表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.2 地獄での日々
2/105

第2話 やっぱりですか、そうですか。

いや、まさか日本で銃で撃たれてしまうとは……

俺は運が良いのか悪いのか、まぁ、悪いんだろうけど。

どうせ当たるなら、宝くじにでも当たれば良かったのにな。

しかぁーーし、どうやら俺は、異世界へと転移したようだ。

赤ん坊じゃないしな、転移の方だコレは。

俺の夢がかなったぜ!

待ってろよ、女騎士にエルフにケモ耳!

 銀行内へ金をおろしに行った俺は、銀行強盗が撃った流れ弾に当たり絶命した。

 ……ハズだった。

 だが、俺は生きていて真っ暗な空間にいて、そして、光に包まれた。

 ついていない人生だったと常日頃から悲観しちゃってたけど、辛い事など全ては、今日のこの日の為にあったのだ。

 これからは、チートでウヒョーでキャッキャウフフだぜ!

 なぜなら俺は、異世界転移という奴を体験したのだ!


「ここが、そうなのか?」

 俺の目の前には、大きな川がある。

 どうやら、異世界に飛ばされた俺が今いるのは河原のようだ。

 どっかの城で、勇者召喚のパターンでは無いんだな。

 まぁ、考えようによっちゃその方が良いかも。

 最終的に強くなってみんなを見返す事が出来ても、前段階で悲惨な目に合うパターンが多いからな。

 うん。


「でも、水辺に飛ばされたのは、ラッキーだった!」

 砂漠とかじゃなくて良かったよ。

 ここなら飲み水に困らないだろうし、魚もとれるだろうから食料にも困らないに決まっている。

 25年の辛い人生だったけど、最後にこんな幸運な事になろうとは……

 しみじみと自身の幸運に感謝するばかりだ。

 さてと、

「ここから、俺の異世界ライフが始まるって訳ね、フフ」

 楽しみだなぁ。

 女騎士。

 女エルフ。

 王女様。

 フフフ、多分この先モテる事になるんだろうな。

 そっか、俺にも初めて彼女って奴が出来るのか、フフフ。


「……しっかし、殺風景だな」

 冷静になって辺りを見渡すと、中々気味が悪い感じのとこだな。

 空もどんよりと曇ってるし、水の色も何か澱んで汚い気がしないでもないし……

「ホントに飲めるのかよ、この水?」

 いや、俺は、何を言っている?

 飲めるに決まってるじゃないか!

「だって、俺は異世界転移者だもの!」

 うん、そうそう。

 決まってる。

「……」 

 決まってるけど、今は飲みませんけどね。


「誰かぁーー!」

 叫んだが、返事など無く静かだ。

 うん。

「……少し歩こう。

 多分歩いていると美少女のピンチがあるだろうから。

 そんで、華麗に俺が助けて……」

 嫌な予感がさっきから頭をよぎるが、そんな事ない!

 俺は、嫌な考えを振り払うかの如く実際頭を振って都合の良い妄想を続けた。

 そして、歩いた。

 歩いた。


 いた。

 向こうを向いて座っている人がいた。

 エルフ?

 絶対違う。

 どう見ても違う。

 俺の目の前にいるのは、凄い年寄りの婆さんだ。

 嫌な予感しかしない。


 兎に角、話しかけよう。

「あ、あの?」

「ああん? お前さん、金は、もってきたか?」

 婆さんが俺の顔を見ずに言ってきた。

 嫌な予感しかしない。

「か、金?」

 渡し舟の金じゃないよな?


「舟の料金だよ!」


 嫌な予感しかしない!

 てか、確定的な感じしかしないが、俺は、全力で現実逃避する。

 コレは、違う!

 ここは、異世界。

 異世界で間違いないんだ。

「向こう岸に行くと街とかあるんですか?」

 俺は、ニッコリ笑って聞いた。

「街ぃ~?」

 婆さんが俺の顔を覗き込んできた。

 白目!

 怖いよ!


「お兄さん、街なら向こうにあるよ。

 それに、戻ってもロクな事なんてないから、向こう行った方が賑わってるし、絶対良いよ!」

 婆さんがニッコリ笑って教えてくれた。

 そうか、良かった。

 やっぱり俺の考えすぎだったんだ!

 ここは、異世界で向こうに中世ヨーロッパを思わせる建物があるに違いない。

 そんじゃ、とっとと支払って早く向こう岸へ!

「いくら?」

 俺は、いそいそと財布を取り出し聞いた。

 早く街に行ってケモ耳と仲良くなりたいからな!


「六文… いや、600円だよ」

「えっ?」

 ババァ……

 今、六文って言わなかったか?!

 いや、違う!

 忘れろ、俺!

 ココが三途の川な訳ない!


「ろ、600円ね、……はい」

 俺は、怪しいところしか無い婆さんに金を渡した。

「毎度ありがとうございます!」

 凄いニコニコして金を受け取った婆さん。


 用意するから待っていてくれと言われたが、どうやって向こう岸に渡るんだ?

 この大きな川の向こう岸を眺めたけど、川の流れも速いし結構距離もあるぞ。


ブルルン!

 ブルルン!


 異音に気付いて振り返ると、婆さんが米軍の使うゴムボートみたいなのに乗って、ボートに付いてるエンジンをブルンブルンとかけていた。


「……」

 悪い方の想像の斜め上の展開に安堵してよいのか混乱した。



ブロロローー!!


「お客さん、早く乗って!」

 エンジンのけたたましい音に紛れて婆さんの声が微かに聞こえた。

ブロロローー!

 乗れって言ったんだよな?

ブロロローー!

「は、はい」

 俺は川に入り足元を濡らしながらも、なんとかボートに乗った。

ブロロローー!

「掴まってなよ!」

 婆さんに言われなくても掴まりますよ!

ブロロローー!!


「うわっ!」

 掴まってたけど、走りだしたらバランスを崩した、危ない!

「飛ばすよ!」

 婆さんの運転するボートは、水を切って物凄い速さで進んだ!


 川の対岸に到着して俺を降ろした婆さんは、颯爽とボートを操り向こう岸に向かって行った。


「もう、よく解らなくなってきた」

 この川がアレなのか、あの婆さんがアレなのかも……

「いやいや、ココは、異世界だって!」

 思いっきり自分に言い聞かせ歩き出す。

 兎に角、向こうの方に行けば、

「ああ、いた、いた。

 藤野さん、藤野 和弥さん」

 街を目指す俺は、出発しようと歩き出した途端にネクタイをした男性に声をかけられた。

 サラリーマン?

 いや、そんな事より、なんで、俺の名前を知っている?!

 怪しい奴!

 俺は、手をこのサラリーマン風の男に向けた!

「ファイヤーボール!」

 先制攻撃!

 驚かせて、一旦距離をとる!


 うん。

 何も出ない!


「……」

「……」

 俺の顔が真っ赤だ。


「早く、皆さんもう終わってますよ。

 貴方が終わらないと、私達も帰れないんですから!

 待たされて閻魔大王様もイラついてますし!」

 何かイラつかれて言われた。

「って、閻魔大王?!」

 真っ赤だった顔が、真っ青になる。

 俺の悪い考えが確定した。

 俺は、異世界転移した訳じゃない。

 あの銀行で撃たれて死んだのだ……

……まぁ、薄々感じていた。

俺は、どうやら単に死んでしまったようだ。

まぁ、ここも異世界と言えば異世界だな。

うん。

納得できるか!

って事で、次回も、乞うご期待!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