第10話 やっと宿入りですか
金も出来た。
後は、休むのみ。
もう、転移してから色々あったし、今日はゆっくりしたい。
疲れた。
宿屋を探した俺とラージャ。
俺の希望としては、高そうなとこより庶民的な宿屋が良い。
「カズヤ、当てはあるのか? なのじゃ」
初めての街で当てなどある訳が無い。
どうしたものか……
「お前っ!」
悩んでた俺は、いきなり肩を掴まれて言われた。
な、何ですか?!
恐る恐る振り返ってみると、
「……あんた達か」
赤毛のペトリに、
「ライネなのじゃ!」
金髪のライネがいた。
騎士って暇なのか?
はっ!
俺は、慌てて辺りを見渡した!
良かった、ボリス団長の姿は無いようだな。
「突然走って行かれたので、団長も心配されてましたよ」
ラージャの頭を撫でながらライネが教えてくれたが、一緒に居たくなかったからだよ!
流石にそんな事は言えませんがね。
「いや、田舎からでてきたので、街が珍しくって、ハハハ」
とりあえず笑っとけ俺。
「カズヤさん、今日は、どこに泊まるんですか?」
「宿屋を探してるんだけどね……」
ライネが聞いてくれたが、どこか紹介してくんないかな?
「王都の宿は高いぞ。
田舎から出てきたって言ってたけど、金なんてそんなないんだろ?」
ペトリ……
「ライネさん、どこか手頃な宿屋を知らないですか?」
俺は、ペトリに聞いてないので、ライネに聞いた。
ライネは可愛いし、優しいからな。
「ったく、しょうがねぇな!
紹介してやるから、ついてきな」
ペトリに聞いてないのに、さっさと歩きだしてしまった。
「はは、ペトリは、強引だな。
カズヤさん、行きましょうか」
ライネがラージャをおんぶして俺に言った。
そう?
「まぁ、ライネがそう言うなら…… って、ちょっと待って!」
俺を置いてさっさと歩いて行った二人を追った。
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山猫亭――
ペトリとライネに案内された宿屋の前に到着した。
「山猫亭?」
見た目は、うん。
高級なとこでは無いってのは伝わってくるな。
「そんじゃ、行くぞ」
ここで良いって言ってないのに、ペトリの野郎が宿屋に入っていっちゃった。
全くもってしょうがない奴だ。
ライネも入っていっちゃったし、仕方ない。
中だけでも確認しますか。
「いらっしゃいませーー!」
元気な声に迎えられた。
フロントに可愛い女の子!
栗色の髪に茶色の瞳。
ちょっとそばかすがあるが、愛嬌があって可愛い。
良い。
良いじゃないの!
幾つぐらいだろうか?
「セニヤ、客を連れてきてやったぞ」
ペトリがセニヤさんに馴れ馴れしく話してる。
「僕の名前は、カズヤ!
とても良い宿ですね、ここに決めたいと思うのですが、料金をお聞きしてもよろしいですか?」
俺は、爽やかにペトリとセニヤさんの間に入って言った。
「セニヤ、出来るだけ安くしてやってくれよな」
ペトリが言ってくれた。
「……お、お前、良い奴なんだな」
ちょっと見直したぞ、ペトリ。
「ば、バカ野郎。
そんなんじゃねぇよ」
ペトリが照れて可愛いなと思った。
弟がいたら、こんな感じなのかな?
「うちの料金なら大丈夫よ!
カズヤさん、1泊素泊まりで4,000ギル、食事付きなら、6,500ギルになるわ」
セニヤさんが笑顔で教えてくれたが、ギルってなんだ?
商会で稼いだ金は、ゴールドだったぞ?
「あの、コレって使えますか?」
革製の金の入った小袋から金貨を1枚取り出した。
「1ゴールドね、素泊まりなら、6,000ギルのお釣り、食事付きなら、3,500ギルのお釣りになるけど」
セニヤさんの説明で理解できた。
そっか、って事は、1ゴールド 大体1万円ってとこかな。
ふーーん。
ん?
……500ゴールドだと、500万円って事?!
大金じゃないか!
急にこの革製の小袋を持ってるのが怖くなってきた。
「じゃ、じゃぁ、13ゴールド支払いますんで、とりあえず10日分食事付きで二部屋お願いします」
俺は、13枚の金貨をフロントのカウンターに置いた。
「わぁ! 凄い! まいどありがとうございます。
でも、女の子が小さいのに、別々の部屋で良いんですか?
