高校二年の秋冬
高校二年の秋には一大イベントの修学旅行がある。
行き先は中学時代と同じ京都だが、
まぁ、そこには目をつぶろう。
観光も終わり、学年全員が同じホテルで夕飯をとる。
班員と食堂へ移動していると、
前を女子が駆け抜けた。
いつもより表情が固かったが西野さんぽい。
そのあと、少ししてから西野さんと同じクラスの奴がとぼとぼと歩いてきて、宿舎へ入っていった。
告白してフラれたか?
てか、初日に告るって勇気あるのか無鉄砲なのかどっちだよ。
「フラれたかね」
友人もその様子が目に入ったらしく、
自分も思った同じことを口にする。
「あれって理数科の奴らでしょ?」
「初日に告白って」
「修学旅行の告白って断られるんだな」
食堂に入ると、何事もなかったかのように友人と談笑している彼女の姿があった。
食事を美味しそうに頬張っている。
告白のタイミングってあるんじゃね。
他人事だからこそ冷静に見れるけど。
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修学旅行の思い出が薄れてきた頃に、
スナップ写真が貼り出された。
そういえば、カメラマンが一緒に回っていて勝手に色々と撮ってくれていた。
そこから好きな写真を注文できるらしい。
クラスメイトと眺めていると西野さんのアップの写真を見つけてしまった。
複数人でポーズを取っている写真が多いなか、単体で写っている。
写真のなかの彼女は、弾ける笑顔という表現がぴったりだ。
誰かと話しているのか、視線はカメラには向いていない。
この表情を切り取るのってさすがプロっぽいな。
「あ、ぱるるだ~。」
女子がワイワイと近づいてきて、その写真を指差した。
「かわいい~!」
「アップじゃん!」
「ぱるるに教えてあげよ~」
「てか、買わなきゃだね!」
「永久保存版だね」
待て、お前ら、今、ぱるるって言ったのか?
西野さんの写真を指差しているため、
彼女のあだ名なのだろう。
少しだけ首をかしげてしまったが、
なんとなく納得する。
最初は地味な女子だと思っていたが、この表情をする女子のあだ名なら似合うのかもしれない。
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受験生になる直前、高校の近くの塾に通いはじめた。
各自で映像授業を見て進めていくスタイルの塾だったから、部活をやっていて時間が押してしまってもあまり気にせずにいられる。
部活が終わってから塾へ通い始めると西野さんが基本的に同じ席に座っていることに気が付いた。
存在だけ知っていて今まで全く接点のなかった彼女と、同じ塾という共通点ができた。