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高校一年の夏

暑くなってきた。


夏服になり、多くの同級生が白いワイシャツで涼やかになるなか、今朝も見かけた西野さんは指定の黒いベストを着ていた。

指定ではあるが強制ではないため、クラスメイトの女子は誰も着ていない。


そうだよな。


暑い夏のなか黒いベストに黒いスカートは野暮ったい。

やっぱり地味子ちゃんで、真面目ちゃんかね。


野暮ったさとかよりも指定だから着ているというかんじなのだろう。

見かけ気にする時間あったら勉強したら?っていうタイプかな。


-----


体育のあと、斜め前のクラスメイトの靴下を見るとうさぎの横顔が後ろにあった。


おいおい、制汗剤振りまいてせっかく汗のにおい消してるくせに、女子としてそれじゃツメ甘いぜ。


姉がいるからか、女子の服装に評価をつけてしまうクセがある。

ひとりため息をつき、前に目をやるが、前の席の女子のワイシャツが透けて、下着の肩紐が見えている。


健康優良男子にこりゃないわ。

むしろ狙ってるのか。


再びため息をつき、好きな授業でもないのに努めて黒板に目を向けた。



次の教室移動の時、体育の着替えが終わったであろう他のクラスのサッカー部の奴らにでくわした。

横をそのクラスの女子が通っていく。

西野さんもいる。

彼女は体育が終わったあとだというのにベストも律儀に着ている。

それなのに半袖のワイシャツは他の女子と同じようにまくり、スカートの丈もいつもより心なしか短い。


いや、暑いならベスト脱げよ。


そこに生徒指導が通りがかり、スカートの長さを注意しはじめた。

一通りの女子生徒が指導を受けるなか、同じくらいの長さの彼女のスカートを生活指導は素通りした。


まじかよ。

ベストってそういう効果があるのか。

真面目にみえて、結構要領いいのか?


そんなことを頭の片隅で考えながら彼女の短いままのスカートの丈を見ると、靴下のウサギの模様はちゃんと横を向いているのも目に入った。



そのうち何故だかベスト女子が段々増えてきたような気がした。


白いワイシャツのほうが見た目に涼やかなのに。

健康優良児的にはワイシャツのほうがいいのに。


いつの間にかベスト女子になったクラスメイトに暑くないのか聞いてみる。

「だってベスト着たほうがスカートまくっててもわからないし!」

「ワイシャツも透けないしねー」

「そうそう、清楚きどれる!」

「あ、あとさー、スカートのポケットに携帯入れるとずれるけど、ベストならそんなことないよね」

「わりと便利だって気付いちゃったよね!」


-----


暑いなぁ…


夏の陽射しが降り注ぎ始めた。

自転車を漕ぐと朝から汗が吹き出してくる。

今日は電車組とかぶったわけではなかったが、前方に白い傘をさして、ぽてぽてと歩いている学生がいた。

制服と同じ黒色のリュックに、黄色いクマのキーホルダーが付いている。

西野さんのリュックと同じだったため追い抜きざまに横顔を見ると、思った通りだった。

日傘のお陰なのか、この暑いなか顔をしかめることなく、いつもの無表情だ。


日傘さすとかババァかよ。


その時はそう思ったが、なんだかそのうち日傘を使っている女子が増えてきた。

おかげで雨でもないのに道に傘が広がって自転車で追い抜きづらい。

時々見かける西野さんは相変わらずぽてぽてと通学している。

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