第87話 俺の友達
さてと、家に王子をおつれした。
車庫にトラックを停めに行く俺だが、みんな待ってるだろうし急ごう。
カズヤ達の自宅、車庫――
「さてと、駐車完了!」
バックモニターを確認しながら駐車位置に愛車のトラックを停めた。
「急いで皆の元へ戻ろう、王子に失礼があってはならぬ!」
礼儀作法にうるさい男と評判の俺は、走って自宅玄関に戻る事にした。
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「って、誰も居ないし!」
待ってろと言ったのに玄関に人っ子一人いなかった。
皆して俺の手を煩わせまいと気を使ってくれたのだろう。
決して、俺の言葉をいい加減に聞いていたとは思いたくない。
「……どうせ応接間だろう?」
屋敷に入り皆が向かったであろう応接室へと向かった。
◇◇◇
応接室の前――
「全く薄情な奴等だぜ」
すれ違ったメイドに聞いたら「皆さん応接室に向かわれましたよ」って言ってたから、この中に嫁や王子達がいるのは確定。
だけど応接室に向かう途中に、嫁の一人くらい俺を待っていてくれてもいいじゃんか。
「もう! 皆、薄情だぜ!」
勢いよくドアを開けた俺。
「あっ! カズヤではないか!」
王子が暢気に手を挙げて俺に言った。
なんだ?
偉い楽しそうじゃねぇか?
「ホホホ、私、オークのイメージが覆りましたわ」
セリアまで楽しそうに……
部屋の中を見ると、執事長のテイカーが壁際に立ち、ラージャを除く嫁達、オーガの弥助とアキナ、オークの金髪豚野郎、ゴブリンのゴーブ、フジノ工務店のマルコが並んで席に着いていた。
そして、その向かいに王子とセリアが座っているのが見えた。
「どうした? 王子達、凄く上機嫌じゃないか?」
ライネの隣に着席した俺は、小声で聞いた。
「金髪豚野郎だよ」
ライネが白けた顔で金髪豚野郎を指差している。
どう言うこと?
覗くと、金髪豚野郎が王子にペラペラと何か喋っているのが見えた。
王子とセリアは、嬉しそうな表情をしてる。
「いやぁー、流石は、ルーカス殿下!
魔物である下賤な我々に対しても、恐れる事のないその豪胆さ、この金髪豚野郎、感服いたしました。
お美しいセリア妃殿下のその慈愛に満ちた眼差しは、この街を明るく照らしてくださるようだ!
ぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺら……」
凄いおべんちゃら並べてやがる。
流石に、あんまり言いすぎると逆に馬鹿にしてるみたいだぞ?
心配になってきた。
やめさせたほうが良いよな?
「まぁ、正直な方ね。
でも、私は『まだ』ルーカス様と一緒にはなっていないのよ」
セリアがとても嬉しそうに金髪豚野郎に指摘している。
うん。
否定するのは、そこだけなんだと思った。
「ハハハ、金髪豚野郎殿は気が早いな!
セリアを妻にするのは、これからだぞ! ハハハ。
しかし、これほどまでに的確かつ忖度やおべんちゃら無しで人を見抜くとは驚いたものよ!」
王子が嬉しそうだ。
明らかにおべんちゃらだろうと思うが…… 本人が気分よくいるんだ、指摘する事もなかろう。
「ね。 ずっと、あの調子なんだよ。
王子が気分よくいるのは良いんだけど……」
ライネも明らかなおべんちゃらに嫌気がさしているようだが、このオールストレーム領にとっては王子の機嫌を取る事は決して悪くないので、何とも言い難い表情をていた。
ライネの兄であるミカエルも同様。
ペトリとボリスは白けているみたい。
弥助は……
「うわぁぁぁ」
腕組して目を閉じているが、凄く不服そう!
額に青筋が出てる。
こらえてくれよ。
この地の独立とか余計な事は言わないでくれよ。
兎に角、懸念していた王子が魔物を受け入れてくれるかって話は大丈夫そうだ。
「王子、和やかにお話されてたようですが、どうです? 魔物と言っても悪い奴等ばかりじゃないって解ってもらえましたか?」
「勿論さ、カズヤ! 生きとし生ける者、種族が違えど、同じ命じゃないか!」
流石、俺の見込んだ王子だけはあるな。
よし! 王子がそう言ってくれるのなら……
「ちょっと、みんないいか?
俺は、このルーカス王子に協力する事に決めた」
立ち上がって俺は、弥助達、街の有力者達に言った。
相談無しで決めたから、皆動揺している。
「俺は、各国の大店の商会にも秘密にしている新市街地に、俺は王子を招待した。
それは何故か?
ルーカス王子に資金の融資や、物品の優先販売って感じで協力するに値する者かを見定めて欲しかったからだ!
どうだ、王子?!」
「カズヤ、正直、驚いた。
想像以上の街だよ…… しかし、俺に協力してくれても、お前達にメリットがあるのか?
なんでそんなに、俺の為に動こうとしてくれているんだ?」
「前にも言ったろ、王子、お前が好きだからだ。
だが、それだけじゃない。 俺達もそれ相応のメリットって奴があるからな。
協力の見返りに、王子にオールストレーム領の後ろ盾になってもらいたい。
王子が後ろ盾になってくれりゃ、王国がオールストレーム領に探りを入れる事も、他の領地の変なのが探りに来ることも減るだろ?
