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キッカケ

V系バンド。

ヴィジュアル系バンド。

つまり、メイクして、髪を振り乱して、トンがった音楽をする人たち。

イケメンで、バンギャの子達に、きゃーきゃー言われる人たち。


一般的なV系のイメージをかつて俺も持っていた。


まさか、28歳になり、V系バンドのドラマーに転職するなんて、これっぽっちも思っていなかった。



_____________________




元々、俺は、マイナーなパンクバンドのドラマーとしてバンド活動していたが、ボーカルのデキ婚によりバンドは呆気なく解散。


解散後は、色んなバンドのサポートに入ったり、バイトしたりして、日々を過ごしていた。

大手の事務所に所属しなければ、音楽だけじゃ、飯は食えない。


そろそろ年齢的にも真面目に就職しようかと考えていた。

その矢先、スニップスというバンドが、ツアー直前にドラマーが入院してしまい、サポートメンバーを探しているという話が俺にきた。


ツアーだけということだし、なんだかんだ、ドラムが好きな俺は、サポートでも良いからバンド活動が出来るのは嬉しく、軽い気持ちで承諾の返事をした。



その翌日、とある音楽スタジオで、初顔合わせ。


「失礼しまーす」


扉を開けると、バンド特有の煙草臭さも汗臭さもなく、むしろ柑橘系の爽やかな香りが漂ってきた。

そこには、ロン毛の兄ちゃんと顔面ピアスだらけの兄ちゃんが椅子に座って話していた。



「初めまして、付合(フゴウ)です。ドラムのサポートの件で…」

「初めまして、ベースの上里(ウエサト)ことアガリです」


ロン毛の兄ちゃんは、すぐに立ち上がり、綺麗なお辞儀をした。

その横で、座ったまま、ぼんやりとするピアス男子。


「ほら、挨拶」

「ギターの奈良部(ナラベ)デス」


礼儀正しいロン毛くんがアガリくんで、マイペースなピアス男子が奈良部(ナラベ)くん。


よし、覚えた。特徴がある人は覚えやすくて良い。


「あと、ボーカルの馬場(ババ)が…」


ガチャリと音がして、後ろの扉が開くと、金髪細目くんが現れた。


「おつかれー!って、あ、え、もしかして、付合(フゴウ)さん!?嘘!?あの、フォアの付合(フゴウ)さんですよね?すご!俺、学生の頃から好きで…うわぁ…」


金髪細目くんは、どんどんと俺に向かってきて、距離を詰めてくる。いや、男に詰め寄られても嬉しくない。


「馬場。落ち着け」


引き気味の俺に気づいたのか、アガリが止めに入る。


「え、だって、付合(フゴウ)さんだよ。なんで、そんな二人落ち着いてんの!?」

「お前が、テンション高いだけだろ。すいません、付合(フゴウ)さん。馬場は、フォアのファンだったんです。驚かそうと思って、秘密にしてたんです。」


アガリくんの丁寧な物腰に、この先の不安が少し拭われる。メンバーが仲悪いとか、ぶっ飛んでる性格の奴とかもいるから、一人でもしっかりしたまとめ役がいるバンドは安心だ。


「馬場くん、初めまして、付合(フゴウ)です。あんなマイナーなバンドのファンでいてくれて、ありがとうございます。これから短い間だけど、よろしく」

「えっ!?え?え?」

「入院した(ハト)の代わりに、ツアーのサポートに入ってくれるんだ」

「えええええええ!!!」


スタジオだから、防音だけど、ボーカル声量半端ねぇーなぁ…


「うるさいよ。よろしくお願いします。付合さん」


ツッコミ担当のアガリくん。

静かに座っている奈良部(ナラベ)くんは、ペコリと頭を下げた。


「まじかぁぁぁぁあああ!!!」


大パニックのボーカルの馬場くんの声がスタジオに響き渡る…


「だから、うるさいよ」

「もがっ!」


アガリくんは、何かを馬場くんに投げつける。

そんな中、奈良部くんは、しかめっ面で両手で耳塞いでて、小動物のように見えた。


個性豊かなメンバーで、楽しそうな雰囲気で何よりだ。


そんなことを呑気に考えてた自分を、後日、殴りたくなった…

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