一緒の部屋だと割引になりますけど」
セニヤさんに言われたけど、ラージャが個室が良いっていうんだもん。
「個室は絶対なのじゃ!」
ほら。
「セニヤさん、って事で、ラージャもお世話になります」
贅沢とは思うが、金があるからね!
こんな金持ったの初めて!
「へぇ、金持ってたんだな、お前」
ペトリに言われたが、大金を持ってると知られるのが何か怖いので、エヘヘと笑って誤魔化しといた。
「カズヤさん、ちゃんと計算出来るんですね」
ライネ、それくらい出来るよ!
俺って、どう思われてるんだ?
「てか、二人とも騎士なのに、庶民的な宿なんて知ってるんだね」
「だって、二人とも常連さんだものね」
セニヤさんが笑顔で言ったけど、そうなの?
「ここの食堂、夜は、飲み屋になるからな、エルヴァスティ王国騎士団御用達だぜ!」
ペトリが言って、ライネが頷いている。
そういう事ね。
なんにせよ、良い宿を紹介してもらったんだ、二人に感謝だな。
「ペトリ、ライネ。
ありがとう!
二人とも、凄く助かったよ」
「助かったのじゃ!」
俺とラージャがお礼を言うと、二人とも照れていた。
「んな事で、感謝されてもな。
カズヤもラージャもこの街で何か困った事があったら、騎士団詰所にでも顔だせよな!」
「ペトリ、そんな言い方ないだろ?
でも、カズヤさん、ラージャちゃん、何時でも遊びにきてくださいね」
そう言って、二人は帰って行った。
なんか、良い人に恵まれてるな、俺って。
それから俺とラージャは、部屋に案内された。
ベッドと簡易的なテーブルと椅子があるだけのシンプルな内装の部屋。
シーツがちゃんと洗濯されているのだろう、清潔感は感じられた。
ラージャの方も似たような作りの部屋なのだろうな。
窓を開け、王都ヴァーラの街並みを眺めると、ベッドに飛び乗った。
「あーー、疲れたぁ」
異世界に転移してから、既に色んな事があった。
大型の蜂との戦闘、商人との取引、俺とラージャの能力の発見。
うん。
色んな事があった。
俺は、疲れが溜まっていたのか、考えている内に、そのまま寝てしまった……
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・
「……ズヤ」
「…カズヤ」
「カズヤ、起きるのじゃ!」
「……んん?」
俺は、体を揺すられ起こされた。
ラージャが俺の部屋に入ってきて起こしに来てくれたのか。
「…ラージャ? どうした、晩飯の時間か?」
部屋の鍵とか、セキュリティー的にどうなのかと思いつつ聞いてみた。
「ボケっとするでない。
セニアが晩御飯の準備が出来たと教えてくれたのじゃ、早くいくのじゃ」
「そっか、今起きるよ」
まだ少し眠いが、体を起こし腕を伸ばす。
だいぶ体が楽になった。
ラージャと部屋を出て1階の食堂に向かう。
「あっ! カズヤさん、ラージャちゃん」
食堂に着くと、セニアさんが声をかけてくれた。
中は、宿泊者以外の食事客なども多いのだろうか、賑わっている。
セニアさんに案内されて、テーブル席に着くと暫くして料理が運ばれてきた。
「どうぞ、ゆっくり食べてね。
追加で何か頼む場合は、料金がかかるけどどうする?」
パンに、スープ、それからプレートに肉と何かの野菜を炒めた物、後、よく分からないのが乗っていた。
お腹が空いてるし、いい匂いがしてる。
美味しそうだ。
「セニアさん、そしたら、何かお酒もらえますか? あと、ラージャが飲めるようなジュース的なのあります?」
「コラ、我も酒が良いのじゃ!」
……まぁ、俺より年上だしな。
「じゃぁ、お酒を二つ追加でお願いします」
「ラージャちゃんにもですか?」
セニアさんに変な顔をされてしまったが、
「ああ、ラージャは、ちんちくりんですが、僕より年上なので大丈夫ですよ」
そう説明すると、驚かれたが相手も商売なので深く聞いてくる事も無かった。
「それじゃ、エールで良いですか? 直ぐ持ってきますね」
笑顔でセニアさんが注文を受け付け、厨房の方へ向かって行った。
「そんじゃ、食べるか」
ラージャに言ったら、既に食べ始めてた。
気を使って言ってやったのに……
「おっ!」
料理は、味付けが薄いが思ったより美味しいじゃない。
「カズヤさん、エールです」
酒と小皿に入った木の実が俺達の前に置かれた。
小皿のコレは、おつまみにとサービスしてくれたみたいだ。
「ありがとう、セニアさん」
「それじゃ、何かあったらまた呼んでくださいね」
そう言って、セニアさんは別のテーブルに注文を聞きに行っていた。
大変だな、昼間から夜まで……
是非、マッサージして癒してあげたいものだ。
心の優しい俺は、セニアさんのお尻を眺めながら思った。
「そんじゃ、ラージャ、お疲れ! 明日も頼むぞ」
「カズヤ、我を酔わせてスケベな事をしたら地獄に落とすからな、なのじゃ」
んな事するかよ。
俺は、ちゃんと、蔑みの目でラージャに抗議しておいた。
ゴッゴッゴッゴッ……
「ぷはぁーー」
旨い。
酒…… コレは、ビールだ。
あんまり冷えてないが、ちゃんとしたビールで美味しいじゃないの。
料理も旨いし、酒も旨い!
