乙女ゲームは始めません。
初めての投稿です。
何となくぼんやり書いてみました。
誤字脱字見逃して下さい。
ブクマ評価ありがとうございます。
意識が浮上する。
制服に身をつつみ、正門に立つ私。
さっきまでは、ドレスに身をつつんで卒業パーティーに出席していたはずなのだが。
もしかして、リセットされてる――――!?
私の名前はマリア。
名前からわかるように、ヒロインだ。
はい、乙ゲーの。
しかも異世界転生ときた。
実年齢40歳。
この国で行われる魔力測定の真っ只中で、いきなり覚醒。
測定する水晶の前で呆然とする。
周りは弾けんばかりの光に興奮覚めやまらない。
神官様が何かを言っている。
いやいや、ちょっと待て。
それどころではない。
まぁ、向こうもそれどころではないのだろう。
あっというまに、別室に連れて行かれた。
神官様からつげられる。
○ 魔力が高いこと
○ この国で保護すべき光属性を持っていること
○ 魔力の安定のため、王立学園で学ぶこと
半ば放心状態で聞きつつ辺りを見回す。
ふと鏡を見た。
そこには、金髪美少女が写り混む。
右手で髪を撫でる、鏡の中の少女も同じ動作をする。
えっ、私!?
というか、この顔見覚えある。
娘がハマっていたゲームのヒロイン「マリア」だ。
「では、参りましょうか?」
なんと今日は馬車で送ってくれるらしい。
両親に説明するため神官様も一緒だ。
平民なのになぜ?と思っていると、今日の魔力測定の結果を鑑みてのことらしい。
光属性は稀有で、魔力も膨大。
有らぬ争いから避けるためだ。
両親健在であるのに、貴族から養子にと名を挙げている方々いるらしい。
平民であるが故に、貴族からの申し出は無下にできない。
そういったことも合わせて説明してくれるらしい。
まぁ、両親に任せよう。
それよりも自分のことだ。
改めてみるも、マリアだ。マリアが今まで生きてきた記憶もある。
両親にも愛されて育っている。
こんな可愛い子に、何故に私?
いまさら嘆いても仕方ない。
この子の人生のこれからは私が生きる。
つーか、乙ゲーか。
詳しくは覚えてないんだよね~。だって40歳だよ。
娘がしてるの見てただけだし。
攻略対象が、皇太子殿下、宰相の息子、魔術団団長の息子、騎士団団長の息子、侯爵家令息だったかな?
名前?そんな長い名前覚えられないって。
てか、攻略しなきゃ駄目?
イケメンは観賞するものでしょ?
そもそも全員婚約者がいたはず。確かにマリアは、可愛い。だとしても、婚約者を蔑ろにして平民といちゃラブって···。略奪愛反対!!
乙ゲー本末転倒だけど、攻略しません!!
出逢いイベントをスルーして、清く正しく美しく学園生活を送ろうと固く決意した。
「マリア」
お父さんに呼ばれた。どうやら神官様は帰ったらしい。
両親にも何やら決意めいたものを感じる。
「マリア、光の力があると聞いて驚いた。しかもこれから貴族と共に学ばなければいけない。今までとは180度違う世界だ」
「理不尽な思いもすると思うわ。でもあなたの未来は、あなたが作るの」
「私達は、おまえを送り出すことと、帰る場所を守ることしかできない」
「お父さん、お母さん」
まずい、泣ける。
「大丈夫、私は大丈夫。ただで学べてむしろラッキーでしょ?」
『マリア』
2人に抱き締められる。
「光の力なんてよくわかんないけど、お父さんとお母さんの愛の証、光って当然!」
「まぁ、マリアったら。でもそうね、あなたは私達の光だもの」
そうしてみんなで笑って、泣いた。
さぁ、舞台の幕があがる。
とりあえず覚えているフラグは「ハンカチ」だ。
入学式の日に、落としたハンカチを誰が拾うかで相手が決まる。
そんな出逢いで大丈夫なのかと思うよね。
だから入学式の今日、ハンカチは持ってきていない。
しかしゲームの強制力なのか、真新しい制服姿に涙する両親とハグをして別れたのに、途中でお母さんが「ハンカチ忘れてるわよ~」と、追いかけてきたのには驚いた。もちろん「えっ、あるよ」とスカートのポケットの裏地を見せて誤魔化した。この裏技、この世界でもアリなんだと思った。
あとは、無事に今日が終わるのを待つだけ。
入学の挨拶で新入生代表で皇太子殿下が壇上にあがる。会場が一気にざわめく。無駄に関わらないように顔は覚えておかなければと、ガン見する。金髪サラサラのイケメンやないか~い。でも、甘めの顔はタイプじゃないな。本当にザ·王子!
