ツアー初日②
これって、、、、、
ヴィジュアル系な人ー!!!
もしくは、ホストー!!
※付合さんの勝手なイメージです。
「付合さん、イケメーン!」
「変わりますねぇ。さすが塔さん」
「素材が良いからですよ。はい、じゃあ、次は奈良部くんね」
イヤホンで音楽を聴いてた奈良部くんと場所を交換する。
「カッコいいです!付合さんがサポートに入ってくれるのは音楽的には安心だったんですけど、ビジュアル的にはどうかと思ってたんで…」
「おい、馬場くん、褒めてんの?貶してんの?」
細目金髪に言われたくない。
「褒めてマス…」
「すみません、うちの馬場が…。あ、衣装は、これです。暑いかもしれませんが、見えない部分は通気性が良いんで、最悪、上着は脱いでも大丈夫です」
「………」
渡された衣装は、黒いジャケットに、ポケットやエリなどところどころに赤いハートの刺繍が入っている。
パンツは、ダメージ入りの黒いパンツ。唯一まともなアイテム。
そして、インナーは…
白いタンクトップ…ドットの穴あきの?メッシュ?スケスケ?とりあえず、服としての機能を果たしていない。
「これは、無理。なんで、穴あき?スケスケ?普通のシャツでよくね?」
「付合さんなら、似合います!筋肉!」
キラキラした目で馬場が力説する。
そもそも、筋肉ってなんだよ。と思っていたら、すかさず、アガリくんが解説する。
「鳩が、筋肉アピール好きで、タンクトップなんですよ…サイズも同じくらいだし、時間もあまりなくて、すみません」
はとおおー!!!
まだ、会ったことないけど、締める。
決定事項だな…
「ハート刺繍ですら、抵抗あるのに、タンクトップ…いや、無理だろ…」
「お願いします!この衣装、結構お金掛かってるんです!!」
「お願いします!!」
直角を超えて、90度くらいの角度で頭を下げるロン毛と金髪。
いや、角度足りないだろ…
「いや、こんなん着るなんて聞いてない」
「お願いします!」
「お願いします!!」
「奈良部くん完成ー!」
塔さんの可愛らしい声が聞こえる。
「ほら、奈良部もお願いして!」
「お願いしマス」
「いいじゃん、着てあげなよー」
塔さんも加勢する。
奈良部くん、興味ないだろ…
つか可愛いなぁ、女子か!目パチパチだなぁ、ヲイ!化粧ってすごいな…って、今はそれどころではない。
「お願いします!付合さん」
「いや…」
頭を下げていたアガリくんが、懐から、一枚の折りたたまれた紙を取り出す。
「付合さん、こうなったら、最終手段です」
アガリくんの目がキラーンと光る。
取り出した紙を、広げる。
「こちらは、付合さんとの契約書です。
2の16項にサポートメンバーとして活動する際は、スニップスの提供した衣装を着用すること。と記載しています。
付合さんは、こちらに同意した上で、契約書にサインされましたよね?
つまり、付合さんには、衣装を拒む権利は、ありません。
私たちは、契約違反で訴えることもできます。」
「こんな衣装だと知ってたら同意してない!」
「でも、同意のサインをされていらっしゃいますよね…」
「それは…」
畳み掛けるアガリくん。空調なのかアガリくんの鋭い視線なのか、室内の温度が下がる。
(きっと空調でしょう)
「別にいいじゃない、減るもんじゃないし、ハイ決まりー!颯颯と着替えてくださーい。次は、馬場くんだよ」
塔さんが呑気に仕切り出す。
確実に、俺の心がすり減る。だが、同意したことも確かだ。
「…わかった。今日だけだ。次からは、インナーは俺が用意する」
「ありがとうごさいます!」
「あーざす!」
ようやく気付く付合さん。
メイクさんって本当に凄いですよねぇ…