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高校三年の秋

休みの日、塾へ向かうために自転車を漕ぐ。

今日はなんだか寒くて気分がのらない。


前方に西野さんのリュックが見えた。

反対の歩道に他校の男子が何人か連れ立って歩いている。高校で練習試合でもあるのだろうか、ジャージ姿だ。


「今朝めっちゃ寒いじゃん」

「女の子はスカートだから俺らより寒いよ」

「めっちゃさむそーう」

「お前あっためてあげろよ」

「だな。俺もあったまりてぇ」


女子は彼女しかいない。

こころなしか、背中が固くいつもよりも早足で歩いているような気がする。


同じ男子ながら下世話だもんなー。


少し自転車を漕ぐ足の力をこめて彼女に追い付いた。


「おはよー」


眉をしかめた仏頂面で振り返られるが、目があうと明らかに表情が和らいだ。

だが声はかけたものの、特に会話のネタがあるわけでもなく。

世間話でもしようと、寒いね、と言いかけて慌てて引っ込める。


「塾行くの?学校の自習室?」

「塾でやろうと思ってた。千葉くんは?」

「俺も塾。模試の結果もらってないんだわ」

「そっかぁ。私は昨日もらって凹んでた」

「ドンマイ。本番じゃなくて良かったじゃん」


西野さんは、そうだね、と肩をすくめる。


「そういえば、千葉くんはどこ目指してるの?」

「あー…、まぁ俺は文系だからさ」


全然答えになっていない答えではぐらかす。

あんまり自分の志望先を誰かに話したくなかった。


西野さんはしばらく俺を見ていたが、察してくれたのか、ふーんと呟いて前を見た。


だけど、これは、気まずい。


自分で声をかけておいて、自分で会話を終了させたが、この空気はなんだか気まずい。


ほっといても良かったかなぁ。


自転車押しながら連れ立って歩いていると通常より遅いのか、他校の男子も先程わいわいしながら自分たちを追い抜いていっていた。


もう行ってもいいかな。


そう考え始めてしまったとき、西野さんが再び口を開いた。


「千葉くん自転車だし、先にいいよ。歩いてると時間もったいないから」


ありがたい。


「そっか。じゃあ先に行くわ」


じゃあ塾でね、と手を降り自転車にまたがった。

結局その日はそのあと西野さんに会わなかった。

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