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地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.1 プロローグ そっちかい!
1/105

第1話 銀行強盗

これから宜しくお願いします。

【 富田中央銀行 西新川支店 】


「おらッ! 早く、金をこの中に入れろ!」

 黒の目出し帽を被った如何にもな銀行強盗の一人が、カウンターにいた女子行員に乱暴にバックを渡した。


「お前らも、死にたくなかったら動くなよ!」

 同じく黒の目出し帽を被った強盗の仲間が銀行に来ていた客に猟銃のような物を向けて言った。

 そして、同じく猟銃のような物を行員達に向けているのが一人いる。

 犯人は、三名。

 いや、外に仲間がいるのかもしれないので断言してはいけないのかもしれない。

 いや、そんな事より……


 美紀ちゃん!


 僕は、同僚の行員の美紀ちゃんを目で追った。

 ああぁ、可哀想に。

 怖いんだね。

 彼女は小さく震え下を向いていた。

 神様、どうか彼女だけは無事でお願いします!


「おい、お前……」

 頭の上に手を組み跪いている僕の頭上から声がした。


「は、はい?」

「お前な、さっきから何をキョロキョロしてやがんだ、殺されたいのかオラッ!」

 声のする方を見上げると、犯人の一人が猟銃のような物の銃口を僕に向けていた。

「……い、いえ」

 僕は、ここで死んでしまうのだろうか?

 そしたら、ラノベで読んだ異世界に行ったりするのかな……

 何をバカな事を考えているんだ、僕は! 

 そんな事を考えている場合じゃ、


バンッ!


 静かな銀行内に、銃声? が響いた。

 そして、

「キャァーーー!」

 続けて、女性客が叫び声が聞こえた。

 何が起こったんだ?

「うるさい、黙れ!」

 カウンターの方にいる銀行強盗が怒ったように言ってるが、先程、声を上げた女性に言ってるのだろうか?


「バカ! 何撃ってんだお前!」

「だって、アイツが逃げようとしたから!」

 発砲したことで、犯人達が言い争いを始めだした。

 誰かが逃げようとしたから撃ったのか?

 この位置からだと、撃たれた人物が行員なのか客なのか解らない。

 

「あーあ、もう、何やってんだよ」

 僕に銃口を向けていた強盗が僕から視線を外して仲間の男達をみている。

 そうだ、この男の視線が他の犯人に、今ならっ!

 美紀ちゃん、僕に勇気を!

「お前もな、ああなりたく無かったら大人し」

「うおおおおおお!!」

 僕の方に振り返ろうとした目の前の男の腹を無我夢中で思いきり殴った!

 学生の頃から続けていた空手は、今日、この日の為にあったと信じたい!


「ガッ、ハッ……」

 男は、体をくの字に曲げ倒れた。


「お前ッ!」

 犯人達が当然僕に気づく。

 クソっ!

 僕に殴られぐったりしている男の襟首を掴むと、盾のようにして犯人達に向ける!


バンッ!

  バンッ!

 

 二発の銃声。

「助かった!」

 一発は、肉の盾(犯人の仲間)に命中したみたいだ。


ポイッ!


 弾避けの肉(犯人の仲間)を捨て、僕は、机に飛び乗り、ジャンプ!

 学生の頃から続けていた器械体操は、今日、この日の為にあったと信じたい!

 僕は、空中2回転、綺麗な弧を描き犯人の前に着地、そして!

「とう!」

 カウンターにいた犯人を華麗にキック!

 美紀ちゃんは、僕が守る!


「なんて蹴りだ! 思わず、銃を落としてしまって意識が遠退くぜ!」

バタッ

 僕の蹴りを受けた犯人が説明しつつ、気絶した!

 よしッ!

 しがない、ありふれた行員の僕だって、愛する人を守る為なら頑張れる!


「清彦さん!」

 美紀ちゃんの声?!

「そこまでだ!」

 犯人が美紀ちゃんに銃口を突き付けていた!

 なぜ、奥で震えていた美紀ちゃんをピンポイントで人質にとるんだ?

 その場所まで行くなら、僕に攻撃できたのでは? と言う疑問があるが、

「やめてくれ…… 僕は、美紀ちゃん…… いや、美紀を愛しているんだ!」

 心からの願いだ!

