黒猫の男
大草原と言っても良いくらい草原が広がっている、空は見事な快晴で雲一つない、時折風が吹いてきて芝生が波を作っている、初期位置が同じなのか周りにはたくさんのプレイヤーがいる、プレイヤー達はこの草原で自由に動き回っている。
素手で土を掘ったり、草原の先を見ようと真っ直ぐ歩いたり走っている人もいれば、周りのプレイヤーに挨拶をしている人もいる。
ウノはすぐさましゃがみ込み地面を確認する、芝生のさわり心地、土の感触、風の音もはやゲームの中の世界とは思えないほどクオリティに驚く。
「ほんとにゲームの世界なの?」
リアルすぎて困惑するが匂いも確認しようと芝生に顔を近づけようとすると、葉の先に見たこともない小さな虫に顔が止まる。
テントウムシの亜種と言われれば納得できるような丸みがあり、青と黄色で構成された虫と目が合った。
その虫に対して青いテントウムシだ、と思っているウノの顔面に飛びかかるようにテントウムシ亜種は一瞬にして羽を出し葉先から飛び立った。
「えっ」
驚いたウノは何とか避けようと後ろに体勢を移動させるが足腰が踏ん張りきれず尻餅をつく形になってしまった。
テントウムシ亜種はウノに衝突する事なく真上を通過しどこかに飛んで行ってしまった、残されたウノは尻餅をついたときのお尻の痛みに手で撫でながら、ここまでリアルにしなくて良いのにと苦い顔をした。
「何してるんだニャ」
突然の声と共にお尻を撫でるウノの視界に自分以外の影が映り込む、ゆっくりと顔を上げると、まるで覗き込むように顔を近づける猫男がいた。
「あっあ・・・・あの・・えっと」
「どうした~」
目の前にはプレイヤーは猫男をモチーフにした容姿、狼男の黒猫バージョンと言っても良い、顔は人で頭から猫耳が生えてる、そのプレイヤーは声色から見て男だと判別できる、彼に対して特別嫌悪を抱いてるわけではなく元々ウノはコミュ障なので上手くしゃべれない。
「お~い、ラグくて止まったか~」
猫男のプレイヤーはウノの頭をポンポンと叩く、人間サイズの猫パンチ、彼の攻撃から何とか避けようと手でガードする。
「やっやめて下さい」
「あっ動いた」
ピタリと攻撃が止み、猫男はウノと同じ目線に顔を持ってくると笑顔で言った。
「良かったラグで止まっているかと思ったニャ」
「えっと・・あの・・・すみません、そういうわけでは」
目をそらしながら返答するウノに何かを察したのか猫男はウノのほっぺをぷにぷにしながら言った。
「可愛い顔してるんだから目を見てしゃべりなよ~」
「ふぁい」
ほっぺを触られているからか上手く返事ができずに変な声が出た、それを聞いた猫男はニャッハハハハと笑い、手を放し立ち上がった。
「俺っちはニャンダロウよろしくニャ」
「ウノです、よろしくお願いします」
解放されたほっぺを両手でスリスリしながら少し遅い自己紹介、ニャンダロウと名乗った彼はニタニタ笑いそして困ったように言った。
「悪いニャ、友人が待っているからまた会おうニャ」
彼はそう言うと返事をするまもなく颯爽と立ち去ってしまった。