そして、ボリス団長にライネにペトリ。
「へっ!」
危ない、大きい声が出そうになった!
向こうの席にあいつ等がいるじゃないか。
そういや、ペトリがここの常連みたいな事言ってたな……
ここは、気づかないフリして、大人しく飲もう。
「ラージャ、とっとと食べて、部屋に戻ろうぜ」
こそっとラージャに言ったが、ビールをガンガン飲んでて俺の言葉をちゃんと聞いてるのか…
「セニア! 酒の追加なのじゃ!」
デカい声!
うん、人の話を聞いてない。
「あれっ! カズヤじゃん」
ペトリ!
気づかれたぁ!
「お、おう」
俺は、手を軽く上げて答えた。
そりゃ居ますよ。
お前に紹介されてここに宿泊してるんだからな!
ボリス団長が、ライネに何やら耳打ちしてる。
「おい、カズヤ、向こうにライネ達が居るではないか。
一緒に呑んだら良いのじゃないのか、なのじゃ」
「いや、仲間同士で飲んでるんだから、邪魔しちゃ悪いからな……」
余計な事言ってんじゃねぇよ!
ったく…… ん? 向こうからライネが……
「カズヤさん、せっかくの再会ですから、一緒に飲みませんかって団長が」
来た。
「ああ、せっかくですが」
「ライネ! 直ぐに移動するのじゃ!」
ラージャ!
俺の言葉に被せてくんじゃねぇよ!
しかし、街に送ってくれ宿まで紹介してくれたコイツ等が誘ってくれてるのに、断るのも確かに悪いな。
みんなが居るし、大丈夫!
大体、俺の考えすぎだし、団長の隣に居なけりゃ大丈夫だよな。
「ああ、ライネ。
ご迷惑じゃなかったら、ご一緒させてもらうよ」
俺は、ぎこちないながらも笑顔で言った。
うん。
「カズヤ、ちゃんと宿も決まって良かったな」
ボリス団長が、俺の太ももに手を置いて言ってくれた。
なぜ、この位置に俺が座らせられてんだ?
ボリス団長、俺、ペトリ。
向かいにラージャ、ライネが座っていた。
「そりゃ、俺がちゃんと宿を紹介しましたからね! なっ、カズヤ」
「あ、ああ。 助かったよ」
確かに、助かっ…… ん?
ペトリも俺の太ももに手を置いた?
年上男性と年下男性が俺の太ももに手を置いて、普通の顔して酒を飲んでいる。
うん、普通の事か。
「ラージャちゃんも良かったね」
「良かったのじゃ! ありがとう、ライネなのじゃ」
「おいおい、ライネだけかよ、俺はどうなんだ?」
ふふ、ペトリったら。
「ペトリも良くやってくれたのじゃ!」
「ラージャには、敵わねぇな」
俺達は、笑った。
「しかし、二人が犯罪等に巻き込まれる事が無くて、良かった」
ボリス団長?
「ですね。
田舎から出てきた人からお金を騙し取る輩もいるらしいですからね」
そうなの、ライネ。
あんまり治安が良くないのかな、気をつけないと。
うん。
普通に会話してるけど、さっきからずっと俺の太ももに手を置かれている状態が続いている。
全然慣れないんだけど、コレって普通の事なのか?!
早く、休ませてくれよ!
長い一日だな、おい。
てか、またあの騎士団の団長と出会ってしまった。
なんと言うか、良い人だとは、思うのだが……
って事で、次回も、乞うご期待!