オールストレーム領に干渉するものが居なくなれば、必然的に、このフジノ街の秘密も守られるって訳。
弥助、王子が了解してくれたら、俺達の街は、王国の干渉も受けずに自由でいられるんだ。
それは、お前の望む独立国みたいなもんじゃないか?」
俺の言葉に弥助が何か考えているようだった。
突然過ぎて混乱しているのだろうけど、理解してもらいたい。
魔物達の中で、お前達が一番最初に仲間になってくれた。
だから俺は、弥助、お前達と共にこの街で仲良く平穏な毎日を送りたいんだ……
「カズヤさん、そんな事を考えていたんですね! 僕はてっきり……」
「ライネ? てっきり?」
「い、いや、なんにもないよ! アハハハ」
ライネが笑って誤魔化したが、どうせ、てっきり何も考えていなかったとか思ったんだろ?
「おい、お前。 その女は、てっきり何も考えていなかったと言おうとしたんじゃないのか?」
セリアが教えてくれたが、あえて言う必要など全くないだろう。
「そんな事は、どうでもいいよ。
で、どうよ、王子いや、ルーカス?」
「……カズヤ」
王子が俺を見て、目を伏せた。
どうなんだ?
俺達は、固唾を呑んで王子に注目する。
「ルーカス様……」
心配そうにセリアが王子をみている。
「オスモ・オールストレーム男爵家を直属の部下とする」
目を開いた王子がハッキリとした口調で言った。
いや、言ったよね、
「それって?! つまり」
王子が言った事って、了解って事でいいんだな!
俺の顔が明るくなる!
「俺や国にとって、この地は最重要地だ。
他の誰かの庇護下や干渉を受けさせる訳にはいかん!
オールストレーム領と俺が強い繫がりがあると示す事により、他の奴等の付け入る隙を与えないのが最善と思っただけだ」
「よっしゃ、解ってるね、王子!」
決断が早いな。
流石、俺の見込んだ奴だ!
「しかし…… 俺の部下が男爵家では流石に都合が悪いな。
伯爵か侯爵にでも取り立てやるか……」
ブツブツと王子が考えながら呟いてるのが聞こえたが、お父様が出世できるって事ですか?
「それから、カズヤ。
この地との連絡役として王都に誰かを寄こして欲しい」
ああ、確かに必要だよな。
人質的な意味合いもあるんだろうけど、こっちだって王都の情報が入るメリットがあるな。
「よし、領主のオスモか息子のエルモで良いだろ?」
「ああ、構わん」
「決まり!」
本人に確認取ってないけど構わんだろう。
俺じゃないし。
「そんな簡単にポンポンと……」
「どうしたライネ、何か問題でも?」
「いや、突然伯爵家に出世したり、王子の部下って!」
「良かったじゃん」
変なライネだな。
「父さんか兄さんが王宮勤めになるんだろ?
……そんなのちゃんと務まるのかなぁ?」
今度は、ミカエルか。
兄弟揃って心配性だなぁ。
「大丈夫だよ、俺じゃないから」
「それもそうだけど、心配だなぁ」
冗談で言ったのに、ライネに否定されなかった。
それは、それで悲しいものがあるな。
「なんだ、俺の決定に不服か?」
王子がライネに向かって言った。
「め、滅相もございません!」
ライネが頭を下げた。
「お、弟が失礼いたしました」
ミカエルも頭を下げている。
「ルーカス、その辺で許してあげてね。
ホントに家族が心配でライネもミカエルも言っただけだから」
俺は、別に王子の部下でも何でもないので、呼び捨てにしてみた。
「うむ、わかってる」
ライネとミカエルの件、そして俺の呼び捨ても気にしてないみたい。
コイツとは友達になれそうだ。
しかし……
「セリア、俺を睨むんじゃないよ」
「ルーカス様に対する尊敬の念が感じられない」
だって。
なんだよ、堅苦しいな。
「だって、俺とルーカスは友達だからな。
勿論、お前もだぞ、セリア。
だから、俺はお前達に協力すんだからな。
色々ゴチャゴチャ言ったけど、とどのつまり友達だから助け合いたいってだけだ」
ん?
俺がそう言ったら、ルーカスもセリアも驚いた顔をしていた。
もしかして、俺が打算でお前等の相手をしていたとでも思っていたのか?
「あ、ああ。 俺達は友人だ」
そう言ったルーカスの表情が、照れくさそうで少し嬉しそうだったが嬉しかった。
「いやーー、万事順調! 円満解決って事で、今晩は、ぱぁーーっと宴会でもすっか!」
「いいね、カズヤ様! 賛成!」
ペトリが嬉しそうに賛同してくれた。
宴会の事を考えてたら、嬉しくなっちゃう!
「ルーカス殿下、カズ君は王宮の事とか出世に何の関心も興味もない人だから安心して友達になってください。
それが、きっと、王子にとって良き選択だと、儂は思いますからね」
「ボリス、解ってる。
俺に対してこんな態度の奴なんていないからな、貴重だ。
単なるバカかも知れんが、俺の友達だからな」
「ん? なに二人で何を話してんだ?」
俺が宴会の件でで盛り上がってたら、ルーカスとボリスがコソコソ話してた。
「ううん、カズ君を宜しくお願いしますっていってたんだよ」
「あのなボリス。 俺もルーカスも大人なんだから、心配いらないよ!
なぁ、ルーカス?」
全くもって心配性だぜ!
「ああ、そうだな」
ルーカスが笑いながら答えてくれた。
「さて、くだらない話はそこまでにしていただきましょうか!」
和やか雰囲気になっていた応接間に大きな声が響き渡った。
この声って……
せっかく丸っと上手くまとまったのに、何だよ! 誰だよ! ふざけんなよ!
って、お前……
って事で、次回も、乞うご期待!




