令和で零話
0話です。まだ本編は始まってません。
「奥田ァ……実を言うと俺、20世紀に生まれたかったんだ。……マジで。」
「急にどうした。」
教室の窓際で男子高校生がぼんやり空を見ながら呟いた。
「いやあのさ、平成終わるじゃん? もうすぐ。」
「そうだね。……で?」
「で?」
「で。」
「で……!?」
「で。」
「で………ッ!!?」
「で。」
「でェェ……………まぁ、いいよ。いやさあ、令和になるじゃん? 平成終わるじゃん? 節目じゃん? なんかさぁ……ーー」
この会話の流れが意味不明と思われた方の為に補足すると、奥田と呼ばれたメガネをかけた男子生徒が20世紀に生まれたかったと話す親友に、説明の続きを促そうと「それで?」の意味で「で?」と発言した。しかし、それを聞いた親友の方は「で?」を「だからどうした?」と……すなわち、「くだらない理由だな。」という煽りの意味を込めた返事だと解してしまった。そのため親友の方は、「『で?』とは、どういう意味なんだ?」という抗議の意味で「で?」と発言したが、奥田と呼ばれた生徒はそれを「今なんて言ったの?」という意と解し、「『で?』って言ったんだよブラザー。」という意味で「で。」と発言した。それを言われた親友は「で。」の真の意を知るよしもなく、尚も煽り続ける奥田と呼んだ生徒に徐々に怒りを覚え、熱がこもり始めるが、奥田と呼ばれた生徒は「この『で?』は、『平成が終わる。』という以外の理由を考えておらず、他の理由を問われるという想定外の事態に陥り、戸惑って『“で”だって!?』という意味の『で?』と解釈、その後「で」の掛け合いは奥田と呼ばれた生徒にとってはいつものくだらないノリであった。親友は抗議を取り合わない他称奥田にとうとう呆れ、説明の続きを話し始めのだ。
「ーー……21世紀から22世紀まで生きた人より20世紀から22世紀を生きた人の方が長く生きてきた感あるでしょ?」
「まぁな。」
「欲を言えば1999年に生まれたらミレニアムを跨がれて更に良い。良いと思わない?」
「そぉ……ね。」
「あ〜〜〜〜生まれるタイミング間違えたなぁぁぁぁ〜〜〜」
「ん…………どうでも良いですぅ。」
「アァッ!? なんだとクソメガネ!」
「エッ!? 今の何処に怒る箇所が??」
「全部だよ!!!」
「えぇ……」
「まず、テキトーな返事。あれはなんだよ、なぁ? 舐めてんの? 舐めてんだろ? アアッ?!」
「ぺろぺろしてないですぅ……」
「は?」
「なんでもないです。はい、続きどうぞ。」
「……で、無論一番の問題発言は『どうでもいい』とほざいたことだ。」
「スンマセン。」
「え?」
「ス・イ・マ・セ・ン・デ・シ・タッ!!」
「何逆ギレしてんだよ気持ち悪りぃ……」
「アンタだってさっき切れてただろぉ……」
「何の事?」
「ついさっきの記憶までねぇのかよコイツゥ………」
「お? 屋上に行くか、アアッ!?」
「屋上は鍵かけられてるから入れないんだよなぁ……」
「……んな事どうでも良いんだよ。更に言えば、昭和最後の日に生まれたら更に跨がれてより偉そうじゃん?」
「都合が悪くなると話し切り替えるのやめた方がいいと思います。」
「そね。あとこれ関連で戦後に開店した癖に老舗とか名乗るの原辰徳。」
「……は?」
「え?」
「いや、腹立つを原辰徳って言い換えたのがスッゲームカついて。原監督に謝れアホ。」
「君、言葉遊びって知ってる?」
「なら……ぺろぺろの件は……」
「あれは単純にキモい。」
「ハイ、スミマセン。」
「うむ、よろしい。」
「あ、一つ思ったんだけど西暦で考えたら2000年ってミレニアムだけど皇暦で考えたら2660年だから記念すべき年でもなんでもないんじゃね?」
「え? ああ、そうだね。」
「更に言えば、ヒジュラ暦なら1421年。ユダヤ暦なら5760年。民国暦なら89年。マヤ暦なら……ーー」
「もう良いです、結構です。」
「ああ、そう。兎に角、見方を変えれば跨った無いという事を言いたい。」
「そうだけど、みんな西暦使ってんじゃん。西暦で物事考えるじゃん。」
「それがおかしいんだよ。日本には元号と皇暦があるんだから其方を優先して使うべきなんだよ。」
「そうっすね。」
「そうっすねじゃねぇよ、オメーに言ってんだよ。」
「そうっす……え?」
「何西暦で考えてグダグダ言ってんだよ! 日本人として恥ずかしくねぇのかテメェはヨオォッ!!」
「何故そうなる……」
さっきまでのしかしと言わんばかりに難癖つけて怒り出した他称奥田。一方、親友は取り合う気など無く、早く話しが終わらないかと時間を気にし始めた。」
「オイコラキサマッ!! 聞けッ! ちゃんと聞けやオラッ!!」
「あー……はいはい。」
そうこうしてるうちに、キンコンカンコンと予鈴が鳴る。
「あっ、次科学の実験やん。早く行かないと。」
「オイコラ逃げんな逃げんなッ!! 話は終わってねぇーゾ!!!!」
ギャーギャー騒ぎながら二人は足早に教室を去っていった。