姫を助けようとしていることもね!」
「くっ!」
「一緒にいたあの男が召喚勇者なんでしょ?」
私達はエリスに全て見透かされていた。
そして全て知っていた彼女にまんまと嵌められたわけだ。
「私にもツキがようやく回ってきたわ!
あの男を捕食さえすれば王都攻略に大きく近づく力を得られる! あなた達の冒険はここで終わりよ!!」
エリスは私を見下し、高笑いする。
「……フッ」
私は思わず吹き出す。
彼女があまりにも的外れな事を言ったから。
「何がおかしいのかしら?」
エリスは私の反応に少し苛立ちを見せて聞き返す。
「私達の冒険が終わる? 何にも知らないくせに……」
「私の冒険はまだ始まってすらいないんだよ!!」
私の怒りが爆発する。
「……ひっ!!」
私の爆発した怒りに怯むエリス。
「あの変態勇者のせいではじまりの村でつまづいちまってんだよこっちは!! 何が冒険だ!! こんなもんだだの小旅行だわ!」
怒りの矛先は主にあの変態勇者だ。
というか、全部あいつのせいだ。
「ま、まぁ落ち着いて……」
エリスは戸惑ったように私をなだめる。
「落ち着いてられるか!!」
私の怒号にまたビクッとするエリス。
「あんなやつどうなろうとかまわない!
私の手であんたを倒して、オリビア姉さんを助けないといけないんだ!!」
「い、言ってくれるじゃないの。今のあなたに私を倒せるかしらね?」
エリスは牢屋に監禁されていた男を三人外に出す。
「この男達は私の催眠によって性欲を限界まで高められている。女が視界に入れば見境なく襲ってしまうほどにね」
男達は理性がなくなっているようで呻き声をあげている。まるで獣のように。
「……み、みさかいなく?」
ゴクっと喉を鳴らす、赤面する私。
その様子をエリスは見逃さなかった。
「……あなた」
「見たところ、そういう経験ないでしょ?」
ニヤッと笑みを浮かべ、見透かしたようにエリスは挑発してくる。
「……は、はぁ?!?!」
ボン!と顔を爆発させる私。
「私にかかれば全てお見通しよ」
フフンと鼻を鳴らすエリス。
「あなたはそうね……。
知識ばかり詰め込んでいるムッツリさんタイプかしら」
「そそ、そんな事ないし!! 私は男の人のアレだって見た事あるしぃ!!」
苦し紛れの私の反論を嘲笑うようにニヤニヤしているエリス。
こいつ調子に乗ってやがる! なんて屈辱だろうか!
「フフ、そのウブな反応かわいいわね」
エリスは牢屋の鍵を開けて、檻の扉を開く。
「さぁメインディッシュを頂く前に、私を楽しませてちょうだい!」
エリスがそう言うと、檻から出てきた正気を失った男達が私に襲いかかってくる。
「ヴァァァァァァ!!」
手足を拘束されている私は、なす術なく男達に蹂躙される。
男達は乱暴に私の服を破き、私の体を貪ろうと唾液を垂らした顔を近づけてくる。
「い、いや! や、やめなさい!」
私がもがくも、力づくで押さえつけてくる男達。
「や、やめてっ!」
いくら叫んでも男達は止まらない。
杖もない私にはどうする事も出来ない力だった。
「あははは! いい表情ね!
あなたは姉を助けることも出来ず、男達に犯されるのよ!!」
エリスは襲われる私を見て嘲笑う。
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
もうダメだと絶望したその時、
ヴァァァァァァァァァ!!と私を襲っていた男達が呻き声を上げて吹っ飛んだ。
「一体何が起こったの!?」
動揺するエリスと私は地下室の入り口に視線を向ける。
私達の目線の先には「あいつ」がいた。
「……なんで」
安心したからなのか、自然と涙が溢れてくる。
「なんで来たの?」
「女の涙が落ちる音がした」
そういい、そこに立っていたのはあの変態勇者、ハルトだった。
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次回第六話:「童貞を卒業するため」