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高校一年の春

西野さんは地味な女子高生だった。


普通に過ごしていたら、クラスの違う地味な同級生なんか視界にすら入らないのに、一年生の春から彼女の存在を認識していたのは、野次馬ゆえであった。

仮入部の時点で即いじられキャラ認識された、ガシこと東野が、彼女のことを可愛いと言ったのである。


苗字に親近感わくね、と言われたらしい。

確かに西野と東野はなんとなく似ているけど。


当然、ガシをいじるために部の友人たちと連れ立って、どんな子なのかを見に行く。


教室には入らず、廊下側の窓から覗く。

「ガシ、どれ?」

「窓際の机で本読んでる子」

昼休みだというのに自分の席に座り本を読んでいる女子がいる。

「昼休みに本読んでんのかよ」

「本読んでるから顔が見えねぇぞ」

「髪はきれいそう」

「清楚系…?」

「いや、2つに結んでるから真面目系?」

静かにわいわい騒いでいると、やはり目線を感じたのか顔をあげた。

彼女は眠そうな顔でぼんやりこちらを眺めたあと、また本へと視線を下げた。

それだけだった。

別に可愛くないわけではないが、特別可愛いわけでもない。

お前あんなブス好きなのかよ!とか、

お前には高嶺の花だよ!とか言えない普通の女子だ。

そして、地味だな、というのが第一印象だった。


「笑うとかわいいんだよ」

ガシはそう言ったが、一人で本を読んでいる姿からは笑う気配が微塵もない。

「無表情だったじゃん」

「あの子笑うの?」

「お笑いの本でも読んでんじゃねーの」

「いや、それはむしろこわいだろ」

「一番最初に話してかけてくれた時に笑ってたよ」

「その後は?」

「最近は話してないけど…」

「それだけかよ」

一目惚れというのは、もっとみるからにオシャレで可愛い女子にするもんだろ、と口には出さなかった。

「ガシの恋心は結局、苗字の親近感だけだよな」


-----


近所の高校に進学したため、中学の頃から代わりばえのない通学路を自転車で通学している。その途中からは、電車組と同じ道になる。


今日は電車の時間とかぶったのか、道に学生が多くなり、自転車を漕ぐスピードが落ちてしまった。

そのなかに、西野さんを見かけた。

俺と同じクラスの女子と歩いているから見つけられたのだろう。

どんな接点があって一緒にいるのかわからないが、ちゃんと友達いたんだな、と何故か安心する。


お先に失礼~


心の中で呟いて、二人を抜かすために自転車を漕ぐ足に力を込めようとしたとき、クラスメイトから自分の名前が飛び出した。


「千葉君と昨日英語で同じグループになっちゃってさ…。なんか睨まれてすごく怖かった…。今日も同じグループで作業続けるんだよ。どうしよう…。」


これがカクテルパーティ効果というやつなのか。


前方にいる奴等の会話なんかいつもは聞こえないのに、一番始めに自分の名前が出てきたからか、聞きたくもない内容が耳に入ってきた。

小さい頃から目付きが悪いとよく言われてきた。

自分には睨んでるつもりなんか全くないのに。


英語は好きな科目でもないし、予習なんか適当だし、こんなことを思われているなら今日の授業は気が重い。

抜かしづらくなった状況に、どうしようかと思案していると彼女が口を開いた。


「きっと大丈夫だよー。ふみちゃんいい子だから睨む要素ないって!私たれ目だから、眠いの?ってよく聞かれるけど全然眠くないもん。そんなかんじでその千葉君て人も生まれつき目付き悪いだけだって!」


こいつ、目付き悪いってはっきり言うなぁ。


ひどい言われような気もするが、彼女が発した言葉に少し気持ちが救われる。

確かに西野さん見たとき、眠そうだと思ったな。


なんで喋ったこともないやつが俺のフォローをしてるんだよ。


自分の名前が出た時には抜かしにくかったが、彼女がフォローしてくれたことで再度足に力を込めた。


聞こえなかったことにして過ごすか。

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