 僕の愛する女性を傷つけないでくれ……


「ほう、この女は、お前の大事な女か?

 人質として、この女を選んで正解だったようだな」

 犯人がニヤリと笑った。

 いや、目出し帽を被っているので表情は解らないけど、多分そうだ。

 そして、僕は、余計な情報を犯人に与えた!

「美紀ちゃん……」

 ど、どうしたらいいんだ……


「えいっ!」

「なっ!」

 学生の頃から続けていた合気道は、今日、この日の為にあったと信じたい!

 美紀は、勇気をもって犯人の手をとり投げ飛ばしたのだ!

 

ズダーーンッ!


 犯人が床に打ち付けられた音が行内に響く。

 白目を剥いて犯人は、ぐったりしていた。


ガチャッ!


「もう安全なのか?!」

 奥のドアが開いて支店長が入ってきた。

 隠れて見ていたのだろう。

 撃たれて死ねば良かったのに。


ワーー!

  ワーー!

    ワーー!


 行内に歓声が上がり、支店長がSMクラブで身につけた技術を使い、得意げに犯人を縛りあげている。

 撃たれて死ねば良かったのに。


「美紀ちゃん!」

「清彦さん!」

 僕は美紀を、美紀は僕を、抱きしめた。

 これから始まるんだ、僕と美紀のラブストーリーが!




「……ぅぅう、し、死ぬ、救… 急… 車……」

 行員や、銀行に来ていた客達が歓声を上げる中、俺は、胸から血を流し倒れた。

 行員が突然暴れ出して、銀行強盗が撃った弾が俺に当たった。

 歓声をあげているあいつ等にゃ、その他大勢であるモブの俺の声など届いてはいないようだ。

 25年の人生、特に楽しい事も何もなかったな。

 ああ、意識が、もう……



 真っ暗だ……


「ここは?」


 俺の名前は、藤野 和弥。

 25歳にもなって定職に就かずコンビニのアルバイトで僅かばかりの金を得て生計を立てていた。

 いや、立てていたって言うのは、俺が銀行強盗が撃った流れ弾に当たって死んだからだ。

 定職に就いていなかったのは、何かやりたい事があるからって訳じゃない。

 高校を卒業して働いた会社が所謂ブラックな会社で、ソコで数年働いた俺はパワハラと長時間勤務に耐えきれずに逃げるようにして辞めた。 それから、就職が怖くなったってのが理由だ。


 俺は、ツイてない。

 学生の時も、初めての就職先も、死ぬ理由も。

 何をやっても上手くいかないんだ。


「ハハハ、最後まで…… まったく俺らしいじゃないか!」

 涙が出た。

 全くもってツイてない人生じゃないか。

 主人公の人生じゃないのは解ってる。

 だから、せめてその他大勢のモブでいいから普通の平穏な暮らしがしたかったな。

 そして、庶民としてささやかな願いが叶うなら、憧れの異世界に行って楽しく暮らしたかった。

 そして、ささやかな願いが叶うなら、最強無双の力をチートで欲しかった。

 そして、ささやかな願いが叶うなら、魔法も賢者並みに使える方向でお願いします。

 そして、ささやかな願いが叶うなら、みんなから尊敬される設定でお願いします。

 そして、ささやかな願いが叶うなら、モテモテ設定でお願いします。

 そして、ささやかな願いが叶うなら、愛する彼女が欲しいです。

 そして、ささやかな願いが叶うなら、出来たら、複数で。

 そして、ささや

 まてよ……


「……あれ?」

 死んだハズなのに、俺は考えてる?

 今の俺に自我があるってのか?

 死んだハズの俺が?

 コレが臨死体験ってやつなのか?



「もしかして!」

 その時、俺は光に包まれた!

 コレは、もう、そういう事だろう?


 異世界転移か転生か?!


「いよっしゃぁぁぁあああ!」

 俺は、弥が上にも期待するぞ!

ウヒョーーー!

夢にまで見た異世界に!

やったぜ!

これから神様と会うのか?

それとも赤ん坊になって転生を果たすのか?

もう、俺には成功者の未来しか見えん!

って事で、次回も、乞うご期待!

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