続きまして在校生挨拶に、侯爵令息登場。こっちはグレー系の髪を後ろに撫で付けてる。目鼻立ちがスッキリしているが、なんか右目下の泣きボクロが艶っぽい。会場がため息に包まれた。わかるわ~、色っぽい。この人が卒業するのがエンディングだ。
入学式が無事に終わり、校内を散策する。
そう、後の3人を見るためだ。どうせ全員集合しているだろう。人集りを確認する。あそこなら2階から見えるだろう。早速2階に上がり気配を消して下を覗き見る。
金髪の横にグレーが見えた。ビンゴだ。となると、銀髪メガネが宰相の息子、あーっぽいな、インテリメガネ。その横の赤毛の細マッチョが騎士団団長の息子だろう。体型は好みだな、うん。後の黒髪が魔術団長の息子か。ワンコ系の喰えない奴っぽいな。
それにしてもイケメンの見本市ですな。
王子、お色気、インテリ、細マッチョ、ワンコ系。娘なら食いつくだろうな、間違いなく。しかし中身40歳の私には息子みたいなもの、興味なし。
ともかく関わらないように、静かにすごそう。
そうしてひっそりと姿を消した。
出会いイベントを回避した私は、順調に学園生活をスタートさせた。
幸い、同い年の皆様とは別なクラスで接点はない。
あとは、フラグの立ちそうな場所に踏み入れなければいいのだ。
授業は楽しかった。勉強をするのは好きだし、新たな知識がふえるのは喜ばしいことだった。
だが、やはり平民差別はある。
一匹狼上等で過ごしているが、成績が良いと「光の魔力があるから特別視されてるんではなくて」とか、「その顔で先生を誘惑しているのでしょう」など。いちゃもんもいいところだ。また、光の魔力の授業が特別室で行われるのも気にくわないのだろう。
そもそも光属性の魔力とは闇を祓う魔力らしい。
てっきり癒しの力かと思っていたが、それは聖属性になると。
聖属性保持者は神殿に集められる。所謂聖女様だろう。
では何故光の力が国の保護化に置かれるかというと、相反する闇属性に対抗できる唯一だからだ。闇属性は測定できない。光と対峙して初めてわかる。しかも生まれ持った魔力ではなく、妬み嫉み哀しみ怒りと負の感情が溜まり淀んで魔力が変質して闇へと堕ちる。闇へと堕ちれば分かるだろう、そこに何かしらの災厄がおきる。それを察知するため光の魔力を広範に展開し、監視する役目を担うのだ。また、闇に堕ちたものを浄化するのだ。
光の魔力の授業は所謂国の暗部的なものを学ぶため、特別室で行われる。なんかヤバくね?と思っていたけど、魔方陣を学んだりするのは非常に楽しかった。あと、光の魔力の持ち主は10年に1人はいるらしい。
今回の私の先生も10年前に現れた光の魔力の持ち主だ。
伯爵家婦人であるが、今回の先生役を2つ返事で受けてくれたらしい。
「先生に憧れていたのよ」と貴族らしからぬ奔放な方だ。
光の術色はもちろん、貴族の理などいろいろ教えてくれる。
最初こそ平民でしょ?感を醸し出していたが、真面目に課題に取り込み様々な視点から質問を繰り出す私に好意を向けてくれるようになった。今では「お姉様と呼びなさい」と迫ってくる。
ある日、国の保護下ってどんな気分か聞いてみたら、先生も同じ質問をしたと笑って答えてくれた。
「このブレスレットを見てくれる?」
何やら文字のようなものが彫刻されているシルバーのブレスレットだ。何か綺麗な石もついている。
「この文字は古代文字?」
「正解。これは古代文字で魔方陣の術式が彫られているの。これが光の魔術師の証明。王家の魔術師団の水晶に連動しているの」
「王家のですか?」
「そう、これが保護下の証明。このブレスレットから異常があると王家に連絡がはいるの」
常時監視体制じゃん。でもまぁそうだよね。
「そう難しく考えないで、普段は何も起こらないから。このブレスレットには今学んでいること全てが凝縮されてるんだから」
どうやら光の術式を全て理解できたら、このブレスレットを王家から授与されるらしい。その時自分の魔力を込めた魔石をブレスレットに取り付けるのだ。あとはブレスレットを身につけるだけで、常時光の魔方陣が展開される。また、闇を祓う術式も組み込まれている。
なんたるチート。
「正しく理解し、己を律し使用するただそれだけのこと」
先生のこの言葉は、胸に響いた。
学園生活も半年が過ぎた。
僅かだが貴族の友達もできた。
しかしそれが問題だ。なんと攻略対象の婚約者様達なのだ。
出会いは1ヶ月前。1人の少女が私を訪ねてきた。
「あなたがマリアさんね。リア義姉様からあなたの話を聞いたの」
「先生から?」
「そう。あの子の発想力には感嘆するって。だから少しお話しよろしいでしょうか?」
と、教室から連れ出された。
向かった先は屋内サロン。中には4人。こうして5人の美少女に取り囲まれた。
