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高校一年の秋冬

学校の裏山に落ち葉が増えてくると、レクリエーションで焼き芋をするクラスが多くなる。


ホームルームが終わり、部室へ歩いていく途中に中庭を見ると、今日もどこかのクラスが焼き芋をしていた。

知っている顔から判断するに、西野さんがいるクラスだ。

なんとなしに、その集団のなかから彼女の姿を探していて、それを自覚した。


なぜ西野さん………?


疑問に答えが出ないまま、

するっと彼女の顔が目に飛び込んできた。

これまで見たことのある無表情な顔ではなく、

満面の笑顔。

自分を見ているのかと心臓が妙な具合にはねた。


しかし、すぐにその表情は彼女のすぐ前にいるガシに向けたものだと気がつく。

西野さんは半分にした焼き芋をガシに差し出していた。

焼き芋が西野さんからガシへと手渡され、

何事か喋りあい、焼き芋を頬張った。

そのあとまた奴のほうに笑顔を向けた。


…いや、あれは芋が美味いから笑ってんのか?


さつま芋が大好物なのだろうか。

ここからでも目がキラキラしているのがわかる。

その瞳のまま、美味しいね、と口元が動く。

ガシの顔は見えなかったが、きっと笑顔のことだろう。

奴の場合は芋のおかげではなく。


普段だったら、

好きな人と焼き芋半分こできて良かったなー、

とニヤニヤしながら、部活の着替えの時にでもネタにする。

絶対している。

それなのに何故かそんな気分にはならず、結局今日のことを誰かに話すこともなかった。


-----


本格的に寒くなってくると校外を走るマラソン大会が開かれる。

田んぼの脇を延々とひた走る、特におもしろみもないイベントだ。

それに向けての練習と称して、体育の授業でもひたすら走る。

だが、本番ではゴールするとPTAが作ってくれるとん汁とお汁粉を食べることができるので、それが全員の励みになっている。


サッカー部内でも、上位に食い込もうという意気込みの奴らが何人かいるが、自分にはそこまでの熱意はない。

スタートも後方に並び、ペース配分とかも特に考えずにただ走る。

誰かを追い抜いたり、追い抜かれたりしながら10km走り終わり、着替えるために部室へ向かった。


さっぱりしてから、とん汁を貰おうとゴール近くに行くと西野さんが列に並んでいた。

いつもは耳の下で2つに結んでいる髪の毛を1つにまとめている。


髪形で雰囲気変わるもんだよなぁ。


お汁粉を受け取った西野さんは、焼き芋を頬張ったときと同じ笑顔になった。

いつもの眠そうな目をキラキラさせて、お汁粉を覗き込み、PTAの人にお礼を言って、友達の輪に戻っていった。


西野さんて、食べるの好きなんだろうか。


表情であんなに雰囲気が変わるものだろうか。

髪型とかのレベルではなく、いつもの地味な雰囲気が一変する。

ふわふわした花が飛んでいるような感じだった。

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