一話:冒険の始まり
はじめまして! ハチのスといいます。
異世界コメディ冒険ストーリーです。
9話完結の読み切り作品になります。
「俺たちは、魔王討伐の目的のためあつまりここまできた……」
村の酒場に集まった私たち勇者パーティは目の前に座る深刻な表情をした勇者、ハルトに呼び出されていた。
勇者パーティといえどメンバーは私こと
魔法使いソフィアただ一人。
私たちの冒険はまだまだ序盤の段階だ。
「ーーしかし、俺たちの冒険はここまでだ
おれは勇者をやめようと思う」
神妙な面持ちで何を言うかと思えば、、この勇者はなにか勘違いをしている。
繰り返そう。
私達の冒険はまだ序盤の段階だ。
というかまだ、はじまりの村なんですけど?!
さて、こうなったいきさつを説明しよう。
ことのはじまりは3日前にさかのぼる。
3日前ーー。
とある大陸に大陸一の勢力を誇ったリア王国があった。
しかし今は、その威光も見る影もない。
街は壊滅的な状況に追い込まれ、国民は困窮していた。
そんなリア王国首都にある王宮の一室に私はいた。
鏡の前で自慢の栗色に輝くロングヘアを整え、シャツの胸元のボタンを留める。
かつて6年ほど前に魔法学院で着ていた制服は、成長した私の体にピッタリとジャストフィットし、当時の私そのままの姿に、懐かしさを感じる。
しかし、当時の制服をそのまま着れるほど大きくならなかった胸元を見て、虚しさを覚える私。
私は急いでローブをはおる。
……うん、我ながらちゃんとした魔法使いのようだ。
……うん、大丈夫。
私は自分にそう言い聞かせて、鏡の前に立てかけた魔法の杖を手に取る。
「……私がやらなきなきゃいけないんだ」
私は、はやる自分の気持ちを落ち着かせるために大きく息をはく。
「ソフィア様!国王様がお呼びです!」
部屋の外から侍女の女性の声が聞こえた。
私はドアの方へ歩き出し扉をひらく。
「はい! 今行きます!」
王の間に呼び出された私は、ため息をつく。
意味のない空間がただ広がるこの場所が昔から退屈で苦手だったからだ。
ぼんやり、あたりを眺めていると、騎士達が整列をはじめ、大きな号令とともに頭を下げる。すると、リア王国の国王が現れ、国王が合図をすると騎士達は体勢を直した。
「……国の非常事態の最中に一国の姫が魔法使いの真似事とは一体どういうつもりだ? 我が娘、ソフィアよ」
「国の非常事態にこんな、ただの魔法使いである私にお時間を与えてくださり、ありがとうございます。陛下」
目の前にいる不機嫌なこの国王は、私にとっては国王様であり、そして父親でもあった。
「……はぁ」
国王は私を見て深くため息をついた。
「お前はこの国の状況が理解できてないようだな」
頭を抱える国王。どうやらずいぶんとやつれている。
「なにが魔法使いだ!
そんなバカな格好を今すぐ辞めなさい!」
「お前はもっと一国の姫としての自覚をだな……」
「何ですか、今さら。今まで姫として認めてくれたことなんてなかったくせに!」
私は何度も聞かされてきた言葉を遮る。
聞きたくなかったから。
「だから、お前は状況が理解できていないと言ってるのだ!
先日の魔王軍の襲撃によってお前の姉、第一王女、オリビアが魔王軍によって連れ去られたのだぞ!
今お前がする事はそんなことじゃないだろう!
お前は次期王女として国民の心を支えねばならんはずだ!」
国王の声が一段と大きくなる。
「だからこそ、私がここにいるのです!
先日の魔王軍の襲撃によって今この国の軍事機能は壊滅的な打撃を食らってしまった。魔王軍討伐隊を組むことすらままならないほどに……」
「……よくわかってるじゃないか」
「でも! 今こうしている間にもオリビア姉さんは……。 このまま手をこまねいている間に合わなくなるかもしれない!」
「そんなことはわかっている!!
しかし我々の使命はこの国の民を守ることだ。今、この国にはあの子を助けに行くだけの余力は残ってないのだ……」
国王はやりきれない様子で拳を強く握った。
整列している騎士達の表情からも疲弊している事が伺える。
「……余力がないなら作ればいいのです」
シーンと静まりかえっていた王の間が私の言葉をキッカケにざわつく。
「私が勇者を召喚します」
私の発した言葉は王の間に響きわたるが、皆あっけにとられたように固まったままだ。
「勇者を召喚するだと?」
ようやく私の言葉が理解出来たのか、国王が口を開く。
「ええ、私の魔法で勇者を異界から召喚するんです。
異界から訪れる勇者は強力なユニークスキルを所持していると古文書に伝えられています。彼らを召喚することが出来れば、必ずこの国を救ってくれるはずです!」
もしかしたらこの状況を打破出来るかもしれないという私の目論見を聞くと、騎士達はお互いに顔を見合わせた。
「……なるほど、自信があるようだな」
そういい、長い髭を触り、考え込む様子の国王。
「お前に希望を託すとしよう。やってみよ!」
王に許可をもらい、王の間に魔法陣を描き始める。
すると、そんな私を見ている騎士達がヒソヒソと話をし始める。
「……本当に勇者を召喚なんて出来るのか?」
「バカいえ! ソフィア様はあの大魔法使い達を続々と排出している国立魔法学院を14歳という齢で首席卒業された方だぞ!」
「なに?! あの大魔法使い達を続々と排出している国立魔法学院だと?!」
そんな会話が聞こえてきて、私はふふんと鼻をならす。
案外わかってるじゃないの。
少しいい気になって、魔法陣を書いている杖がのる。
「よし! できました!」
王の間に大きな魔法陣が出来上がる。
では行きますといい、私は魔法陣に両手をつき、呪文を唱える。
「汝、光の勇者よ! 我の声に応え、今大いなる力をこの地へ顕現せよ!」
魔法陣は光り輝き始め、その光は次第に大きくなり、王の間を包み込んだ。
次第に光は収まっていき、顔を伏せていた国王達はソフィアの方へ目を向ける。
私も目の前の魔法陣の光が弱まっていくのを感じて、閉じていた目をゆっくり開ける。
強い光を受けて、視界が少しぼやけているみたいだ。
視線の先には何かがいることがわかり、ひとまず安堵するが、次第に長い鼻のモンスター、「ガネーシャ」のようなシルエットが見えてくる。
ん? もしかして、召喚が失敗してる?!
私はモンスターを召喚してしまった?!
必死で目を凝らして、目の前のものをうかがう。
すると、ぼやけた視線から現れたのは男性の「それ」だった。
「ん? ここどこだ? 部屋にいたはずなんだけどなぁ」
素っ裸の少年は周りをキョロキョロと見渡し、そして、目の前で固まっている私に話しかけてくる。
「あ、おじょうさん、俺のパンツ知らない?」
「きゃあーー!!」
こともあろうか、第一声が女の子にパンツの在処を伺ってくるこの変態に、私は平手打ちをお見舞いしていた。
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次回第二話:「Hカップ」