「どうぞお座りになって」
縦ロールの美少女に勧められる。とりあえず座るか。
「急にお呼び立てしてごめんなさいね、マリアさん」
「いえ、大丈夫です。しかし発言よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「失礼ながら私は、貴女方を存じ上げません」
一同沈黙。
それもそうだ。私は毎日課題に明け暮れ、暇さえあれば特別室にこもり魔術の本を読み漁っていたからだ。だから周りに疎い。
「この中の1人も?」
「はい。私は平民でありながら学園に通わせて頂いております。これ程の機会があるのです。時間は有限、勉学に励んでおりますが何か?」
「お友達は?」
「特にいないですし、むしろ平民を蔑むような人達とは関わりたくないと思っておりまして、唯一の存在がリア先生ですかね?」
皆さん呆けてらっしゃる。どうせボッチですよ。
「リア義姉様から聞いた通りだわ」
そういえば義理の妹さんが可愛い過ぎると言っていたな。
「と言いますと?」
「自分をしっかりと持ち、まっすぐな瞳で語ると。では改めまして、グレンバール伯爵家長女、ソフィアと申します」
栗色のふわふわとした髪を軽く結い、同じく栗色のくりっとした瞳の少女に挨拶される。守ってあげたいと思うぐらい可愛い。
「で、こちらから、ラモンド公爵家リリアーナ様、フェリスイス伯爵家ニコラ様、メルヴィル子爵家シェリア様、マルゴー子爵家エリカ様でございますわ」
え~っと、まてまて皆様攻略対象の婚約者様ではないか。貴女方の婚約者とは関わってないですよ。うっかりニアミスもしてないし。なに?新たなイジメ発生ですか?こんなサロンでフルボッコされることはしてないですよー!
「はじめまして、ご存知かと思いますがマリアと申します」
かろうじて返答する。この世代には皇太子殿下が在籍されるからと、リア先生に皆様のお名前だけは教えてもらっていた。あとは各家名から貴族名鑑でいろいろ調べた、各家の役割とか。でも顔はわかんなかったんだよね。ソフィア様は侯爵令息の婚約者で、リア先生が勉学頑張っていると言ってたもんな。で、私に何の用?
「あらまあ固まってらっしゃる、気楽にしてちょうだい」
「何故?」
声にでちゃった~。背中に汗が流れる。
「あなたのような方に意見を聞きたくって···」
このご令嬢逹は、これからの時代身分にとらわれず能力があれば活用すべきだと、考えているらしい。まずその一歩が学園だ。
学園には特待生として平民は何名かいる。しかし、貴族からの誹謗中傷に堪えきれず退学をする者が多いのだ。その悪循環を解消したい。志しは立派だが、貴族と平民は考え方からして違う。いくら学園内では身分差はないとしても、どっかのバカヒロインのように上目遣いで媚びを売り、上位貴族に取り入るのはまずいない。(マリアちゃんじゃないよ)
「そうですね、そもそもの価値観が違いますからね。確かに私は勉強が好きで成績も上位です。もし私が貴族であれば王宮官士にでもなれるでしょう。しかし私は平民ですから試験を受けるというスタート地点にも立てない、これはお分かりですか?」
「やっぱりこの子面白いわ」
その日のうちに名前を呼ぶことを許可され、週に1度はサロンに呼ばれいろいろと意見を交わした。また、平民だけでなく下位貴族の意見も聞くべきだと私が提案すると、それぞれの家の寄り子の者を呼び出し意見も聞いた。彼女逹の行動は婚約者逹の知るところになり、男性側でも同じような会合が進んでるらしい。
ところで皆さんの恋愛事情は?と、実は···私のアドバイスのおかげで皆さんラブラブらしい。攻略のツボ知っているからね。
実際紹介された時は固まった。イケメンオーラ全開だもの。眼福!
まもなく無事に1年が終わろうとする。
ぶっちゃけ勉学に励んで、女子会開いて終わりって感じだ。
来年からは生徒会に所属する。この半年間の経験を認められてだ。平民初の役員と担ぎ上げられているが、皆がいるから大丈夫だろう。
今日は卒業パーティー。私もドレスを着ている。リリアーナ様逹が用意してくれたのだ。
恋愛要素なしの、乙女ゲームのエンディングだ。
皇太子殿下の挨拶で、本当なら断罪イベが始まる。しかし全員ラブラブだからその心配はない。
壇上の様子を見ながら、来年こそは恋愛脳になろうと決めた。恋がしたいな~。
[プツン]
何かのスイッチの音がした。
意識が浮上する。
制服に身をつつみ、正門に立つ私。
さっきまでは、ドレスに身をつつんで卒業パーティーに出席していたはずなのだが。
もしかして、リセットされてる―――!?
誰かを攻略しないとループするの?
いや、全員友達の婚約者だもの、ムリムリムリ。
こうなれば隠れキャラを探し出す。
幸い恋愛スイッチはいったし、2回目の人生頑張ります!