1本目 おばあさんが川で洗濯をした時のこと
おそろしいことがおこりました。
じっさいにおこるまでだれも信じなかっただろうこと。
いつものように芝刈りにでたおじいさん。
さんぽもかねて川へ洗濯にでかけたおばあさん。
ん?と洗濯中に顔を上げると、川からは、
ともすれば沈みそうになっている、美味しそうなリンゴが。
おやおやとおばあさんがそれを取ろうとすると、
「バカ野郎それをとるな!」と声がかかりました。
あれ?こんな口汚い人いたかしらと声の方を見てみると、
サンゴでできたティアラをつけた美しい女性が走っていました。
ん?よく見るとその後ろからは狼が。
はぁはぁと息を切らしてりんごに追いついた女性。凄い形相です。
「しんじまうよ!このリンゴを食べたら!」
あっという間にリンゴを袋にしまう女性。追いつく狼。
わずか7センチのナイフで立ち向かう女性。
せまりくる恐怖に腰を抜かすおばあさんに、女性は言います。
「にげろ!あたしもすぐに追いつく!故郷で王子様があたしに合うガラスの靴を新調してくれているんだ!」
くびを縦に振りながら這うように逃げるおばあさん。しかしその動きは遅く、武器のない女性は徐々に追いこまれます。その時、
らんぼう者で有名なタヌキが背中に火のついた薪を背負ってやって来ました。後ろにはタヌキにトドメをさそうと銃を構えるウサギが!
しぬ!殺される!そう叫ぶタヌキは川へ飛び込みます。逃すか!と銃を撃つウサギ。しかしその銃弾は外れ、狼の眉間を撃ち抜きました。
まさか!と女性がウサギを見ると、ウサギは泣き始めました。
「しまった……。ゴン、すまねぇ、俺は、俺は」
たすかったタヌキは見事なクロールで川を下り、逃げていきます。
とんでもない現場に出くわしたおばあさんですが、命の危機は去りました。彼女は洗濯を再開しました。
さっきの女性は「ケガ?大したことないよ。それより、今度結婚式やるから来てくれよ!」と言いながらその場を走り去りました。ウサギはその後も、洗濯が終わっても、呆然とその場に立ち尽くしていました。
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